【注意喚起】ショックバトンにご用心

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王立魔法生物学研究所(王魔生研)の朝倉です。

海、山、川、魔界、天界などの自然に触れるレジャーは楽しいものです。

特に南国の、河口からジャングル内の川を遡上するツアーなどは、普段図鑑などでしか見ることのできない魔法生物に触れる大チャンスです。

そんな旅行に際して、王魔生研より注意喚起をいたします。

ショックバトンの誤用にご注意ください。

ショックバトンは、電撃魔法と衝撃波魔法を、害獣対策用に特化させて組み込んだ杖です。最近、効率化や安全対策の向上が重ねられ、とても便利になってきていますが、毎年悼ましい事故が発生しています。特に、安全対策が甘い、旧タイプのショックバトンでの事故が多く報告されています。

それは、マッドカッター (Novacula tenebra) と呼ばれる、手のひらサイズのカニのようなエビと関連した事故です。

マッドカッターは、刃物の切れ味を高める魔術文様をハサミに持っていることが知られています。これは、便利調理器具を開発しているウィルナミス社の包丁にも応用されるほどで、レッサードラゴンのウロコ程度であれば切り裂く能力があり、一説ではドラゴンのウロコも切り裂いた個体もいたと言われています。

マッドカッターは汽水域に生息しており、川底の比較的浅い泥中に潜んで目だけを出しています。そしてマッドカッターの上を通る魚類やヘビなどをハサミで両断し、一部を泥の中に引き込むという採餌行動をします。このとき、残った一部や血の匂いに誘われた他の魚などを近くのマッドカッターが捕食するという採餌の連鎖が起こるため、「一匹のマッドカッターを見つけたら、その周囲には百匹のマッドカッターがいると思え。」と言われるほどです。

通常、河口から川を遡上するツアーなどでは、河口から十分に離れてから上陸するなどの安全対策が取られていますが、運悪くマッドカッターと遭遇してしまう場合もあります。このとき、ツアー参加者や個人的にカヌーなどを楽しんでいる人は、マッドカッター対策にショックバトンを携帯していることが普通です。

ショックバトン自体は、上陸後も、魔法生物から身を守る上でも必要になるため、ツアーなどでは携帯することが必須であり、ツアー前に毎回、使用方法の確認が行われていますが、それでも咄嗟の判断で誤った使用方法をして、大惨事に陥ってしまいます。

ショックバトンは、学校の試験でも、魔道具との違いについて魔力供給源が使用者本人であるかどうかを問われることで有名であり、それゆえ杖に分類されます。このため、ショックバトンの出力をダイヤルで調節しても、使用者が魔力を込めすぎると設定以上の出力になります。これは魔道具などの魔力供給源を内部に持つ構造にすることで起こりうる、緊急時に魔力供給が途切れ、使用不可能になる危険性を考慮したためであります。陸上では電撃魔法を使用することで、少ない魔力でも十分に害獣を撃退可能であり、水中や飛翔する魔法生物に襲われた際などでは、衝撃波魔法を使うことで撃退が可能です。

しかしマッドカッターの撃退に、電撃魔法を誤って使用してしまった魔法使いの、死亡事故が毎年発生しています。

しかも、水中での電撃魔法の使用は、使用者本人だけでなく周囲も巻き込んで、大惨事に発展しやすいのが特徴です。電撃魔法は地面が湿っていれば、使用者が込めた魔力量によっては、水中でなくとも感電させてしまう危険性があります。確かにカヌーやボートから降りた直後や、足元を確認しづらい泥中を歩く場合、予期せず足首を切り裂かれるとパニックに陥ってしまうのも頷けます。特に普段、大型の魔法生物と接していない魔法使いや魔女の方などは、大きなケガなどを負ったこともないでしょうから、突然の出来事に冷静でいられなくなるのも理解できます。

ですが、そういうことも発生し得る、とツアー参加前に今一度気を引き締めてください。

そして、去年発生してしまった、児童42名を含む56名の死傷事故を二度と起こさないよう、注意をお願いします。

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