(画:ナハーヘム市で確認された虚空間の一例)
「作成した空間は放置せず、適切な管理をお願いしたいです」
ナハーヘム市の『街づくり推進課』に勤めるハルシュ・ヴィケーム氏は、増加しつつある「虚空間」に関して苦言を呈した。
持ち主がいるがだれも住んでいないのが「空き家」ならば、「虚空間」とは「空間魔法の行使により、基底世界に孔を開ける形で作成されたものの何らかの理由により使用されなくなった空間」となる。
基底世界とは、通常我々が存在する空間であるとされているが、現在、ナハーヘム市が属するヴェルニダット地方上の基底世界だけでも500個以上の「虚空間」が存在するとされている。
では、これらを放置することによって何が引き起こされるのだろうか。ヴィケーム氏は我々の取材に対し、こう答えた。
「虚空間は空き家のように、土地の圧迫や景観の変化などの大きな変化が起きないため、安全ではないかと考える魔法使いもいます。しかし、管理されていない空間が増え続ければいずれスペースが足りなくなるということも十分起こり得ます。また、空間が作られ続け、基底空間の強度が不安定になることで予期せぬ大事故が起きる可能性も高くなります。空間魔法は、言い換えてしまえば岩に孔を開けて洞穴にするようなものですからね」
既にナハーヘム市では、空間が破損したことによる虚空間への落下事故が発生している。ヘレニム魔術学校では空間魔法の演習中に、生徒が誤って虚空間へと落下し足の骨を折るなど全治一カ月の大怪我を負った。
魔法が普及した今でも、空間魔法と時間魔法は未知の部分が多い。多用されることによる空間や時間の変化の詳細な調査も進み切っていないのが現状だ。
今後の対策に関して、ヴィケーム氏はこう述べている。
「今後は空間魔法に関しては免許制を取り入れることを考えています。取締りに関しても強化していきたいですし、専門家を呼ぶなどして虚空間の探知を行い、空間作成者に呼びかけるなどしていきたいですね」
魔法によって、我々は光を手に入れた。しかし、こういった問題も同時に発生するようになってきており、法整備などが求められる場面も今後増えてくるだろう。