EACon(エアコン)問題から見る魔術の行く末

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魔術の発展により、我々の生活から闇は遠ざかった。冬でも凍えることなく、飢饉は過去のものとなった。国民の死亡率は格段に減り、子供は二ケタを超えるまで生きられるようになった。これは偉大な進歩であり、神話に謳われる理想郷にこれほど近付いたのは我々が初めてだろう。

しかし問題はまだある。生活が豊かになりものが溢れれば必然的に新たな課題が持ち上がる。より深刻なモノと言えば、それは大気操作魔術、「Earth’s Atmosphere Control」、通称「EACon(エアコン)」だろう。この魔法の権能は大仰な名前に見合うほど大規模ではない。

しかし人間の生活に貢献したという意味ではこれ以上なく偉大な魔術である。今では貴族の邸宅に限らず一般家庭に至るまで普及し、政府による調査では97%がこの魔法を活用している。また魔法を生み出したミッジェリー社は世界最大の大企業となり、日々魔術師を派遣し快適な空間を提供している。

しかし問題はある。まず魔術は永続的に続くものではない。無論高度な術者が行う魔術には半永久的な効果があるが、民間で普及する魔術はそれほどの精度はない。毎年温度管理の失敗による重病者、死亡者が発生している。夏に凍死し冬に熱中症になるという異常事態にはゾッとするし、格安業者を名乗る魔術師によってビルが出火したのは記憶に新しい。

「EACon」は確かに素晴らしい。しかし維持し管理せねば酷い事態を招く。安易な快適さに手を伸ばし全てを失うならば、氷水とストーブで一年を過ごす方が賢いかもしれない。

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