言語統一で詠唱簡易化 無詠唱へ向けた研究進む

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「詠唱が長い!」
「300語もの言語を一切噛まずに発声しろだなどとやっていられるか!」
「こんな複雑な魔法陣覚えられるか!」

魔法、あるいは魔術を学ぶ学生は嘆いている。もっと簡単な動作で、最高のパフォーマンスを発揮する魔術が欲しいと。

その叫びは痛いほど分かる。詠唱一つとっても様々な魔術言語が存在し、網羅しようとすれば分厚い辞書を片手に歩くハメになる。もちろん公式試合で辞書の持ち込みは不可能だし、戦場に立てばなおさらだ。

戦場のど真ん中で辞書を開きながら詠唱してごらんなさい。その間に弓で射られて死ぬから。

冗談はさておいて、この問題は古くから論じられていることだ。そして未だに最適解が見えてこない課題である。

一般的に魔術や魔法は、より強力な効果を求めれば求めるほど詠唱式、魔法陣、触媒などが複雑化、かつ肥大化していく傾向にある。逆を言えば、シンプルなものばかりでは、汎用的な効果しか発現しない。

確認されている限り、世界で最も複雑とされる魔術は以下の内容で構成されている。

〇炎を起こす魔術
1:詠唱において、「単語単位で9000語」使用。
2:魔法陣の大きさは、10,000平方メートル
3:使用した触媒の数は237個。総重量は533kg。

さて、こんなものが実用的かと問われれば答えは一つだ。「ノー」。

どんなに卓越した天才であっても、必ずどこかに綻びが生じ、術式がすべて破綻する。詠唱している途中にくしゃみをすればすべて吹き飛ぶし、魔法陣の微妙なズレが重なった結果、まったく違うものになることだってありえる。触媒の用意だって一苦労だし、コストパフォーマンスは最悪極まりない。

しかし、無理に短縮しようとしてどこかの工程を省いてしまうと、効果が発生しなくなってしまう上、予期せぬ事態が発生することもありうるのだ。

しかし、我々は夢を諦めない。

「火!」

と言って火を起こしたい。

「食い物!」

と言って豪華な料理を生み出したい!

現在、ナハーヘム市のディニーカリア大学詠唱学科では、「意味のある架空言語を創り出して、既存の言語の統合を行うことにより、詠唱の長さを縮める」という研究が行われている。現在は1/2が限界であるが、今後研究が進めば1/10にまで縮めることも不可能ではないようだ。

いつかは、指を振るだけで超常現象を発生させるグリモアも開発されるだろう。そうすれば、子供であっても簡単に魔術を扱うことができる時代がやってくる。

この研究が成功し、実用化されたならば魔法文明は飛躍的な進歩を遂げる。

長い詠唱、複雑な魔術式。それらが偉いなどというものは古典的な考えになってしまう日も遠くはない。

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