くっ病、ひろがる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

 本日14時、魔法衛生局が「くっ病」に対する注意喚起を行った。

 くっ病とは、極めて特異な状態異常を引き起こす病である。

 「くっ……! 俺の右目が疼く」「くっ……! 離れろ、俺の左腕が何をしでかすか分からない」等、くっ……!から始まる言葉をひとりでに話し出すことから、この名前がつけられた。

 くっ病は一度発症者が観測されると、周囲の人間に驚異的なスピードで感染し、発症者同士で謎のコミュニティが形成される。このコミュニティ内部では独自の言語体系が築かれており、外部の者による解読は極めて困難である。

 発見当初はただの妄想・年齢特有の悪ふざけのように扱われていたが、同様の言葉を発する人間が全世界で数多く発見されたため、魔法衛生局によって病態認定された。特に若年者の発症が多いが、魔法医による診察・解析では、呪術、妖精、悪霊いずれの痕跡も見つかっていない。

 長時間のカウンセリングを行うと、多くの場合赤面して肩を震わせ、しばらくは病態が治まるが、数日後に再発する場合が多い。致死性はなく、年齢とともに病態が消滅していくものの、家族関係に重大な亀裂を生じさせる場合もあり、魔法衛生局によって「クラスD(悪魔のせい)」に認定されている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*