昨夜未明、対人用の氷魔法「アイスノム」によって法人資本が凍結されるという事件が発生した。
凍結被害を受けた法人は冷凍食品製造会社JISUI Tech(株)。代表取締役のシス・イーガイ氏は「朝出社したら口座から資金を引き出せなくなっていた。訳が分からない。凍らせるのは冷食チャーハンだけで十分だ」と語っている。
(画像はJISUI Tech(株)の冷凍食品製造工場イメージ図)
今回使用された氷魔法「アイスノム」は、主に病気による発熱時などに使われる対人用の氷魔法であり、基本的には微弱な冷却効果しかない。しかし大量の魔力を込めた場合や、複数人で発動した場合などには、きわめて強力な効果を発揮することもあり、過去には死亡事故も起きている。
警察は、単独犯と組織的犯罪の両方の可能性を視野に入れつつ、慎重に捜査を進めている。
魔法の発動条件に詳しい専門家でデリシャス大学准教授テフニシャン・ナ゛氏は、「『法人』が制度上『人』として扱われるということが、犯人によって悪用されたのではないか」と指摘している。
さらにナ゛氏は、似たような事例が今後も生じうるとして警鐘を鳴らす。
「『アイスノム』の発動条件における『人』概念は、以前から定義があいまいだと指摘されていた。近年は経済発展にともない、株式会社などで『法人』という特殊な概念が用いられるようになってきた。そのため従来の素朴な『人』概念では、魔法を適切に運用できなくなっている。類似する事例は今後も発生すると考えられるため、『人』概念にかぎらず様々な概念について、早期の対応が求められる」
事件を受けて、政府は概念魔法学者らによる緊急対策チームを設置。生きた人間を「法人」から分離する概念として、「自然人」概念の錬成作業が行われている。