どちらがオリジナルなのか――著作権問題は魔法界においては決して珍しいものではないが、今回のケースはあまりにもユニークである。
事の発端は6ヶ月前、まだ冬の寒さの続く頃に遡る。極東魔導協会のとある魔導師が「ファイヤーボール」なる炎弾を射出する魔法を開発し、これをオリジナル魔法として登録した。これに対し、「ファイアボール」を開発した魔法団体「深淵の灯火」が著作権侵害として訴訟を起こしたのだ。
ファイア側はファイヤー側に対し、
「英語で表記したらどちらもFIREになる。これは完全なパクリであり甚だ遺憾である」
とし、賠償及び名称の変更を要求。一方、ファイヤー側は弁護士を通し、
「深淵の灯火とか名乗るセンスの持ち主には分からないかもしれないが、自分のこの魔法を大袈裟であったりひねった名前で呼ぶ恥ずかしい趣味はない、焼くぞ」
と、徹底抗戦の意思を示した。まさしく火に油を注ぎあっているような今回の裁判、どちらかが燃え尽きるまで決着しないであろうことは想像に難くない。