天才の妹が「消滅」 覚えているのは兄だけ

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ハウザル地方のプラム村に住む少年、ケネスさん(15)が実在しない妹の存在を叫び出し、心療内科にて幻想朋友病と診断された。

しかし、それから数日後の夜、少年の母ジェニファーさん(41)はあることに気付いたという。物置として使っていたはずの部屋が、女の子に用意するような子供部屋に様変わりしていたというのだ。まさかと思い、ジェニファーさんが息子に訊いたところ、「まさしくそこがシャロンの部屋だった」と涙ぐみながら答えられたというのだ。

ジェニファーさんが警察に相談すると、警察は禁術魔法による他殺の恐れがあると捉え、すぐに捜査が開始された。法律で禁止されている禁術魔法の一種、オブリビオンの使用により記憶が書き換えられている線で捜査を進めていたが、ケネスさんへの事情聴取によって事態は一変する。

ケネスさんの話によると、魔導師志望だった妹のシャロンさん(13)は卒業魔法という専門魔法を作り出すことに成功していたようだ。そして最後に会ったときには、「ようやくできたよ。卒業する魔法」とケネスさんに笑いかけていたという。

警察は問題の子供部屋から見つかった紙切れの山を、魔法を作るために試行錯誤したものだと断定。魔導書製作会社エーダムに協力を要請し、シャロンさんが作った卒業魔法を再現するプロジェクトが立ち上がった。

それから二週間、ようやく再現に成功したものの、魔導師たちは愁嘆の声を上げる。

「こんな魔法を13歳の女の子が作ったなんて、にわかには信じられません。しかし、天賦の才をこういった形で使うことになるなんて」

シャロンさんが作ったとされる卒業魔法、それは人生を卒業する魔法だったのだ。再現プロジェクトでも、おそらく一人から数名の魔導師が卒業魔法により消滅したと考えられている。

警察は今回の件をシャロンさんの自殺と扱い、消滅したエーダムの魔導師について調べている。

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コメント

  1. ayaka0027 より:

    なんていうかとても切なくなりますね。
    魔法が出来たと兄に報告をした際、
    笑顔だったと言うシャロンさん···
    すごく考えさせられます

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