使い魔界に新風吹く、トイケルベロス誕生

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この度、ディジョアン国立魔法生物研究所は、ケルベロスの小型化、ひいては新種となるトイケルベロスの繁殖に成功したとの報告を発表した。

従来のケルベロスはその番犬としての性質の高さから、古くは神々の門番として生活を共にしてきた。人間界でも門番として彼らを迎え入れたがる一部の人々がいたが、その気性の荒さと飼育の難しさから悲劇的な事故が後を絶たなかった。

しかしながら、研究を積むこと幾星霜。度重なる品種改良を経て、ようやく人間界でも馴染めるケルベロスが誕生し、近年は番犬として生活に溶け込むようになってきた。

その裏で、新たにケルベロスの飼育問題も起きている。

郊外等、居住スペースがある家であれば庭で放し飼いをするだけの十分な余裕が確保できるため、飼育に際して特段大きな問題は見受けられないが、都市部での飼育となると話はまた変わってくる。

人口密度の高い都市部ともなれば、飼育スペースの確保が難しいことやストレス発散のための散歩をすれば、「子供たちに襲いかかってきたら、責任はどう取るのか?」などの問い合わせが頻発することにより、近所の目を気にしながら世話をする飼い主、十分な散歩や遊びが出来ないケルベロスと共にストレスを抱えながら生活を送るという現状があった。

そうなってしまうと、都市部の飼い主は泣く泣く郊外のケルベロス保護施設へ愛犬を手放さなくてはならなかったりした。

こういった飼い主はまだ良い方であるが、中には無責任な飼い主もおり、「思っていた以上に大きく、世話が大変になった」との理由で成犬のケルベロスを捨てる者も後を絶たない。

このような無責任な飼い主に捨てられてしまったことにより、ケルベロスの野生化が近年問題視されている。(この問題は後日、使い魔の野生化問題で取り扱う予定である)

その一方、市場ではケルベロスを番犬として迎えたいと考えている人々は60%近くいるとの調査結果も同研究所より発表されており、飼育問題の効果的な解決作策も無いまま需要は高い。

そこで、ディジョアン国立魔法生物研究所では、都市部や単身者でも飼いやすいケルベロスを生み出すことはできないかと永らくケルベロスの小型化に携わってきた。

勿論、品種改良の研究に当たっては好意的な意見もあれば、「遺伝子を操作することは生命への冒涜だ」という批判的な意見も見受けられた。同研究所においては、この度の研究は「遺伝子操作(キメラ生成)」ではなく古来より取られている自然交種での改良であることを約束し、研究を進めてきた。

そして、この度めでたくその結果が実を結んだのだ。

今回、交配種として選ばれたのは古来種のトイプードル(オス5才)であり、父親になった彼は別室にてわが子の誕生を職員と一緒に見守っていた。

産まれた仔犬は、全部で3匹で、性別についてはオスの仔犬が2匹、メスの仔犬が1匹で母子ともに健康とのこと。仔犬の大きさはおよそ6~8センチ程であり、元来のケルベロスの仔犬の20分の1程の大きさである。成体についても最終的には30センチ程で成長が止まる見込みとのことだ。

メディアを含めた一般への公開に当たっては、仔犬たちが産まれて間もないことと、母体のケルベロスが出産直後とのこともあり、仔犬たちの公開時期については現在未定であるが、離乳時期を目処に公開を検討していると所長のシャリーゼ氏は発表した。

また今後、トイケルベロスの繁殖に当たっては特定のライセンスを持ち得るブリーダーにしか許可を出さない方針を同研究所は発表し、ライセンスの制定においては政府と相談しこれから調整をしていくとのことであった。

トイケルベロスが新たなパートナーとして人々の生活に馴染むのはまだもう少し先の話になりそうではあるが、まずは何より今回産まれた仔犬たちが無事に成長をすることをただただ願うばかりである。

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コメント

  1. Thomas Phalam より:

    僕の友達がケルベロスを飼いたくて親にねだったけど、大きくて散歩が大変だし危ないからダメって言われたらしい。。トイケルベロスなら許してもらえるかもしれない、良かったねジェシー!

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