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新種発見で鳥のささやき病に進展 病気ではなかった可能性

原因不明の奇病として扱われてきた“鳥のささやき病”について進展があった。幻聴と思われていた「鳥のささやき」は、実在する鳥の鳴き声だったことが判明した。近く、世界医療魔法連盟が声明を発表する。

鳥のささやき病は、周りに鳥がいないのにさえずりのような音が聞こえる病気。ンジルンダ島で春の期間に限り発症が確認されている。一時的な集団精神汚染や幻術魔法の暴走により発症すると推測されていたが、発症する環境に統一性はない。

先日魔法動物省の研究チームが発表した内容によると、ンジルンダ島には「姿の見えない鳥」が生息していた。ンジルンダ島の固有種とみられ、研究チームはこの鳥を「ンジルンダカラカゴトリ」と名付け新種として登録した。

ンジルンダカラカゴトリは、幻術魔法を帯びた羽根で周囲の景色と同化しており、外敵から身を守っている。互いの姿が見えないため、繁殖期に入ると鳴き声で異性にアピールするのではないだろうか。

(魔法動物省 研究チームの発表より)

発表を受け、ンジルンダ市長は「住民の長年の悩みだった病に答えが出たことは素直にうれしい。しかし、高齢の住民を中心に、心理的に受け入れられない発表だった。魔法動物省の担当者と連携を取り、住民のみなさまに丁寧に説明していく必要がある」と発表した。

病気ではなかった鳥のささやき病。住民がその事実を受け入れるまで、まだ時間がかかるのかもしれない。

王立魔法生物学研究所よりお詫び

このたび、当魔法生物研究所の熱帯多雨林模倣飼育室より、指定魔法生物であるサソリの一種・ルナティックスパイク(medicamentum lymphatus)が、オスとメスの番で盗難されたことがわかりました。謹んでお詫び申し上げます。

ルナティックスパイクが有する毒は「万毒の祖」とも呼ばれ、特に体内の神経と魔力に作用し、強力な幻覚作用を引き起こします。あらゆる毒に悪用が可能な本種ですが、魔術的に空間を拡張して自然を再現した環境で飼育されており、個体数の確認が不十分だったため発覚が遅れました。また、当研究所の管理システムの記録を解析しても、外部犯より内部犯の可能性が高かったため、盗難された事実の確認がとれるまで時間を要しましたこと、重ねてお詫び申し上げます。

ルナティックスパイクの飼育個体数が減少していたことは、半期に一度行っている、飼育下の全魔法生物の個体数調査を行った際に発覚いたしました。餌の減少量の記録から盗難時期を推定し、警備を行っていた職員の記憶を精査したところ、一部の職員において記憶の混濁が確認されました。外部犯の可能性が高まり、捜査当局へ詳しい調査を依頼したところ、盗難であることが確定いたしました。

ルナティックスパイクは、体長45センチメートルほどに成長する大型のサソリであり、頭がムラサキ色で尻尾にかけて深緑色のグラデーションがかかっていることが特徴です。このようなサソリを所持する人物を見かけたら、まずは十分な距離を取った上で、王立魔法生物学研究所などにご連絡ください。

皆様におかれましては、大変なご不安をおかけいたしますこと、誠に申し訳ございませんでした。

新型トイレ導入で学内紛糾 – アトス大

王立アトス大学では、新型トイレ導入をめぐる対立が激しさを増している。近代魔術学部学長のズゾパヌル・ウャ教授(83)は、評議員会と理事会で新型トイレ設置の承認をもぎ取った。しかし反発した一部の教職員側がズゾパヌル教授に呪いをかけるなど、抗議を続けている。背景には、神秘学部の主導する神学的な対立があるようだ。

左:旧型/右:新型

「近年、尻尾のある種族や多脚型の学生が増加している」「多様な学生に配慮した、使いやすいデザインであるべきだ」

先月67日に開かれたアトス大の評議員会では、新型トイレの導入をめぐり朝まで激論が交わされたという。関係者によると、評議員37865人の投票で、選任案賛成は委任状を含め過半数を超える19865票。続く理事会も「評議員会の判断を尊重する」などの意見が多数を占め、新型トイレは順次導入されることに決まった。

そこに待ったをかけたのが、フル・フルチ名誉教授(509)率いる神秘学部の講師陣だった。フル名誉教授は19年前まで教皇庁直轄の異端審問所に籍を置き、現在も聖キャベツ派の最右翼として知られている。
「元・異端審問官として、伝統を破壊するような蛮行は見逃せぬ」
そう叫ぶフル教授は、素手で新型導入派の職員を薙ぎ倒したという。教授は異端審問官時代は暗殺部門一の使い手として鳴らした武闘派。新型トイレ導入派の職員は、首をはねられる等の重軽傷を負った。

フル教授ら神秘学部の講師陣は、今も南キャンパス8階のトイレを占拠している。伝統的な異端審問官の黒衣すら脱ぎ捨て、不退転の意志を見せた。

▲(参考資料)異端審問官の黒衣

「まったく、半裸のおっさん達に居座られて、こっちはたまったもんじゃないですよ」
8階トイレ氏自身が困惑の表情でそう語った。
「なんでもいいから、トイレで流血沙汰はやめてほしいですね。流すのは紙だけにしてほしいです」

新型トイレに改装予定だった8階トイレ氏本人は、図らずも新旧の対立に巻き込まれた形。新型トイレを巡る紛争は、今しばらく続きそうだ。

「1枚…2枚……10枚? あれ?」皿屋敷で幽霊にブラック労働強制 9進法を不正利用か

幽霊従業員を無期限労働させたとして、魔法労働監督寮は10日、霊労法違反容疑で万代田区の食器メーカー「古石町皿屋敷」と同社社長を書類送検した。社長である男性(405)は容疑を認めている。

労働監督寮によると、男性は約300年前から今年までの間に、幽霊従業員に休憩なしの無期限労働を強いるなどした。皿屋敷の土地一帯に9進法結界を仕掛け、無意識下に9進法をインストールし霊習性を狂わせたという。

「マジか」と被害者のお菊さん(享年17歳)は語る。「1まーい……2まーい……って数えて、ちゃんと10枚数えたんだけど、どう見ても9枚しかないんすよね。おかしいなーと思って数え直してたら300年経ってたわ」と、困惑をあらわにした。

皿屋敷周辺では、「なんか若返ったような気がする」「狂うはずのないアイアス時計が狂う」「わしの髪の毛が1本少ない」などの不審な噂が相次ぎ、違法行為が発覚した。労働監督寮は引き続き、不審な結界に注意するよう呼びかけている。

ジャングル奥地で未開部族発見される 3000年前の血筋か

レドルフランケ南部の未踏地域深奥にて、未開部族の実在が確認された。レドルフランケの一部地域では南部原生林に生きる古い部族の伝説が長老たちの間で語り継がれていたが、前魔法的な生活を送る部族の実在は驚きをもって受け止められている。

発見したのは、魔法植物学の専門家ガオ=ケレナ氏。部族は3000年以上前の吸血鬼の血族である可能性が指摘されている。

樹獣に追われた際に偶然遭遇

▲深い森に隠された村落


モロプス獣人であるガオ=ケレナ氏はほぼ1年を通して原生林の植生調査をしており、今回の遭遇も偶然だったという。

「体高18メートル程度でしょうか。運悪く成体の樹獣に見つかってしまったんです。あれは肝が冷えました」
原生林には未だ生態の解明されていない、巨大な樹獣が多数生息している。氏ほど経験のあるフィールドワーカーですら、犠牲になることもある。
「気付かないうちに、深奥に入り込み過ぎたんですね。もうだめだ、と目を瞑った時でした」
紙一重のところで、ケレナ氏は部族の一人に助け出された。秘密の森道を通り、氏は部族の村落に迎えられたという。

「人喰い族、だなんて噂を聞いていたので、最初は食べられてしまうのかと思いました。ほら、私って美味しそうでしょう?」
ケレナ氏はふわりとした体毛を掻きながら笑った。
「でも、違ったんです。彼ら、ベジタリアンなんですよ。ちょっと見た目は怖いけれど、優しく穏やかな民族です」

古き血脈のパド族

▲パド族に典型的な犬歯


ケレナ氏に接触した彼らは、“パド族”という古い古い民族だった。深い森に閉ざされ歴史に忘れられたパド族だが、決して閉鎖的でも排他的な訳でもない。少しだけシャイで、しかし友好的な人々だ。事実、ケレナ氏との邂逅以後は、少しずつだがレドルフランケ南部の村々と交流が始まっている。

パド族は、前魔法的な生活を営む牧歌的な民族だ。我々が渡す魔法の品々を、いつもおっかなびっくり受け取っていく。文字を保たないパド族は、数千年もの間、外界から隔絶された森の中で、魔法とは無縁な生活を営んできた。専門家の見解では、パド族は3000年以上前に断絶した、古い吸血鬼の血脈である可能性があるという。吸血鬼の魔力は、その血脈の古さに比例する。現在王国内で確認されている吸血鬼の血脈は200年来程度であり、パド族の歴史が事実であれば、その潜在魔力は計り知れない。

パド族の人々は、その多くが金色の瞳と長い犬歯を持っている。この一見恐ろしげな容貌が「人喰い族」などといった噂の元だったのかもしれない。しかしケレナ氏が語るように、パド族はその全員がベジタリアンなのだ

吸血を忘れたベジタリアン

▲パド族が育てる“命の実”


宗教的に肉食が禁じられている……という訳ではない。パド族がベジタリアンになったのは、ひとえに森の恵みが豊かであった故なのだ。

「これが、パド族の主食です。驚きましたよ。何千年も前から、こんな美味しいものを食べてきたんですね」
植物学者のケレナ氏すら唸らせる、パド族の作物。彼らが“命の実”と呼ぶその赤い果実は、瑞々しく、ほのかな甘みが舌に心地良い。原生林深奥でしか育たないこの果実は、レドルフランケ地方で今ひそかなブームになっている。
「物々交換だけでも、相当な物資が集まってますよ。みんな食べたいんですよ、この“命の実”をね」
今やパド族との橋渡し役となったケレナ氏が、屈託のない笑顔を見せた。

“命の実”と引き換えに我々が「血液パック」をパド族に渡すと、不思議そうに味わった彼らは、すぐにおかわりを要求してきた。おもしろいことに、パド族の間では血液パックが流行しており、せっせと“命の実”を持ってくるようになっている。血液パックを飲んだパド族は、目を輝かせて笑ってみせる。確かに、ベジタリアンでももともとは吸血鬼の一族なのかもしれない。

最近では、ついにパド族は村落に観光客の受け入れを開始することを決めたという。パド族と魔法文明の友好的な関係は始まったばかりだ。今後の展開に期待したい。

ルタザシャ岩窟世界遺産登録へ ~忘れてはならない負の遺産~

この度、マルクトア公国ラウゴーア地方にあるルタザシャ岩窟が新たに世界遺産に認定された。同国における世界遺産の登録は、150年前に登録されたテオバルド鉱山帯に続いて2つ目となる。

ルタザシャ岩窟は、第4次魔法大戦の際に敵国軍から逃れたオーク族の人々がシェルターとして活用していた場所である。

この岩窟はルタザシャ山に数箇所あり、今回はこれらの全てが登録遺産の対象となっている。もっとも大きな岩窟は直径30m、奥行は8km程のものとなる。

現在は観光地として各岩窟までの山道も整備され、身体能力の低い人間族であっても比較的辿り着きやすくなってはいるが、戦争当時はオーク族ですら5人に1人しか辿り着けない過酷な場所であったと言われている。

その理由としては、ルタザシャ山の山肌にある。岩窟に辿り着くには、木々も生えていない岩ばかりの斜面を降りていかなければならず、足腰の弱い老人や、子供、女性は多くが滑落し、捕虜になることからは逃れられたものの命を落とした。

この背景からも推察されるように、この岩窟は他種族には容易に辿りつけない場所であり、シェルターとしてはかなり強固で有効であった。そのため、他種族からの侵攻から逃れたという点においては、オーク族の人々に安心をもたらした。

しかしながらそれは束の間の安寧であり、岩窟内では更なる問題が待ち受けていた。

何故なら、ルタザシャ山は鉱山としてはたいへん優れている山であっても、植物を生育するには非常に厳しい環境であったからだ。
そのため人々は十分な食糧を確保することができず、今度は飢えとの戦いを余儀なくされた。

この問題でも最初に犠牲になったのは弱者である老人や子供達であったが、悲劇はそこで留まらなかった。
日に日に積み重なる同胞の亡骸と飢えに苦しみにながらも生にしがみつく人々。そんなぎりぎりの極限状態の日々も長くは続かず、彼等は生への執着から最大の禁忌を犯してしまうことになった。

『同胞喰い』

彼らは生き延びるために、目の前に積み上げられた同胞の死体を食べて生き残ることを選んだのだ。

この事実に関してはその悍ましさ、凄惨さから教科書から一時期削除されている時代はあったものの、現在では伝えなくてはいけない史実として、オーク族は元より全種族の歴史の教科書に記されている。

中でも、多くの教科書に採用されている『ヘルマルク・ラウゴルフの独白』の一節は、強烈なインパクトから誰もが記憶しているだろう。

第4次魔法戦争から間もなく300年が経つ。

戦争当時を知っているオーク族も少なくなった。語り継ぐ者がいなくなれば、この陰惨な戦争も、将来は負のお伽噺として片付けられてしまうことだろう。

しかしながら、ヘルマルク氏の著書にも語られている通りこれらの出来事は事実であり、後世まで遺していかなくてはならない歴史である。

最後に、ヘルマルク氏の独白を用いてこの記事の結びとしたい。

“生き残るには食べなきゃいけねぇんだよ”

それが誰が発したかなんて覚えちゃいない。

でも、その声は決して大きくはないが、岩窟内にのオーク族全員に聞こえていることは何となくわかったんだ。

何万人といるのにだ──誰ともわからないその声が響いてからの出来事はあっという間だったさ。

誰しもが死体の山に駆け寄って行くんだ。昨日までは間違いなく人としてその死を悼んでいたみんな普通の連中がだ、今日には食糧として同胞の死体を見ているんだ。血走った眼でな。

そこからは地獄だった……朝夕問わず骨を砕く音や内蔵を啜る音が聞こえてくるんだ。

あんた、自分の妹が喰われているのを見たことあるかい?

なら、自分の親友を喰ったことは?

俺はな、親友だった男とその嫁とそれから子供。その3人を喰って今日まで生きてきたんだ──

──ヘルマルク・ラウゴルフの独白 序章より──

新技術、回顧魔法を用いた遺物調査の難しさ

魔法技術の向上により、物の記憶を見る“回顧魔法”が考古学の分野でも用いられることが増加した。遺物のごく一部、数グラムを用いて物の年代を正確に知ることができる新技術によって、数々の新事実が判明したことは確かである。

しかし、その成果を安易に強調するのは危険性が伴うとする調査結果が、魔法考古学会の第472回総会において提出された。

回顧魔法自体はごく単純な魔法であり、いつの記憶を見たいかを設定することで写真のようにその様子を写すことができる。基本的には簡単な魔法で技術者を選ぶことは無いが、画像は古い記憶になるほど不鮮明になり、どの時点での記憶を見るのかを操作するには非常に高い魔法技術が求められる。その点において、考古遺物は数千年、数万年の記憶を保有しており、目当てとなる製作された年代、用いられた期間、廃絶された時期を断定することは難しい。遺物一つを鑑定するのに数年かかるという試算も提示された。

そんな中でも回顧魔法による成果が報告され続ける背景には、限界年代という概念が用いられたためである。これは回顧魔法が考古学において用いられるようになってから導入されたものであり、回顧魔法を使用できる年代の下限を調べることによって、それを製作年代に充てるものである。

しかし、回顧魔法に遺物の一部を消費して使用するゆえに、土器であれば使用した土、石器であれば石そのものが生成された、その形となった時代を示す可能性があり、年代が下がることを指摘した分析結果にも疑問が示される。

今回の調査を主導したアルハト・デジャル氏(アッサム考古博物館教授)は、「回顧魔法のみを用いた分析を絶対視することは難しいが、従来の編年研究に根差した分析に用いることはできるのではないだろうか。ただ、今後技術の発達によってより少ない資料で、緻密な研究が可能になるだろう。今回の報告は、あくまで現段階の物と理解していただきたい」と述べ、回顧魔法を用いた分析の今後に期待を寄せる考えを示した。

覚醒申告自動補助術式を導入 手続き簡略化進む

毎年山羊の月になると、「覚醒申告」の文字が目に入るようになる。

覚醒申告とは、体内の魔素分泌量が一定量を超えた場合に必ず行わねばならない申告手続のこと。

しかし、魔素分泌量の計測や詳細な使用用途の記載など、覚醒申告の手続きの難解さゆえに世の魔術師たちの悩みの種となっている。

そこで今年、魔導通信掲示板『アラクネット』において、覚醒申告の書類作成を補助してくれる自動術式の運用が開始された。

術式が提示する質問に順番に答えていくことで、自分が覚醒申告のどの分類に当てはまるのかがわかる上に、設置されたデバイスから魔素分泌量の計測や分泌量が一定量を超えた時期の特定が行える。さらにデバイスがきちんと揃っていれば、その場で書類を印刷することもできるという優れものだ。

自動補助術式の導入により、魔術師達からは喜びの声が上がっている。

「覚醒申告はとてもわずらわしい作業だからね。申告をサボる魔術師とかもよくいるんだ。僕はちゃんと申告していたけど、すごくストレスだったよ。この術式は便利だね。時間の短縮にもなる。政府もたまには良いことをするね」

「俺たちは体は一つなのに2人分申告しなきゃいけないんだぜ? 『そうだ。頭が2つだからな』覚醒申告の時期になるともう毎朝憂鬱さ。コーヒーの味もわからねぇくらいにな。『ハムエッグの味もわからない』アレ(補助術式)ができてマジで助かったぜ。これでゆっくり朝食を味わいながら新聞を読めるってもんさ『俺はマンガを読むぜ』国もたまには役に立つよな」

計測・印刷デバイスの設置は現在ハウザル地方のアラクネットに限られているが、国際魔術機構は2年後に全てのアラクネットへのデバイス設置を完了させることを目標としている。

ゾンビに人権が認められる – バラグビア

芽吹きの月3日、バラグビア教皇庁は正式にゾンビの人権を承認すると声明した。ゾンビの人権が認められたのは世界初。

バラグビアは、複字教の聖地を擁する宗教国家。教皇を中心とした厳粛な政治体制で知られ、近年「聖地で死にたい」という観光客が増加、ゾンビ人口の急増が社会問題となっていた。

肥大する国内のゾンビ人口に対応する形で、バラグビア教皇庁はゾンビの人権を承認。正式な声明を発表した。

複字教では死者に人権を認めておらず、ゾンビ人権の承認は複字教国としてはきわめて異例。

神学者の見解では、ゾンビの人権問題を考えるにあたって重要な争点となるのは「心臓の鼓動」だった。

複字教の聖典には「聖者は心臓の音を聞き、人か悪魔かを見分けた」という一節がある。通常、ゾンビは既に心肺停止状態にあり、鼓動がないため悪魔の一種という判定を受けてきた。

しかし今回、ゾンビ側は「自らの心臓を手掴みで動かす」という方法で心音の問題をクリア。バラグビア教皇も「ハツが動いてんなら、人でええんちゃう」と笑顔を見せた。

「これまで我々は、人間と変わらぬ心を持ちながら、非人間的扱いを受けてきました」

喜びの声を上げたのは、ゾンビ人権団体代表のトゥフナット氏。氏は二十三体のゾンビが合体した、合成ゾンビとして知られている。

「これを機に、各国もゾンビの人権について再考すべきですね。……おっと失礼」

そう語るトゥフナット氏の八番目の顔が、弊社記者を丸呑みにした。

弊社記者はトゥフナット氏の二十四番目の合成体となり、めでたくトゥフナット氏付きの番記者へと配置転換された。平均2年から3年は精神も吸収されずに独立しているため、継続的な取材が可能な見込みだ。

一夜にして世界有数の人権先進国となったバラグビア。今後の動向に着目したい。

オルフェウス氏のワールドツアーが開催決定 ~癒しの音色をあなたに~

寝苦しい夏の夜にこそ、素敵な音色に癒されてみてはいかがだろうか。

世界的に有名な竪琴の奏者である、オルフェウス氏のワールドツアーのスケジュールが発表された。

オルフェウス氏といえば、竪琴奏者の第一人者としてその名を馳せ、精霊となった現在も精力的に活動を続けている名奏者である。彼の奏でる音楽は、『聴けば30秒で眠れる』と言わしめるほど高いヒーリング効果でも知られている。

また、近年オルフェウス氏とエウリュディケー夫人の純愛が映画化されたこともあり、若い世代の間では愛妻家としても名が知られている。

今回のツアーはエウリュディケー夫人が全面的に演出を担当しているとのこともあり、夫人を携えてのツアーになる。

ワールドツアーは来年7月に極東の島国『日本』でのスタートし、約1年かけて世界各地を巡る。ゴールはオルフェウス氏の出身地でもある『ギリシャ』となる。

夫妻は、ツアーの始点に『日本』を選んだ理由として、夏の時期に「こと座」が『日本』の天空に上がるためと発表。

「こと座」はオルフェウス氏の功績を讃え、氏のアイデンティティーでもある竪琴を象って作られた星座であり、「星の瞬きとともに音楽を楽しんで欲しい」という夫人の意向でスタート地点を決めたことが明かされた。

更にこの度のツアーに先駆け、来月およそ175年振りとなる新作アルバムが発表される。

オルフェウス氏はこれまでに約250枚のアルバムを発表しており、その売上枚数は累計でおよそ20億枚といわれている。

今回発表されたアルバム『Schlaf』は既に3000万枚の予約が確定しており、どこまで売上が伸びるか注目されている。

※オルフェウス氏の最新アルバム『Schlaf』ジャケットデザイン

ツアーチケットは来月1日に世界同時で先行販売される。

前回はわずか5分で完売しただけに、今回のチケット争奪についても激戦は間違いないだろう。