増加するブレーメン現象! ~妄想に浸食される現実世界~

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先日、迷宮都市シ=ンジュクにある大規模マナラインにて現実世界が妄想世界に浸食されるブレーメン現象の発生が確認された。今年に入って3件目だった。

この現象、いや災害は現場に駆け付けた警察の魔場専門特殊部隊によって収拾された。だが、被害は軽微と言えるものでは無かった。この災害による行方不明者は8名にのぼり、死者は3名にもなった。死因は妄想世界より溢れ出たカボチャの馬車との衝突、熊猫とのハグや名状しがたい何かを目撃したことによる精神崩壊とされている。

 

本災害の発生回数は数年前から現在に至るまで増加傾向にある。では、それまでは本災害は確認されなかったのだろうか。そもそもブレーメン現象とは何なのか。何故、妄想が現実を浸食してくるのか。私はそれらを明らかにするための調査を開始した。魔場の特殊部隊から歴史の専門家、森深くに住まうエルフまで、あらゆる分野の者達に話を聞いて回ったのだ。

その結果、判明したのは驚愕の事実であった。

 

ブレーメン現象の発生において最も重要なポイントは、大規模な魔場の乱れとされている。その乱れの原因が人々であり、その人々の妄想が現実を浸食したというのだ。この真実について一つずつ詳らかにしていきたい。

そもそも魔場というのは、あらゆる物質に宿る魔力が大気中に放出され、それが混ざり合うことで形成されている。通常の状態において魔場は安定しており、周囲の者達に被害を及ぼす事は無い。それどころか、魔法の発動時は消費される事によって箒の補助軸のような役割を果たしているのだ。さらに、魔場に指向性を持たせる事で飛行専用ルートであるマナラインの維持にも必須なのだ。

では何故、魔場が乱れるのか。その答えはこれまでのブレーメン現象が発生した現場の条件を抽出してやれば一目瞭然である。

キーワードは「人口密度」「混雑」「マナライン」だ。

これまでの発生現場は全て都市部の人口密集地域であった。人もまた無意識に魔力を大気中へ放出しているため、都市部の魔場密度は比較的大きい値となってしまうのだ。

また、発生時間は通勤と退勤が集中する非常に混雑した時間帯に限定されていた。それが魔場にどのような影響を及ぼすのか。

問題は人々のストレスにあった。とある研究結果によると、人を含むほとんどの生物に対してストレスを与えると攻撃的な心理状態となり、それに比例して大気中に放出される魔力量も増加することが実証されている。つまり、混雑時の人々へのストレスによって強く発せられた魔力が魔場を不安定化させていたのだ。

最後に、もはや人々の生活に欠かせない飛行専用ルート「マナライン」。これは大気中の魔場をとある魔導装置を用いて収束させ、指向性を持たせることによって視認できるほどの濃い魔場の流れを創り出しているらしい。

ここまで読まれると既に答えは出ているようなものだが、「都市部の濃い魔場」と「人々のストレス魔力」と「マナラインによる魔場収束」、これらの要因が組み合わさることによって魔場の乱れは現実世界を歪め、人々の放出する魔力にのった思念波が干渉することにより、妄想世界の浸食が発生したという訳だ。

 

ブレーメン現象と同様の現象は、大昔の文明都市においても頻繁に発生していたという証言が森の老エルフより得られている。今後も都市部における同現象の発生は確実なものであり、注意が必要だろう。具体的な対策としては、出退勤時間をずらす、箒飛行による個人での移動が挙げられる。

筆者の妹も本現象の被害者で、妄想の白馬の王子様にパワースラムをくらい亡くなった。一日も早い解決策の確立を心より待ち望んでいる。

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