昨今の流行語にもノミネートされた「テレポートデブ」。
自分を別の空間や位置に転移させるテレポーテーションは比較的高度な魔法であるが、皮肉にもそれを使いすぎてしまったがため運動不足となり、肥満に陥ってしまった個を指して自虐的に用いられる言葉だ。
一度詠唱法を覚えてしまった個にとってみれば、テレポートの頻度を下げる事はなかなか難しい。肥満は病気などにも繋がりやすいため、テレポート可能な魔法使いの悩みの種になっている。
そういった人たちにとって”強い補助魔法”になりそうなダイエット法が、今流行の兆しを見せている。それが「溶け肉」ダイエットだ。
溶け肉とは、動物の肉に極力近付けて魔法で作られた魔導的生成物で、形や柔らかさ、匂いなども普段食事している肉に近いという優れもの。
名前の通り、体内で一定時間が経過した後に溶け、ほぼ水や二酸化炭素、魔素などのような物体となり消えてしまうのが特徴で、エネルギー摂取も同じ重さの肉を食べた時に比べ数%程度(つまり、90%超のカット)と非常に低い。
魔法による生成物は、一般的に時の経過や強い衝撃などで消えてしまう場合が多く、食品としては非常に限られたシーンでのみ使われてきた。
しかし、イルヴァディナ地方・コド西部のヒーユ魔導総合研究所の研究チームによって、消えてしまうという特性を逆手に取ったダイエット法として考案・開発され、「対象者の5%の脂肪が(このダイエット方法によって)消滅した」と発表されたのち、イルヴァディナをはじめ、各所でブームとなった。
チームのル・オタ・フモール研究員は「ともかく、皆さんに健康的に、そして心理的にも万全に受け入れてもらえてよかった。『溶け肉』の他にも、『溶け野菜』『溶けエーテル』なども開発し、幅広い種の方のダイエットを応援したい」「研究チームにもいわゆるテレポートデブのオークがいるが、彼のダイエットも無事成功した。『溶け肉ダイエットという魔法が、ずっと解けないといいね』と言うと、『ほっとけ』と返してくれた」と話した。
また、専門家は当編集部に対し、「おいしく食事をしながらダイエットができるのはとても良い事」「(溶け肉は)当然消えてしまうので、栄養の管理は今まで以上に大切。運動を大切に、また種族や身体に合わせた栄養素・魔素を摂取し、栄養失調にくれぐれも気をつけてください」とコメントした。