不確かなドラゴン (Phantdracoidae科)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

王立魔法生物学研究所(王魔生研)の朝倉です。

突然ですが、クイズです。

ドラゴン学において、もっとも研究が難しいドラゴンとは、どのようなドラゴンでしょうか?

おそらく夏休みの自由研究なのでしょうか、王魔生研にもこのような質問がやってくる季節になりましたので、お答えします。

答えの前に、ドラゴンの研究を難しくする要因を考えます。

  1. 発見が困難な種であること
  2. 気性が荒い種であること
  3. 存在が不確かな種であること
  4. 生活環境が非常に厳しいこと
  5. 仲間を助けようとする他のドラゴンへの対処が必要なこと

などが挙げられます。これらの要因で、研究を一番困難にするものはどれでしょうか。

世界の果てに住むドラゴンなどは生活環境が厳しく、一種一個体しか発見されていないものもいますが、発見自体は難しくありません。

気性が荒い種の生活を観察することは、難しいですが、死後の個体などを入手できないわけでもありません。

同様にドラゴンの生活環境が厳しい場合、飼いならすことは難しいですが、自然の中でのドラゴンの観察は、十分な準備があれば可能です。

そして採取した卵に対する反応など、たいていのドラゴンは仲間を助ける意識が強いため、特定の種において、ドラゴンの対策が必要というわけではありません。

概念上のドラゴンを除いて一番難しいのは、存在が不確かなドラゴンです。

特にPhantdracoidae科のドラゴンがそれにあたります。それどころか、この科のドラゴンは存在そのものが疑問視され、議論が絶えません。他の魔術的な要因が、ドラゴンのような幻影を見せているのではないか、という議論はおいて、現在、目視による観察と、この科のドラゴンが残した痕跡を基に研究が進められています。この科のドラゴンに共通する大きな特徴は、触れることができず、映像や写真に残すことができないこと、さらに、遠くから観察すると大きく見え、近くで観察すると小さく見えることです。

今回は、その中でも研究の進んでいる2種について紹介します。

 

Phantraptor incertus

この種は、主に群れを成して生活しており、牧畜を襲ったり、大型の草食獣などを捕食したりしています。羽は生えておらず、地上を二足で走るしなやかな体をしています。

しかし、その体の半分は抽象化されたようにのっぺりとしており、歯なども顔の半分にしか存在していないように見えます。また、全身がねじ曲がって見え、後肢は左右で交差しています。尾も同様にねじれて垂れ下がっているため、体長を目視によって測定することは難しかったのですが、残された爪痕や歯型、多くのスケッチなどを基に、約1.2~1.5メートルだと考えられています。

このP. incertusは、100メートルほど離れたところから観察すると、体長が約5メートルほどに見えますが、1メートルまで近づくと、体長は約30センチほどに見えます。

また、P. incertusの鳴き声は、ヤギを絞め殺した声と言われるほど不気味であり、死を告げるドラゴンとしても有名です。

 

Irregula regula

この種の一番の謎は、出現するのが孤島に限られ、しかも単独であるということです。I. regulaは、5メートルほどに近づくまで視直径7.2°の大きさを保ちます。そのため、1キロほど離れたところから観察すると、体長が約250メートルほどに見えます。I. regulaが残した爪痕や、歯形などからは、体長約15~20メートルほどだと推測される一方で、1キロメートル離れた地点で観察した際のI. regulaが歩行すると、ひと足で木々をなぎ倒すのが観測され、実際に足跡を確認できることから、P. incertusとは異なり、体サイズが可変であることが知られています。

また、P. incertusと異なり、I. regulaの体はねじ曲がっていませんが、頭の上半分どうしが合わさったような一対の上あごをもち、左右対称の頭が地面に平行に存在するため、通常のドラゴンなどと比較すると、顔を90°ひねって鏡写しになったように見えます。

I. regulaも羽を持たず、後肢による二足歩行をしています。そして、捕食するのは比較的小さな草食獣で、噛みついて丸のみにします。I. regulaは出現した孤島の小型~中型動物を食べ尽くすと、いつの間にか消滅している、という性質を持つため、同一個体が孤島間を転移していると考えられていますが、実証が難しく、不明なままです。

このI. regulaは、絶滅の危険がある動植物を荒らす暴君として、孤島の動植物保護団体からは半ば災害のような扱いを受けており、その美しい鳴き声にも関わらず、大変不人気なドラゴンでもあります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*