生物

国境で箒の大渋滞 原因は魔術牛

ニーニャ国とヌーニャ国の国境付近で箒の大渋滞が発生している。

ニーニャ国とヌーニャ国の国王が双子であり、またいたずら好きであることはよく知られている。二人は今日未明、魔術牛を箒路(ほうきろ)に出現させては消す遊びをしていたとみられている。

遊びの中で、ニーニャ国のガゼル国王が呪文に失敗し、「消せない魔術牛」を召喚してしまった。それをヌーニャ国のリゼル国王が面白がって、箒路を塞ぐ形で「消せない魔術牛」を増殖させた模様だ。

大量の魔術牛は、現在も箒路を塞いでいる。国境で起こった事件のため、どちらの国の魔法警察が処理をするかの問題が起こっているようだ。

処理することが決定した国は、大量の魔術牛の肉を得る。大規模な魔術牛試食会が行われ、国民の食欲を大いに満たすであろうことは間違いない。

魔術牛料理は、ピンクペッパーと岩塩で下味をつけ、かまどでじっくり遠火にかけたローストマジックビーフが両国の名物として知られている。付け合わせにフライドポテト(飛んでいたポテト)を添えるのが両国王の好みだそうだ。

なお、面白がった両国王が魔術牛にテレポートを覚えさせた影響で、捕獲はさらに困難を極めている。

ヒフキヤモリ、密猟で生息数激減

ヒフキヤモリと呼ばれる生き物がいるのをご存じだろうか。

全長はおよそ大人が手のひらを広げた程度の大きさながら、自身が襲われたときに口から火を噴くことができる魔法生物の一種だ。火を噴くことができる理由は体内に火素をため込む臓器があるためで、ヒフキヤモリは獲物を食すときに動物の持つ自然的な火素と油分を貯蔵していると考えられている。

現在このヒフキヤモリの生息数は減少するばかりであり、先日「魔法生物の絶滅を防ぐ会」の会長氏が魔法庁の魔法生物課に警告文を送ったことは記憶に新しい。

生息数が激減している原因はいくつか考えられているが、現状最大の問題とされているのは密猟による乱獲である。ヒフキヤモリの臓器には様々な用途があるうえに、その柔軟な皮革が火素独特のかすかに輝く赤みを帯びていて非常に美しく富裕層に人気の高い素材のひとつとなっていることが乱獲の大きな理由だ。

これらのことを魔法生物課は、見過ごせない大きな問題であり継続して取り組んでいきたいとしているが、今も密猟者の数は減っておらずヒフキヤモリの保護も難航しているのが現実である。

今回に限ったことではなく、魔法生物の保護の難しさはなかなか解決されない課題のひとつである。現場で活動している方々の努力が実を結ぶことに期待したい。

キマイラ販売において魔法生物省が注意喚起

昨日、魔法生物省より、本来の融合占有率を大幅に逸脱したキマイラが違法に販売されているとして、消費者に注意喚起がなされた。

キマイラにおける融合占有率は獅子50~60%、山羊20~30%、蛇10~30%とされ、この基準外の生物は別種の生物と認定され、正式な血統書を発行できないことになっている。違法業者によって融合占有率はバラバラで、悪質なものでは猫95%という報告も。

被害者は多くの場合、念話や使い魔、転送魔方陣のみで違法業者とやり取りをしており、相手の所属や階位を確認する手段を失していたとされている。

融合占有率を逸脱した生物は不確定要素が多く、危険なため、魔法生物省はそのような生物を買ってしまったり、発見してしまった場合は、逃がしたり放っておいたりせずに速やかに連絡するよう促した。加えて、取引の際は相手の所属や階位の確認を怠らないようにと、消費者へ注意喚起した。

(この記事に対する意見等は、転送魔方陣に「En’akrik Mag’lio」の一文を記述の上、転送くださいませ)

別々の大陸に同種?ワタリモモンガの謎解明

まったく同じ種類のモモンガが別々の大陸で新たに発見された謎について、カネリア魔法大学の研究班がひとつの答えを見つけ出した。それはこの「ワタリモモンガ」と名付けられた生き物が高いところから飛び降りる際に空気中の風素を集め、揚力を保ちながら滑空するということだ。

研究班は、自然的な風素が多い高所から滑空しだしたモモンガが海を渡りきり、別の大陸へ移動してしまう可能性は非常に高いものだとしている。

一時は動物の新種かと思われていたが、今回の研究結果を受け魔法庁の魔法生物課はワタリモモンガを正式に魔法生物の新種として認定する。またこのモモンガの風素を一定に保ち揚力を得る仕組みを研究することで、近い将来には滑空を目的とした魔法マントの開発ができるのではないかと期待されている。

※ワタリモモンガ……ここ数年で発見例が増えたモモンガの一種。同じ種でありながらまったく違う大陸で発見されていることから、動物にしては不可思議なことが多すぎると魔法生物の可能性を疑われていた。

魔法生物のいる生活 第1回

魔法生物とともに暮らす人々の生活を取材するこのコラム。記念すべき第1回は、錬金術に造詣が深いマリエラ女史に話を聞いた。

 

──マリエラ女史がともに暮らしている魔法生物は?

「メスのサラマンダーです。フレイヤという名前をつけました」

──サラマンダー!初回から珍しい魔法生物の話を聞けるなんて嬉しいです。

「ありがとうございます。でも、面白い話なんてないですよ?(笑)」

──まずは、ともに暮らし始めた切っ掛けをお聞きしても?

「フレイヤは師匠から預かったんです」

──お師匠様からですか。

「ええ。錬金術には火が欠かせないのですが、私、どうにも火炎系の魔法が得意じゃなくて・・・」

──なるほど、フレイヤちゃんは補佐役というわけですね。

「そうです。フレイヤがいないと、仕事が成り立たないんですよ」

──普段の生活はどんな様子ですか?

「サラマンダーは基本的には温厚ですので、のんびりまったり、という表現が一番しっくりきますね。フレイヤはお昼寝が大好きで、晴れた日はテラスに出て眠っています。可愛いですよ(笑)」

──ゆったりとした光景が目に浮かびます。他になにかエピソードなどはありますか?

「うーん・・・。あっ、去年の冬のことなのですが、フレイヤが私の膝でお昼寝したことがありまして」

──おお!なんと羨ましい!

「サラマンダーは火を司るので、体温が人間より十数度高いんです。膝に乗せていると身体がぽかぽかしてきて、すごく快適でした」

──なるほど。湯たんぽ要らずですね。

「そうですね(笑)ただ、気をつけていないと、寝ぼけて火を吹くことがあるので少々スリリングですが・・・」

──貴重なお話、ありがとうございました。これからも仲睦まじく過ごせることをお祈りしています。

「こちらこそ、ありがとうございました」

サラマンダーの鱗入手法、簡略化に成功 王都大

火の中に棲むトカゲ、サラマンダー。その鱗は硬度と魔力容量に富み、魔法器具の原料としては最上級の性能を誇る。しかしながらその生育環境と好戦的な性格から、手軽な方法で鱗を入手するのは非常に困難であるとされてきた。

このたび王都大学の魔法生物研究チームにより開発された手法では、これらの難点を解消した上に、従来の十分の一の時間で鱗を手に入れることができるという。

研究チーム副リーダーのヴェルディ氏に話を伺った。

「古来より、数多くの魔法使いたちがサラマンダーから鱗を引き剥がすことに腐心してきました。サラマンダーは非常に扱いの難しい魔法生物です。防火魔法のかけ忘れにより命を落とした魔法使いは星の数ほど存在します。また、大きな個体ほど凶暴性や魔力耐性も高くなり、それだけ鱗の入手も困難となるわけです」

サラマンダーの鱗にはいくつかの入手法がある。まず、もっとも古くから存在するのが『リッツ法』で、小さな焚き火の中に閉じ込めたサラマンダーを耐熱杖で引っ掻きまくり、鱗を剥がして拾い集めるという方法だ。

頑丈な鱗であるがゆえに、この方法で獲れるのは二日に一枚。おまけに小型のサラマンダーにしか適用できず、怒り狂ったサラマンダーが炎とゲロを吐き散らすことがあるなど、あまり効率的であるとは言えない。

現在もっとも有効な方法は、上記の『リッツ法』をグレムリンが改良した『リッツ – グレムリン法』である。サラマンダーに強い『痒み呪い』をかけて自ら床に体を擦り付けさせ、剥がれた鱗を入手するという手法だ。

リッツ法に比べて安全で確実だが、魔力耐性の強い個体には痒み呪いが効かない、魔法生物愛護団体の反発により大規模な生産が難しい、などの難点がある。

では、今回の新手法とはいったいどのようなものなのだろうか。

「従来の方法でサラマンダーの鱗を奪い取るのには限界があります。それならばサラマンダーを手懐け、自分から鱗を差し出してくれるように仕向けることができればいいのではないか。この手法はそんな発想の転換に基づいています」(ヴェルディ氏)

サラマンダーは凶暴だが、実は知能指数が非常に高い。長く生きた個体なら人語を解するという噂もある。そんなサラマンダーを都合よく手懐けることが、本当にできるのだろうか。

「手懐けるというには語弊がありますが、要はサラマンダーと心を通わせるのです。具体的には、愛の言葉を囁き続けます。サラマンダーが人語を理解できずとも、言葉に込められた愛情は伝わりますから。

『君、カワイイね』
『その鱗、すごく綺麗だ』
『つぶらな瞳だね。吸い込まれそうだな』

これを三日ほどぶっ通しで続けると、やがて愛の言葉を聞かされ続けたサラマンダーが一種の催眠状態に陥ります。そこで『君の鱗が欲しいんだ』と囁いてやれば、自ら鱗を剥がして差し出してくれるのです。これならサラマンダーを無闇に傷つけることなく効率的に鱗を回収することができます。個体の大きさや魔力耐性に関係なく適用できますし、危険も少なく、一日に四枚以上の獲れ高が見込めます。将来的には大規模な運用も可能でしょう」(同前)

確かにこの研究が発展すれば、貴重品だったサラマンダーの鱗が入手しやすくなりそうだ。実用化に向けて、今後はどういった実験をしていく予定なのだろうか。

「今は、音魔法で録音した愛の言葉を延々と聞かせ続ける実験に取り組んでいます。これが成功すれば、一度に大量のサラマンダーから鱗を回収できます。ただサラマンダーの健康状態に影響を与える可能性もあるので、そこは慎重な実験と観察が必要ですね。

あっ、そうだ。今回の実験で三日間不眠不休で愛の言葉を囁き続けた助手のエルマー君が精神を病んでしまったんです。突発的にサラマンダーの巣に飛び込んだあと一向に行方が知れません。たぶん餌になったんでしょう。というわけで、代わりの助手を募集しています」(同前)

私は礼を述べ、研究室を後にした。

サラマンダーの健康より先に、研究員の健康を心配すべきではないのか。私が抱いた不安は、偉大な研究に目を輝かせるヴェルディ氏の前ではきっと些細なことなのだろう。

研究の発展と、エルマー氏の冥福を祈る。

エヴィアン島で「三日薬草市」開催

空中群島のひとつであるエヴィアン島で「三日薬草市」が開かれ、多くの魔法使いたちでにぎわった。

三日薬草市は名前の通り毎月朔の日から三日間催されており、今月はシャークストロベリー、アマヨモギ、コウモリチューチューミントなど初夏の訪れを感じさせる品々が市場に並んだ。

中でも人気なのはコカトリス糞の肥料を使った無ゴーレム栽培の月光ハッカだ。ゴーレム使役栽培の月光ハッカは独特の苦みがあり、調合する際は中和する必要がある。しかし、エヴィアン島産の月光ハッカは苦味がほとんど無く、爽やかな甘味を感じるほどだ。月光ハッカティーを試飲したエルフの女性は「苦手なきつけ薬もうまく調合できそう」と笑顔で話した。

薬草市に出店する農家のひとり、ラワナ氏は「エヴィアン島の豊かな月光と風が薬草を美味しく育てている」と話す。「無ゴーレム栽培は手間がかかるが、自分の手で育てると微細な魔力変動に気づくことができる。これからも質の良い薬草を消費者の方々に届けていきたい」ラワナ氏は誇らしげに語った。

月光ハッカの収穫は来月まで。一味違う薬草を試してみたい魔法使いの方は来月の三日薬草市(※注)に是非エヴィアン島を訪れてほしい。

 

(※注)来月はマンドレイク収穫祭も並行して行われるため出店者、参加者共に耳栓(もしくは耳塞ぎ魔法)の準備が必要。注意されたし。

日刊魔法生物飼育のススメ〜ニホンヒフキクロトカゲ〜

日本での魔法生物の扱いは、世界と比べて非常に厳しく定められている。

これは日本の魔法生物が外国の魔法生物と比べて非常にデリケートであり、飼育が難しい種が多いからだ。今年になり魔法生物管理局が数年ぶりにドラゴンの個人飼育の規定を緩め、ほとんどの一般家庭でもドラゴンを買うことができるようになったが、それも比較的小柄なアフリカに生息するアフリカ・ブラックウィング種他数種だけであり、世界でもよく知られているジャパニーズ・ゴールデンスケイル種などは許可されていない。

それでも日本の魔法生物を買ってみたいという方々にはドラゴンほど大きくはないがサラマンダーの仲間である、ニホンヒフキクロトカゲ(英名ジャパニーズ・ブラックテイル種)をおススメしよう。

一般的なサラマンダーより一回り小さい体をしている全体的に焦げたように黒いこの種はサラマンダーの中でも比較的温厚であり、人間に懐きやすいことで日本の魔法生物愛好家たちからも親しまれている。

また、サラマンダーは通常定期的に火継ぎとして火を食べさせなければならず、この火継ぎがサラマンダーから目を離せない要因となっていたのだが、この二ホンヒフキクロトカゲはその火継ぎが必要ないのも人気の理由の一つだ。

火継ぎの時期になると黒い尻尾が勝手に切り離され、そこから発生する火を火継ぎとして利用する。普通のトカゲと同じく尻尾も再生するので安心だ。

値段は20万~と魔法生物としては安価であり、手が出しやすい類であろう。お近くの魔法生物販売店で簡単に手続きが可能であり、許可証の審査も緩い。魔法生物入門としては最適だ。

しかし、気を付けてほしいことが一つ。すべてのサラマンダーに共通することだが、彼らは炎をまといながら生活するため、可燃物などを決して周りにおかないこと。特にヒフキクロトカゲは機嫌がいいと炎を噴出するので、撫でるときは服を焦がされない様に十分に気を付けていただきたい。

 

日刊森のアナグマ ライター 御手洗団子