「魔法は存在しなかった?」1000年以上前の古書、その一部を公開

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昨日、魔術研究所アンティコ・マギアの書庫で発見された古書の中身が一部公開された。中身は古代文字・ハポネスと似た特徴を持つ象形文字で書かれているとされており、ところどころに謎の図説が挿入されている。内容の分析はまだ終わっていないとのこと。

しかし、現在解読されたうちの一文が研究者たちの注目を集めている。その一文の直訳は「魔の力や人の気は虚無である」というものだと、古書の一部公開と共に発表された。この直訳が示す事柄は、遠い過去には魔法が存在しなかったということなのではないかと、研究所から提唱されている。

事の始まりは2年前の1月。【アンティコ・マギア】が誇る世界最大級の書庫で、蔵書リストに記録されていない書物が見つかったと一時期話題になった。当時発表されたのは本の外見と、紙の劣化具合から1,000年以上前に出版されたものだと思われること。

まずは修復魔法による復元を試みないことには始まらないと、復元研究員一同は張り切っていた。そして、約2年半かけて、かつでないほど繊細な修復に成功したということで、今回のお披露目が可能となった。

復元が終わり、最も時間がかかるとされる内容の分析と解読の段階に入ったことで、研究所内ではまた新たに引き締まる空気が漂っていると言う。そして、大仕事を一つ終えた復元員たちは、【アンティコ・マギア】所長のアブラハム・コールズ氏から、存分に羽目を外してほしいと告げられ、一ヶ月の有給を得られたそうだ。

問題の一文は、まだ直訳なため、様々な解釈が魔法研究界で挙げられている。それでも、現時点で一番有力となっている説が、冒頭で告げた「魔法は存在しなかった説」だ。

我々が日常で当たり前のように扱っている魔法という力は、約1000年もの年月を経て発達した技術であることは常識として知られている。この期間を「魔導歴史」と呼ぶのも、先代たちが残してきた魔術の道導が積み重なったことに対する敬意を表すためだ。それほどまでに、魔法という存在は大きいものとなっている。だからこそ、1000年以上前の魔法事情が知られないことは、大きな謎として扱われてきた。

我々が幼少期に聞いて育った、数々のおとぎ話 ー 剣術だけで戦さに勝利する王国や、マントを着ない学生たちの友情など ー も、知られざる過去から由来するという説があがっていたことをご存知だろうか。これもまた、空白の歴史がもたらした謎の一つだった。しかし、あながち間違っていなかったのかもしれない。

もし、魔法が存在しなかったのであれば、大昔の我々の先祖は一体どのような生活を送っていたのだろう。通勤・通学の手段は浮遊魔法や転移魔法ではなく、医療現場では薬草や治癒魔法の効果に甘えることができなかった。公開された図説の一部には、人体と思わしきものも載っていた。もしかしたら、肉体構造まで違っていたのかもしれない。にわかに信じがたいが、可能性は十分ある。
 

最後に。コールズ所長は発表時に:

「新しい歴史と、現在とはまったく違う文明が明らかになるかもしれない。過去を紐解く長い旅の始まりに携わることができる。大変嬉しく、光栄に思います。そして、現代の根本となる魔法の誕生について詳しいことがわかるかもしれない。そのことに、ひとりの魔法研究者として興奮を覚えております。」

と、目を輝かせながら語っていた。

知識を追い求めることに夢中になりがちな、我々魔導師。そして、魔術とその理解を生業としている身ならば、ぜひ追ってほしい研究案件だ。

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コメント

  1. マリー より:

    魔法が存在しないなんて信じられない。
    毎日川から水を汲んで料理していたのかしら。
    面倒くさそう。
    火の魔法もないから太陽が沈んだら寝るしかないわね。

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