社会

マネ妖精が著作権侵害で逮捕される

精霊種、中でも妖精種は多様な文化がある。その中でもマネ(真似)妖精は、見たものを真似することで有名だ。

先日、そのマネ妖精の1人であるミタ・ママノ氏(116歳)が著作権侵害で逮捕された。アニメに影響を受けたというミタ氏はアニメキャラを『オマージュ』したキャラクターになりきって魔法界の大手動画配信サイト「MageTube」に出現。半年も活動を続けていたものの、人間界に精通する魔法使いによる指摘で炎上し逮捕された。 マネ妖精の習性である真似をし逮捕されたということに、魔法界でも賛否両論が起きている。SNSのMagitterに投稿された意見は5万件以上に登り、トレンドにもなった。

「人気もあったし:grinning::clap:オマージュなら許してもいい:thumbup::skin-tone-1:気がするのにナー:thinking::sweat_smile:(オーク・50代)」
「たとえ相手が人間でも、著作物は大事にすべきなんじゃないの!?逮捕されて当然٩(๑`^´๑)۶(魔法使い・20代)」

こういった、ミタ氏の行為に言及したものから、

「誰かの権利を侵害することを文化とするのはもう時代に合わないよ…。仮に文化ならば、明記すべきだったんじゃない??(幽霊・死後80年)」
「マネ妖精は完全に真似することが目的。こんかいのは設定も外見も別々作品から真似ていたということでまさに最悪。同じマネ妖精でも劣悪と言わざるを得ないよ(妖精・700代)」

といった、種族文化そのものに着目した意見もみられた。

マネ妖精は他の習性として、人間にも寄生し他者の真似をさせているということで、人間界でも物議を醸しているようだ。 自らの常識と世間とで悩む種族は多い中、今回の一件は各種族の文化及び習性についてより深く考えさせられる発端になったかもしれない。

「ゲーム感覚だった」。スライム炎上男、逮捕

 先週、火炎魔法師のエンジョイ・ゼイ氏(451)がモンスター愛護法違反の罪で逮捕された。

 沼地のスライムは身体の一部が油分で構成されており、スライム種の中でも特に火に弱い。ゼイ氏は自身が得意とする火炎魔法で、少なくとも100体以上のスライムを炎上させた疑いがかけられている。

 ゼイ氏がスライムを炎上させたことにより沼地が数百ヘクタールにわたって焼失し、彼は通報を受けた警察によって逮捕された。

 ゼイ氏は動機について、「ゲーム感覚だった」、「経験値がたまるような気がした」などと述べた。供述のあまりの幼稚さと残虐性から、勇者病(※)の疑いもあり、警察は慎重に取り調べを行なっている。

 沼地のスライムからは遠心分離によって上質な油が得られることが判明しており、政府内のスライマー(スライム遠心分離同好会)からも、「スライムがかわいそう」、「大目に見て死刑が妥当」と極刑を求める声が上がっている。

 

400代によく見られる精神疾患。

謎の自己肯定感と強い攻撃衝動、幼稚な発言が特徴。発症者は“勇者”を自称し、私有地への侵入や器物の損壊、モンスターの虐待を行うことが多い。

幽霊の現世離れが深刻化

前年度に引き続き、現世に留まる幽霊の数が3割減少したことが霊勢調査で判明した。

調査を行った霊務省によると、最盛期はおおよそ人口の8倍はいたと言われる幽霊が、近年は5倍にまで減っているとの事。 霊務省が調査の対象としている霊魂は、人類、魔族、エルフ族、オーク族、ドリアード族、ケンタウロス族、妖精族、ウンディーネ族、マーメイド族、それぞれの種と同起源をもつ亜種とされる種族の霊魂である。精霊、聖霊は含まれない。これらの種族は現世に留まる意思が強い個体が多く、その霊魂は有史以来生者と共に歩んできた。

現世離れの背景には、『同時期に死んだ人々が現世を離れたから』『恨んでいた人から、霊媒師を通じて正式な謝罪を頂いた』といった、同世代の他界と生者との強い繋がりがあるようだ。古くはただ神秘や恐怖の対象となっていた幽霊も、時代を経て多様な生き方(漂い方)を選び、『現世に残るだけが死後じゃない』といった考え方も広まっているようだ。

この現世離れは今後より加速していく見通しだという。

「築5秒の家」、競売へ

 魔法建築家、ラク=ン・グリーンフィールド氏が設計、建築指揮を行なった<メンド・クサ>が競売にかけられている。

 <メンド・クサ>は特定の条件を満たすことによって、“発生する”家であり、地元では「築5秒の家」と呼ばれている。

 この家が現れる予定の土地の中心には、大きなくぼみがある石柱が立っている。そこに人魚のレリーフを埋め込むことによって、<メンド・クサ>は発生する。このレリーフは7分割された状態で、設計当初から世界中に散らばっており、家に入るためにはこれを集めなくてはならない。

1  駅の近くにある道具屋の店主に暗号を話し、ダンジョンの場所を話してもらう。

2    ダンジョンの迷路を突破し、主のトゲトゲ・ドラゴン(一般的な成人男性より少し強い)を倒す。ここではレリーフの欠片は手に入らない。

3 トゲトゲ・ドラゴンの鱗を道具屋の店員に、『ガレー船の設計図』と交換してもらい、港の造船場で船を造ってもらう。

4  ランド島へ移動する(この島も魔法で発生しており、造ったガレー船で移動しないと見つからない)。

5 ランド島の住民と半年間共同生活を行い、打ち解けてからそれとなくレリーフの欠片の場所を尋ねる。それとなく尋ねないと殺される。打ち解けてない場合ももちろん殺される。

6 ランド島にある森の奥にあるダンジョンを踏破し、主のトゲナシ・トゲトゲ・ドラゴン(一般的な成人男性2人分くらいの強さ)を倒す。ここでレリーフの一欠片が手に入る。

7 ドラゴンはランド島の守り神なので、住民が激怒する。

 以上が明らかになっている工程である。これは3番目の所有者であるカネモチ氏に同行していた傭兵からの情報で、彼はランド島から命からがら脱出に成功した。以上からわかる通り、レリーフはまだ一欠片しか発見されていない。

 カネモチ氏はランド島周辺の海域で遺体で発見されており、<メンド・クサ>は遺族によって競売にかけられることになったという。

定年が280歳に 80歳引き上げ

エルフ族の議会にて、定年を280歳に引き上げることが決定した。

長命のエルフ族では、高齢者の残留により若者の雇用が減るとして定年を定めていた。しかし近年は少子化により働き手が激減していることが大きな社会問題となっていた。

エルフ族が定年を定めたのは1000年ほど前のこと。勤続年数が長いほど給料が上がるため、年長者がなかなか退職せず、若者の雇用が減ったことによる対策のためだった。当時は大混乱を産んだことを、議会誌が物語っている。『議会で最年長、302歳である議員は大声で”仕事が生き甲斐なのに、無理やり退職させるとは如何なものか”と叫んだ。議長がとりなすも弓を構えたため、取り押さえられたーーー議会誌、第709号』

今回80年もの引き上げに至ったのは、1000年前に比べてエルフの寿命が伸びたことも背景に挙げられる。優秀な人材に長く働いてもらい、より事業が盛り上がることも期待されているという。

「腕力で解決する」、省魔法主義の広がり

 近年、魔法に頼りすぎた生活が問題視されている。

 ほんの身近な距離を移動するだけでも空間魔法を使い、魔道書一冊を持ち上げるだけでも浮遊魔法を用いる。運動不足による生活習慣病の発症数も増え、医療費の増大は議会の悩みの種となっている 。

 その一方でなるべく魔法を使わない、省魔法主義が冒険者の間でひそかな広がりを見せている。

「魔法って便利なんですけど、一方的に使われるほうは可哀想だなって。

 ある日、そう思ったんです」

 冒険者のチカラ・スキ氏はそう語り、手のひらの上で火球を浮かべてみせた。

 スキ氏は高位の火炎魔法術師で、オークの砦くらいであれば数時間で消し炭にしてしまうほどの力を持っている。だが、彼女はあえてそうしない。

「可哀想ですよね。モンスター達は身体ひとつで立ち向かってくるのに、私たちが魔法で攻撃するのは。

 だから私はダンジョンで主と遭遇した時でも、腕力で解決するんです」

 スキ氏は鍛え上げた両拳で、多数のモンスターを葬ってきた。

 そんな彼女の姿に共感した魔法使い達も、あえて魔法を使わず、モンスターを素手で撲殺する道を選び始めている。

「高位の魔法を習得したときよりも、腕力を得た時のほうが幸福感が強い」

「魔法を使えない側は、魔法で攻撃された際に大きなストレスを感じる。腕力を用いた場合、モンスター側のストレスも少ないのでモンスターに優しい」

 そういった研究結果も報告されている。

 生活圏の魔法使いが肉体的な健康を損ねる一方で、ダンジョンに潜る冒険者の健康寿命が長くなる___そんな日が来るかもしれない。

竜殺しの地縛霊が竜人地域の地主へ 合理的と好評

少子高齢化の進む竜人族の地域で、人手不足のために長年空いていた地域の地主の席にドラゴンスレイヤー(竜殺し)の地縛霊が就いたことが先日の取材でわかった。

この地域では、竜人の自由奔放な性質から町長などの役職がなく、地域の管理は地主が一手に担っていた。しかし、竜人族の少子高齢化により人口が減り、地主のような役割ができるほどアクティブな竜人が減ってしまったことが問題になっていた。外部種族を雇う試みも見られたが、竜人への理解が足りないことで争いの仲介や権利問題に対処出来ず、わずか数ヶ月で解雇されてしまった。

今回抜擢されたのは、180年前からそこに棲みつくベテランドラゴンスレイヤーの地縛霊。かつて遠方からこの地に訪れ、黒竜の竜人と死闘を繰り広げた後没した、伝説的な霊だ。没後は竜人へ経緯を払い、子供の竜人に戦いを教えていたこともあり、近年の少子高齢化を憂う1霊でもあった。

取材に対し地縛霊は、『このような身に余る大役、お受けできることを光栄に思います』とのこと。周辺の住竜からは、『彼なら竜人をよく理解しているので安心だ。なによりそこに棲みついているので大変合理的。助かります』と好評の模様。

竜人に限らず、多くの種族が少子高齢化社会になってきている昨今、寿命が無い、または遥かに長い『霊』を人材として注目する動きが広がっている。この件はそういった試みの先駆けになるだろう。

機械生命体が魔法学校へ編入 魔法使い志す

首都にある第二魔法学校にて、9月中旬の始業式から機械生命体が編入することがわかった。編入は去年の1月から打診されており、学校側の整備もあって1年以上もかかってしまったという。

機械生命体は動力源が魔力であるため、魔力を編んで外に出す魔法使いの在り方とは全く異なっている。言わば血液が魔力と同じものであり、魔法を使うとなるとまさに『出血』するほどの疲労を得てしまう。その性質もあり、いままで魔法使いの中でも機械の構造をもつ者はいたが、完全な機械生命体が魔法使いを目指すのは非常に稀との事。

編入する機械生命体は4年前に首都近郊の機械生命体が通う学校に入学したが、製造初期に見た魔法使いのことが忘れられないということで魔法使いを志したという。その後、教諭と相談し、編入を決意。経緯は12月に自伝としてまとめられるという。

種族の多様化と交流の深化によって、従来自分の種族がメインとしていた仕事以外の職種に興味が湧く例が増えている。多くの学校で多種多様の種族を受け入れられるように改革が進んでいるため、これからは種族が未来を決めることは少なくなっていくだろう。

「神に人権なし」 魔法裁の判決

 昨日、魔法裁は殺人の罪で起訴されていた魔法芸術家のブチ・ギレ氏に無罪を言い渡した。

 ブチ・ギレ氏は、自身の店にやってきたクズ氏を殺した罪で逮捕されていた。

 クズ氏は様々な店を訪れては、「お客様は神様だ」などと言って恐喝行為を行なっており、事件のあった日もブチ・ギレ氏の店で同様の行為を行う姿がほかの客に目撃されている。

 ブチ・ギレ氏が要求に応じないことがわかると、クズ氏はブチ・ギレ氏が造形した<水晶宮>(水晶でできたミニチュアサイズの宮殿。魔法により中に居住することが可能。製作期間7年)を破壊した。

 これに腹を立てたブチ・ギレ氏は、水晶の破片でクズ氏を殺害した。その後ブチ・ギレ氏は自首し、逮捕・拘禁されていた。

 判決を下した裁判長は以下のように述べた。

「 人間に不条理な運命を突きつけるのは、典型的な神の特徴。さらにクズ氏は日頃様々な店で恐喝、つまり供物の要求を行ないこれを得ていたので、神であった可能性が非常に高い。

また、警察によるいかなる捜査においても彼が神でないという証拠を見つけることはできなかった。

したがって彼は神。神に人間の法律は適用できず、人権も存在しない。したがって、人権侵害の最たる行為である殺人の罪もブチ・ギレ氏に適用できない」

 ブチ・ギレ氏は今月中に釈放されるという。

 魔法災害局はクズ氏を邪神の1柱として祀ることを検討している。

エルフとダークエルフの間で一部関税が撤廃に

ここ1000年ほどで交流が活発化しているエルフとダークエルフ(ドロウとも)。先日、その2種族の間での貿易で、一部商品の関税を撤廃するという条約が結ばれた。

今回対象になる品目は、エルフ側の特産品である『薬草類、食用肉類』とダークエルフ側の特産品である『鉱石、ヒカリゴケ類』。お互いの名産を安くやり取りすることで、友好関係を保ちたい意向だ。なお、争点となっていた『毛皮類』『織物類』は次回の会議に持ち越す模様だ。

エルフは狩猟を主にしていたこともあり、強い矢じりや鉄鉱石武器の開発を繰り返していたが、地下資源に乏しかったために難航していた。辺境で起きたエルフとオークの小規模紛争にて、武器の物量でエルフが敗北した屈辱の歴史も残っている。一方ダークエルフの多くは地下に住んでいるため、薬草の入手が長らく難しかった。小さなダークエルフが病の母のために、地上のエルフたちに薬草を分けて貰いに行く『やくそうをかいに』は名作として語り継がれている。両者お互いに交流があれば、という後悔が残る品目での関税撤廃とのことで、比較的好意的な意見が多い。

一方で問題も残る。ダークエルフ鉱山でのオークのブラック労働(この場合”ダーク労働”とも呼ばれる)がさらに過熱する恐れがあり、実際に一部鉱山ではストライキが発生している。エルフ側も、単価が下がることで狩猟頻度が増え、ケンタウルスへの誤射が増えることが懸念され、有識者による対策会議が緊急で行われた。

エルフとダークエルフの歴史は長い。互いに近しいルーツを持ちながら地下と地上に別れ、いがみ合っていた歴史もあるが、それはとうに昔のことである。彼らの目は長い未来に見据えられている。これから先は交換留学制度や移住制度をより拡充させていき、より両者の交流を深めるという。