
昨晩11時ごろ、閉館後の国立美術館にて龍の絵が描かれた屏風の龍が具現化した。
龍が具現化しているのに気付いたのは、結界の異常を確認して駆けつけた警備員。龍が館内で暴れていると通報し、警視庁の対魔法武装隊が出動する騒ぎになった。
幸い怪我人は出なかったが、精霊の中でもかなり上位な幻想種に近い存在が具現化していたため、同館内の美術品が一部破壊される被害となった。
具現化の原因は、屏風に施されていた封印魔法が数百年の時を経て劣化していたのに加え、その屏風絵を鑑賞した客によるある種の信仰心が強くなったためとされている。
本来、魔法というものは祈りや願いに近いものであり、その数が数百、数千を超えてしまうと「まるでここから飛び出して動き出してしまいそうだ」というとてもあやふやな信仰でも上級魔法のような効力を発揮してしまうという。
古くから存在する世界的に有名な絵画がその域に至っているケースは少なくないと、専門家の春風彬氏は語る。ほとんどは作者や作品の管理者が具現化を防ぐために封印魔法をかけており、同様の事件が起こらないようになっている。また、同時に貴重な作品の具現化には細心の注意を払ってもらいたい、と述べていた。
今回のような事件は決して頻繁に起こるものではなく、普通に鑑賞している分には問題がないそうだ。ただし、その封印魔法をわざわざ解除したりするのは、絵に描かれた存在を従属化させる自信のある魔術師にしかおすすめはできないだろう。