「きれいな海で涼んでほしくて…」種族の違いで悲劇

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

近年、急激に人気の上がっている観光地、アンブレラアイランド。主に魚人族の住むこの島は、海をはじめとした豊かな自然が美しく、昨年度の「異世界にまで伝えたい名所100選」にも選ばれた。

しかし、この平和な島で人間と魚人の種族差による悲劇が相次いでいる。アンブレラアイランド報道局によると、今年の夏に入ってから既に5件、魚人の子供が人間を海に引きずり込む、突き落とすなどの事件が発生している。幸いにも死亡者やけが人は出ていないが、大事故につながる可能性は無視できない。

この件について種族教育学の専門家は、「魚人族の子供は人間についての詳しい教育を受けておらず、人間が長く水の中にいられないこと、泳げない人間もいることなどを知らない。彼らは歓迎のつもりで海に引き入れているが、人間は自分の体だけでなく持ち物も水に弱いことが多く、たまったものではない」と解説する。

実際に人間を海に突き落とした子供は、「ヒューマンが水の中で息ができない生き物なのは知っていたけど、その辺のヒメアワイルカだって息継ぎをしながら海で暮らしているから、大丈夫だと思ったんだ」と語ったという。

ヒメアワイルカはアンブレラアイランド近海に生息する小型のイルカで、平均の潜水時間は5分ほど。人間が準備なしで息を止めていられる時間は大人でも平均1分程度である。

「この島は暑いけど、海に飛び込んだら涼しいし、気持ちいいよ。観光に来た人にもそれを楽しんでほしくて…」補導された子供達は皆、そう言って泣き出してしまった。

反対に、海に落とされた側として取材に応じてくれた男性は、「準備運動もなしに手荒い歓迎を受けたよ。溺れかけたところで助けてもらったし、確かに気持ちよかったから、たまには服のまま海に飛び込むのも悪くないね。おかげで僕の旅の写真は全部おじゃんだったけど…」と肩をすくめた。

アンブレラアイランドでは現在、教師や親に対して「人間と水遊びをしたい時は、いきなり引きずり込むのではなく声をかけて同意を得ること」を子供たちに徹底して教えるよう呼び掛けている。

アンブレラアイランドだけでなく、今や世界中のどの国でも起こりうる文化、種族の差による悲劇。自分が何気なくとった行動が他種族を傷つけてしまうことのないように、生物学や種族学をはじめとした教育カリキュラムの見直しが検討されている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*