フレイムタワー要らず「炎魔法を使う前に会社が炎上した」

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労働基準法違反を疑われていた魔導書製作会社エーダムに強制捜査が入り、違法な長時間労働、厳しい上下関係、会社への泊まりこみ強要、給料が現物支給で青ポーション200個などという過酷な実態が浮き彫りとなった。

本当に酷い労働環境でした。仲間内で会社に火でも点けてやろうと盛り上がり、冗談半分にフレイムタワーの魔導書を読み漁っていたところ、SNSで本当に炎上しまして。
――元エーダム社員

社内からは法律で禁止されている魔導具の一種であると思しき「大支配書」、さらには強力な闇魔法の痕跡までもが確認されたため、警察署はエーダム社長のローガー氏を検挙した。

これを受け、ローガー氏は本社にて訓示を発表している。この訓示では、まず長時間労働の背景にあった魔導具や闇魔法に触れ、それらを使わずに労働するための改革案が述べられた。そのために必要な投資額などが列挙され、最後には「社が直面した問題に打ち勝つため、団結して新しいエーダムを作り上げていこう」という前向きな一言で締めくくられている。

しかし、エーダム社員は我々に諦観を語った。

「この訓示は偽物です、どうせ社内は変わらず魔導具と闇魔法に頼ります。今回の強制捜査だって、心のどこかでは『なんで俺たちが』と思っている節がありますから。私たちはまさに奴隷です。この会社は未だに奴隷制を採用しているんですよ」

他にも社員二人にインタビューを行ったところ、我々はたくさんの恨み、憎しみというべきドロドロとした声に溺れてしまった。

── 現在の労働環境に対し、既に手を講じているとお聞きしましたが?

「実は、タイムカードを複製し、正しい内容に変更する専門魔法を研究していたり、していなかったり……」

── ずいぶんとお疲れのようですが、活力の霊薬などはお使いで?

「ええ、今月もとうに100本は転がしてます。思えば、そろそろ連勤記録も更新しますね。ついに半年ぶっ続け……私たちは物じゃないんですけど」

今回のような強制捜査が入れば、事情聴取から書類送検までは確実に行われ、企業が起訴されることも必至である。ついにか、痛手を受けてしまったエーダム。魔導書製作会社の王として君臨してきたエーダムのプライドも、今やベヒーモスの縄張りに放り投げられているのとそう変わりはない状況だ。

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