「1枚…2枚……10枚? あれ?」皿屋敷で幽霊にブラック労働強制 9進法を不正利用か

幽霊従業員を無期限労働させたとして、魔法労働監督寮は10日、霊労法違反容疑で万代田区の食器メーカー「古石町皿屋敷」と同社社長を書類送検した。社長である男性(405)は容疑を認めている。

労働監督寮によると、男性は約300年前から今年までの間に、幽霊従業員に休憩なしの無期限労働を強いるなどした。皿屋敷の土地一帯に9進法結界を仕掛け、無意識下に9進法をインストールし霊習性を狂わせたという。

「マジか」と被害者のお菊さん(享年17歳)は語る。「1まーい……2まーい……って数えて、ちゃんと10枚数えたんだけど、どう見ても9枚しかないんすよね。おかしいなーと思って数え直してたら300年経ってたわ」と、困惑をあらわにした。

皿屋敷周辺では、「なんか若返ったような気がする」「狂うはずのないアイアス時計が狂う」「わしの髪の毛が1本少ない」などの不審な噂が相次ぎ、違法行為が発覚した。労働監督寮は引き続き、不審な結界に注意するよう呼びかけている。

ジャングル奥地で未開部族発見される 3000年前の血筋か

レドルフランケ南部の未踏地域深奥にて、未開部族の実在が確認された。レドルフランケの一部地域では南部原生林に生きる古い部族の伝説が長老たちの間で語り継がれていたが、前魔法的な生活を送る部族の実在は驚きをもって受け止められている。

発見したのは、魔法植物学の専門家ガオ=ケレナ氏。部族は3000年以上前の吸血鬼の血族である可能性が指摘されている。

樹獣に追われた際に偶然遭遇

▲深い森に隠された村落


モロプス獣人であるガオ=ケレナ氏はほぼ1年を通して原生林の植生調査をしており、今回の遭遇も偶然だったという。

「体高18メートル程度でしょうか。運悪く成体の樹獣に見つかってしまったんです。あれは肝が冷えました」
原生林には未だ生態の解明されていない、巨大な樹獣が多数生息している。氏ほど経験のあるフィールドワーカーですら、犠牲になることもある。
「気付かないうちに、深奥に入り込み過ぎたんですね。もうだめだ、と目を瞑った時でした」
紙一重のところで、ケレナ氏は部族の一人に助け出された。秘密の森道を通り、氏は部族の村落に迎えられたという。

「人喰い族、だなんて噂を聞いていたので、最初は食べられてしまうのかと思いました。ほら、私って美味しそうでしょう?」
ケレナ氏はふわりとした体毛を掻きながら笑った。
「でも、違ったんです。彼ら、ベジタリアンなんですよ。ちょっと見た目は怖いけれど、優しく穏やかな民族です」

古き血脈のパド族

▲パド族に典型的な犬歯


ケレナ氏に接触した彼らは、“パド族”という古い古い民族だった。深い森に閉ざされ歴史に忘れられたパド族だが、決して閉鎖的でも排他的な訳でもない。少しだけシャイで、しかし友好的な人々だ。事実、ケレナ氏との邂逅以後は、少しずつだがレドルフランケ南部の村々と交流が始まっている。

パド族は、前魔法的な生活を営む牧歌的な民族だ。我々が渡す魔法の品々を、いつもおっかなびっくり受け取っていく。文字を保たないパド族は、数千年もの間、外界から隔絶された森の中で、魔法とは無縁な生活を営んできた。専門家の見解では、パド族は3000年以上前に断絶した、古い吸血鬼の血脈である可能性があるという。吸血鬼の魔力は、その血脈の古さに比例する。現在王国内で確認されている吸血鬼の血脈は200年来程度であり、パド族の歴史が事実であれば、その潜在魔力は計り知れない。

パド族の人々は、その多くが金色の瞳と長い犬歯を持っている。この一見恐ろしげな容貌が「人喰い族」などといった噂の元だったのかもしれない。しかしケレナ氏が語るように、パド族はその全員がベジタリアンなのだ

吸血を忘れたベジタリアン

▲パド族が育てる“命の実”


宗教的に肉食が禁じられている……という訳ではない。パド族がベジタリアンになったのは、ひとえに森の恵みが豊かであった故なのだ。

「これが、パド族の主食です。驚きましたよ。何千年も前から、こんな美味しいものを食べてきたんですね」
植物学者のケレナ氏すら唸らせる、パド族の作物。彼らが“命の実”と呼ぶその赤い果実は、瑞々しく、ほのかな甘みが舌に心地良い。原生林深奥でしか育たないこの果実は、レドルフランケ地方で今ひそかなブームになっている。
「物々交換だけでも、相当な物資が集まってますよ。みんな食べたいんですよ、この“命の実”をね」
今やパド族との橋渡し役となったケレナ氏が、屈託のない笑顔を見せた。

“命の実”と引き換えに我々が「血液パック」をパド族に渡すと、不思議そうに味わった彼らは、すぐにおかわりを要求してきた。おもしろいことに、パド族の間では血液パックが流行しており、せっせと“命の実”を持ってくるようになっている。血液パックを飲んだパド族は、目を輝かせて笑ってみせる。確かに、ベジタリアンでももともとは吸血鬼の一族なのかもしれない。

最近では、ついにパド族は村落に観光客の受け入れを開始することを決めたという。パド族と魔法文明の友好的な関係は始まったばかりだ。今後の展開に期待したい。

学食をめぐる -王立アトス大学3号館-

メニューもボリュームも充実している学生食堂をめぐるこの企画。

今回は王立アトス大学3号館にある学生食堂『アトスフードホール』、その一部をご紹介します。

大学内最大の学生食堂

王立アトス大学3号館地下2階には約1200席のゆとりあるスペースがあります。

3号館学生食堂『アトスフードホール』はフードコートを参考に作られたため多数の専門店があり、幅広いメニューを提供しているので学生や職員にとても人気です。

また魔術デザイン学部学部長であるハウンド・へーリンボン教授による空間デザイン魔法が学食内にかけられているため、地下とは思えない解放感と明るさが特徴です。

『OmuOmu』

オムライスとボリュームが自慢の洋食屋さん。

定番のメニューから毎日替わる日替わりメニューまで、毎日通っても飽きがこない学食のイメージを覆す新たなスタイルのお店です。

OmuOmuのおすすめはもちろんオムライス。特に5種類のソースから選べる「とろとろ半熟オムライス」がおすすめです。

また、すべてのメニューにサラダとデザート、スープ、ドリンクが付くので、ボリュームも満点なのが学生に人気なのだそう。

『Mecootto』

肉料理をメインに扱うお店です。

学生人気一番のメニューは何といってもあの魔術牛を使用したハンバーグ。

シェフ特製のデミソースがとても濃厚でおいしいんだとか。

もちろんニーニャ国・ヌーニャ国名物のローストマジックビーフも味わえます。

『麺匠あとす』

王立アトス大学のアトスの名を冠した麺類専門店。

日本出身学生からの希望でできたお店とあって、売りはうどんやそばなんだとか。

それ以外にも、ラーメンやパスタなど様々な種類の麺があるほか、トッピングも30種類以上ありこれまた毎日通っても飽きない工夫がされています。

『SweetBons』

スイーツ専門のお店。ランチタイムだけでなく講義の合間にもスイーツを楽しめるとあって女子学生たちに人気です。

シルフィーのシフォンケーキや口どけが自慢のクレームブリュレなど定番スイーツから、流行りのマンドラゴラ酒を使用したフルーツケーキまで多種多様なスイーツが楽しめます。

おいしく選んで、たのしく食べる

3号館学生食堂のキャッチコピーは「おいしく選んで、たのしく食べる」

そのキャッチコピー通り、どのお店も個性豊かでとてもおいしそうなメニューばかりで学生たちのキャンパスライフを彩っています。

今回ご紹介したのは極一部ですが、王立アトス大学3号館学生食堂は一般開放されているので皆さんも是非一度訪れてみてはいかがでしょうか。

また団体での利用も可能とのことで、学内団体で利用を希望の場合は学生支援課、学外団体で利用を希望の場合は総務課までお問い合わせくださいとのことです。

ルタザシャ岩窟世界遺産登録へ ~忘れてはならない負の遺産~

この度、マルクトア公国ラウゴーア地方にあるルタザシャ岩窟が新たに世界遺産に認定された。同国における世界遺産の登録は、150年前に登録されたテオバルド鉱山帯に続いて2つ目となる。

ルタザシャ岩窟は、第4次魔法大戦の際に敵国軍から逃れたオーク族の人々がシェルターとして活用していた場所である。

この岩窟はルタザシャ山に数箇所あり、今回はこれらの全てが登録遺産の対象となっている。もっとも大きな岩窟は直径30m、奥行は8km程のものとなる。

現在は観光地として各岩窟までの山道も整備され、身体能力の低い人間族であっても比較的辿り着きやすくなってはいるが、戦争当時はオーク族ですら5人に1人しか辿り着けない過酷な場所であったと言われている。

その理由としては、ルタザシャ山の山肌にある。岩窟に辿り着くには、木々も生えていない岩ばかりの斜面を降りていかなければならず、足腰の弱い老人や、子供、女性は多くが滑落し、捕虜になることからは逃れられたものの命を落とした。

この背景からも推察されるように、この岩窟は他種族には容易に辿りつけない場所であり、シェルターとしてはかなり強固で有効であった。そのため、他種族からの侵攻から逃れたという点においては、オーク族の人々に安心をもたらした。

しかしながらそれは束の間の安寧であり、岩窟内では更なる問題が待ち受けていた。

何故なら、ルタザシャ山は鉱山としてはたいへん優れている山であっても、植物を生育するには非常に厳しい環境であったからだ。
そのため人々は十分な食糧を確保することができず、今度は飢えとの戦いを余儀なくされた。

この問題でも最初に犠牲になったのは弱者である老人や子供達であったが、悲劇はそこで留まらなかった。
日に日に積み重なる同胞の亡骸と飢えに苦しみにながらも生にしがみつく人々。そんなぎりぎりの極限状態の日々も長くは続かず、彼等は生への執着から最大の禁忌を犯してしまうことになった。

『同胞喰い』

彼らは生き延びるために、目の前に積み上げられた同胞の死体を食べて生き残ることを選んだのだ。

この事実に関してはその悍ましさ、凄惨さから教科書から一時期削除されている時代はあったものの、現在では伝えなくてはいけない史実として、オーク族は元より全種族の歴史の教科書に記されている。

中でも、多くの教科書に採用されている『ヘルマルク・ラウゴルフの独白』の一節は、強烈なインパクトから誰もが記憶しているだろう。

第4次魔法戦争から間もなく300年が経つ。

戦争当時を知っているオーク族も少なくなった。語り継ぐ者がいなくなれば、この陰惨な戦争も、将来は負のお伽噺として片付けられてしまうことだろう。

しかしながら、ヘルマルク氏の著書にも語られている通りこれらの出来事は事実であり、後世まで遺していかなくてはならない歴史である。

最後に、ヘルマルク氏の独白を用いてこの記事の結びとしたい。

“生き残るには食べなきゃいけねぇんだよ”

それが誰が発したかなんて覚えちゃいない。

でも、その声は決して大きくはないが、岩窟内にのオーク族全員に聞こえていることは何となくわかったんだ。

何万人といるのにだ──誰ともわからないその声が響いてからの出来事はあっという間だったさ。

誰しもが死体の山に駆け寄って行くんだ。昨日までは間違いなく人としてその死を悼んでいたみんな普通の連中がだ、今日には食糧として同胞の死体を見ているんだ。血走った眼でな。

そこからは地獄だった……朝夕問わず骨を砕く音や内蔵を啜る音が聞こえてくるんだ。

あんた、自分の妹が喰われているのを見たことあるかい?

なら、自分の親友を喰ったことは?

俺はな、親友だった男とその嫁とそれから子供。その3人を喰って今日まで生きてきたんだ──

──ヘルマルク・ラウゴルフの独白 序章より──

新技術、回顧魔法を用いた遺物調査の難しさ

魔法技術の向上により、物の記憶を見る“回顧魔法”が考古学の分野でも用いられることが増加した。遺物のごく一部、数グラムを用いて物の年代を正確に知ることができる新技術によって、数々の新事実が判明したことは確かである。

しかし、その成果を安易に強調するのは危険性が伴うとする調査結果が、魔法考古学会の第472回総会において提出された。

回顧魔法自体はごく単純な魔法であり、いつの記憶を見たいかを設定することで写真のようにその様子を写すことができる。基本的には簡単な魔法で技術者を選ぶことは無いが、画像は古い記憶になるほど不鮮明になり、どの時点での記憶を見るのかを操作するには非常に高い魔法技術が求められる。その点において、考古遺物は数千年、数万年の記憶を保有しており、目当てとなる製作された年代、用いられた期間、廃絶された時期を断定することは難しい。遺物一つを鑑定するのに数年かかるという試算も提示された。

そんな中でも回顧魔法による成果が報告され続ける背景には、限界年代という概念が用いられたためである。これは回顧魔法が考古学において用いられるようになってから導入されたものであり、回顧魔法を使用できる年代の下限を調べることによって、それを製作年代に充てるものである。

しかし、回顧魔法に遺物の一部を消費して使用するゆえに、土器であれば使用した土、石器であれば石そのものが生成された、その形となった時代を示す可能性があり、年代が下がることを指摘した分析結果にも疑問が示される。

今回の調査を主導したアルハト・デジャル氏(アッサム考古博物館教授)は、「回顧魔法のみを用いた分析を絶対視することは難しいが、従来の編年研究に根差した分析に用いることはできるのではないだろうか。ただ、今後技術の発達によってより少ない資料で、緻密な研究が可能になるだろう。今回の報告は、あくまで現段階の物と理解していただきたい」と述べ、回顧魔法を用いた分析の今後に期待を寄せる考えを示した。

コラム:ことわざ豆知識~エルフの炭鉱夫 オークのお針子~

今回のことわざ豆知識は夏休みVer.でお送りします。

今年の夏はものすごく暑いですね。

皆さん、夏休みの宿題は順調でしょうか。

夏休み最終日に泣かないように宿題は計画的に進めましょうね。

さて今回はことわざに関するお話です。

次のことわざの正しい意味をABの2つから選んでくださいね。

ことわざ

『エルフの炭鉱夫 オークのお針子』

意味

A:才能に見合ってない仕事をさせることは無意味である。

B:人には見かけによらず思わぬ才能が隠れていることがある。

正解は

B:人には見かけによらず思わぬ才能が隠れていることがある。

こちらが正解です。

現在ではことわざの文面の印象からAの意味と誤って覚えている人が沢山いますが、正解はBです。

ちなみに、このことわざは次の2人の人物に由来しています。

まず1人目はエルフ族のシルヴィス・オーヴィー氏です。

彼はエルフ族初の炭鉱夫でした。またドミニャナス鉱山を発見したことにより財を成し、炭鉱夫を引退した後は炭鉱夫たちの労働改革を行った功績者として有名です。

2人目はオーク族のディオルガ・マヌエル氏です。

彼女はオーク族出身のデザイナーとして、王国で初めて単独でファッションショーを行い成功を収めました。着ると“幸せな家庭を築ける”ことで有名なウェディングドレスブランド「フェリシダット」や、産まれて最初に身に付けると“生涯着るものに困らない”と言われているベビーウェアブランド「エテルノ」の創設者として知られています。

この長い夏休み、“どうせ自分には出来ないから”と悲観的になって避けていたことに思いきって挑戦してみてはどうでしょうか。

『エルフの炭鉱夫 オークのお針子』

この2人のように皆さんにも思わぬ才能が隠れていて、新しい自分に出会うことができるかもしれませんよ。

彼らの生涯は伝記にもなっているので、読書感想文の候補の本にしてみてはいかがでしょうか。

それでは、よく学び、よく遊びこの夏休みを沢山楽しんで下さいね!

覚醒申告自動補助術式を導入 手続き簡略化進む

毎年山羊の月になると、「覚醒申告」の文字が目に入るようになる。

覚醒申告とは、体内の魔素分泌量が一定量を超えた場合に必ず行わねばならない申告手続のこと。

しかし、魔素分泌量の計測や詳細な使用用途の記載など、覚醒申告の手続きの難解さゆえに世の魔術師たちの悩みの種となっている。

そこで今年、魔導通信掲示板『アラクネット』において、覚醒申告の書類作成を補助してくれる自動術式の運用が開始された。

術式が提示する質問に順番に答えていくことで、自分が覚醒申告のどの分類に当てはまるのかがわかる上に、設置されたデバイスから魔素分泌量の計測や分泌量が一定量を超えた時期の特定が行える。さらにデバイスがきちんと揃っていれば、その場で書類を印刷することもできるという優れものだ。

自動補助術式の導入により、魔術師達からは喜びの声が上がっている。

「覚醒申告はとてもわずらわしい作業だからね。申告をサボる魔術師とかもよくいるんだ。僕はちゃんと申告していたけど、すごくストレスだったよ。この術式は便利だね。時間の短縮にもなる。政府もたまには良いことをするね」

「俺たちは体は一つなのに2人分申告しなきゃいけないんだぜ? 『そうだ。頭が2つだからな』覚醒申告の時期になるともう毎朝憂鬱さ。コーヒーの味もわからねぇくらいにな。『ハムエッグの味もわからない』アレ(補助術式)ができてマジで助かったぜ。これでゆっくり朝食を味わいながら新聞を読めるってもんさ『俺はマンガを読むぜ』国もたまには役に立つよな」

計測・印刷デバイスの設置は現在ハウザル地方のアラクネットに限られているが、国際魔術機構は2年後に全てのアラクネットへのデバイス設置を完了させることを目標としている。

面接マナー講座 魔法使い編

今年も就職活動の季節がやってきました。

これまで覚えた魔法を、どんな仕事に活かそうかと期待に胸膨らませる新米魔法使いの皆さん。どんな進路を考えておいででしょうか。

狙うは魔法省ですか? それとも近衛術師団?
敢えて小さな魔女の薬屋で活躍? もしくは路地裏の呪い師?

しかし――毎年、多くの新米魔法使いが、進路選びに失敗します。

王立星読院を目指していたのに、プールの監視魔導師になってしまったり。
医療魔導師になりたかったのに、気付いたら人型植物の剪定士になっていたり。
ひどい場合だと、魔術漁師の資格を取った筈が、異界潜航員として潜界艇に配備されてしまうなんてことも。

皆さんこんにちは。メンタル魔法士のパスタ・スヴァミソーニです。

就職、大事ですよね。せっかく魔法を身に着けたのだから、自分の魔法にあった就職先を選びたいところ。しかし魔法使いの就職には、往々にして悲劇がつきものです。

どうして魔法使いは進路選びに失敗してしまうのでしょうか? 答えは簡単です。魔法使いの大半は、面接で負けてしまうのです。

面接の基本

面接――進路選びにおいて避けては通れない関門です。

魔法の実力さえあれば、認められると思っていませんか?
黙っていても、面接魔導師が自動的に気持ちを読み取ってくれると思っていませんか?
残念ながらそんなことはありません。

面接は戦いです。

言語的な対話を隠れ蓑にした真剣勝負。それが魔法使いの面接です。

「はじめまして」の一言と共に形而上の仮想空間には電撃が飛び交い、「本日はよろしくお願いいたします」の声と共に非実体質量が爆発し、名前を名乗った瞬間から真名をかけた呪術的対決が始まっているのです。

もう一度言います。魔法使いの面接は戦いです。
隙あらば面接官を全滅させる――最低でも、面接官一人は討ち取る気概で挑みましょう。

入室で差をつけろ

「待合室の時点で面接は始まっている」というのは有名な話です。
もしも同じく面接を受ける新米魔法使いがいるならば、密かに連絡を取り合い作戦を練りましょう。複数人でかかることができれば、面接官の首級はぐっと近づきます。

とはいえ、新米魔法使いが結託して襲ってくることくらいは面接官も想定済み。たいていの新米魔法使いは個室に隔離され、個人戦を余儀なくされます。

そこで大切になってくるのは、入室時のマナーです。
入室は、面接において唯一無二の奇襲のチャンスです。

ノックの回数で呪いをかけましょう。ドアノブに触れた瞬間に魔法陣を這わせましょう。ドアを開ける動作で霊を降ろしましょう。そこまでやって最低限です。
可能であれば、入室前の段階で仮想空間の占有率を圧縮し、対面した瞬間に形而上の主導権を完全に握るつつもりで挑みましょう。もちろん、現象世界では笑顔を作ることは忘れずに。

もしも入室前の段階で、面接官がトイレに立つなどのことがあれば千載一遇の好機です。必ず闇討ちして、頭数を減らしておきましょう。とっさの対応力が問われるところです。

属性魔法は時代遅れ

自己アピールで、得意な属性魔法をアピールする……魔法使いの面接ではよく見る光景です。火属性が得意な人は火球魔法を披露したり、風属性が得意な人はかまいたちを披露したり。

ですが、残念ながらナンセンスです。
何度でも言います。魔法使いの面接は戦いです。

自己アピールは、形而下の現象世界で攻撃を仕掛けるチャンスなのです。

もちろん、物理的に面接官を傷つけてしまうのはマナー違反。自己アピールを装いつつ、形而上での布石を打つのがスマートなやり方です。
最も簡単なのは、「闇属性魔法が得意です」とアピールしつつ、面接官の心の闇に侵入する方法です。面接官の精神防壁が薄ければ、そのまま過去のトラウマを刺激して心を破壊してしまいましょう。

あるいは、「召喚魔法が得意です」とアピールしつつ、自分にとって有利なフィールドをまるごと召喚してしまうという手もあります。例えば観客ごとライブ会場を召喚して、単独ライブに持ち込むのは有効です。
ほかにも面接官の足元に「意味論的落とし穴」を召喚し、精神そのものを落としてしまう方法もおすすめ。召喚魔法は創意工夫次第で様々な利用法があります。自分だけの殺意を研ぎ澄ませましょう。

逆質問こそ最後のチャンス

面接の最後には、面接官が「何か質問はありますか?」と聞いてくることがあります。所謂、逆質問タイムです。

入室から自己アピールまで、うまく面接官と形而上で戦いを繰り広げていれば、お互いの精神は極限まで疲弊している筈。もちろん、より早く仕留められればそれに越したことはありませんが、逆質問は面接官を刈り取る最後のチャンスです。

よく知られている通り、現象世界における行動の表象は、形而上の仮想空間にも大きな影響を及ぼします。逆質問タイムはその表象のために、言語行為の主導権が完全に新米魔法使い側に移ります。面接官の論理防壁が極限まで薄くなる機会が、逆質問の時なのです。

「仕事で一番やりがいを感じたことはなんですか?」など、適当な質問を口にしましょう。この時、質問自体は適当で構いません。重要なのは、その後です。

面接官が正直に答えたならば、「私の質問に答えた」という表象を利用して、形而上空間では面接官の真名を引きずり出しましょう。形而下で正直に答えている以上、形而上世界で嘘をつくのは難しいのです。
面接官が嘘をついたならば、「私に嘘をついた」という表象を利用して、形而上空間で論理攻撃を仕掛けましょう。表象に絡みついた嘘という罪により、面接官の防御力が極限まで落ちている筈です。

ここで逆質問がうまくいけば、必ず面接官を倒せます。最後まで諦めずに戦いましょう。

まとめ

  1. 面接は戦いである
  2. 入室の段階で奇襲をかけろ
  3. 自己アピールで布石を打て
  4. 逆質問でトドメを刺せ

なお、今回の面接講座は新米魔法使い向けです。
戦士ギルド加盟各社への志望者や、エルフ族やドワーフ族では作法が全く異なってきますので、ご注意を。

[著者プロフィール]
パスタ・M・スヴァミソーニ
王立アトス大学錬金経済学部卒。3年前に株式会社スーパーナチュラルリサーチを設立。現在は魔法コンサルタントを兼務。座右の銘は「アジェンダを錬金術でマネタイズ」。

ゾンビに人権が認められる – バラグビア

芽吹きの月3日、バラグビア教皇庁は正式にゾンビの人権を承認すると声明した。ゾンビの人権が認められたのは世界初。

バラグビアは、複字教の聖地を擁する宗教国家。教皇を中心とした厳粛な政治体制で知られ、近年「聖地で死にたい」という観光客が増加、ゾンビ人口の急増が社会問題となっていた。

肥大する国内のゾンビ人口に対応する形で、バラグビア教皇庁はゾンビの人権を承認。正式な声明を発表した。

複字教では死者に人権を認めておらず、ゾンビ人権の承認は複字教国としてはきわめて異例。

神学者の見解では、ゾンビの人権問題を考えるにあたって重要な争点となるのは「心臓の鼓動」だった。

複字教の聖典には「聖者は心臓の音を聞き、人か悪魔かを見分けた」という一節がある。通常、ゾンビは既に心肺停止状態にあり、鼓動がないため悪魔の一種という判定を受けてきた。

しかし今回、ゾンビ側は「自らの心臓を手掴みで動かす」という方法で心音の問題をクリア。バラグビア教皇も「ハツが動いてんなら、人でええんちゃう」と笑顔を見せた。

「これまで我々は、人間と変わらぬ心を持ちながら、非人間的扱いを受けてきました」

喜びの声を上げたのは、ゾンビ人権団体代表のトゥフナット氏。氏は二十三体のゾンビが合体した、合成ゾンビとして知られている。

「これを機に、各国もゾンビの人権について再考すべきですね。……おっと失礼」

そう語るトゥフナット氏の八番目の顔が、弊社記者を丸呑みにした。

弊社記者はトゥフナット氏の二十四番目の合成体となり、めでたくトゥフナット氏付きの番記者へと配置転換された。平均2年から3年は精神も吸収されずに独立しているため、継続的な取材が可能な見込みだ。

一夜にして世界有数の人権先進国となったバラグビア。今後の動向に着目したい。

自己紹介にご注意を ~名取の一族~

突然だが、あなたは自分の名前の由来を知っているだろうか?

“名前”──それはあなたがこの世に生を受けた祝福として、いちばん最初に贈られるプレゼントだ。

「名付けの儀式」 原始の魔法忘れるべからずで紹介されているように、存在だけでなく事象に対して“名を付ける”という行為は非常に強い意味を持ち、また重要であるということは、記事を読まれたあなたなら理解しているだろう。

ちなみに、私のライターネームは季節に由来する。名前について話題を振っておきながら、なぜはっきりと明記しないのかと苦情が来そうだが、深く話せない理由はこれから紹介する内容にある。

“名取りの一族”をあなたは知っているだろうか。

彼らはその名が示すように、相手の“名”を“取”りその勢力を伸ばしてきた一族である。

冒頭でも述べたように、名前を持つということは、非常に重要なことである。なぜなら、名前はあなたとこの世界を繋ぐための“鎖”だからだ。

では、その名前が奪われてしまったとしたら。
奪われてしまったモノがどうなってしまうのか……。
想像には難くない。

“名取の一族”に関する情報は少なく、現在でも謎に包まれている一族のひとつである。

『いいかい。XXX──。
本当の名前を教えてはいけないよ。
名前を明かすということは、魂を明け渡すも同然だからね』

子供のころに祖母からさんざん──それこそ耳にタコが出来るほど聞かされた忠告を、この記事を書いている最中に何度も思い出した。

今思えば、祖母は彼らに関する情報を知っていたのかもしれないが、既に輪廻の輪に乗ってしまったため確認する術がないことが悔やまれる。

ただひとつ、この記事を読んでいるあなたに私からアドバイスをするとすれば、不用意な呼び掛けには応じるべきではないかもしれない。

もしかしたら、あなたのよく知っている友人や恋人が“名取の一族”である可能性がないとは言い切れないのだから。