ニュース

異世界転生を偽造か ダンジョン経営者が誘拐容疑で逮捕

毎年人間界各地で多く発生している『神隠し事件』について、魔法界から異例の逮捕者がでた。 逮捕されたのは地方のダンジョンを経営するヴィリ容疑者(224歳・ハーフエルフ)とその娘のアリ容疑者(107歳・同上)。それぞれ誘拐罪、結婚詐欺罪で捕まった。2人とも容疑を認めている。調べによるとヴィリ容疑者は『ダンジョンの挑戦者が減ったため、人間をさらって挑戦させていた』とのこと。

調査によると、ヴィリ容疑者は数年に一度、休暇の合間に人間界へ行き、適度に人間界に不満がありそうな人間を若者中心に攫っていた。その後、錯覚魔法をかけた被害者を娘のアリ容疑者に会わせて『あなたは異世界転生をして勇者になった。娘のアリと共に魔王を倒して欲しいが、レベルが足りないのでまずはこのダンジョンに挑んで欲しい』と言っていたという。また、アリ容疑者の方はダンジョンで稼いだ人間と結婚を約束し、大量の金品を自分に買わせた後に失踪することを繰り返していた。

ヴィリ容疑者の経営するヴィルヘルム中難易度ダンジョンは、近年質のいい人間が挑戦しているということで主にオーク族・竜人族の間で大きな話題になり、敵役の参加者も増えていた。 逮捕時にダンジョンに挑戦していた人間は捜査班に対し『信じられない、自分は選ばれて転生したと聞いていた、お前たちは魔王の手下で自分を騙そうとしているに違いない』と述べ襲いかかってきたため、拘束された。特級記憶消去魔法をかけられた後に人間界に返されるという。

ヴィリ容疑者が『近隣の村と協力して他のダンジョンにも挑戦させていた』と供述しているため、余罪や関係者の調査を進めている。

カエルの卵使用の魔法薬、タピオカ混入か

先日、首都内にある魔法薬ドリンクバーの一部飲料にタピオカが混入していたことがわかった。混入していたドリンクは全てカエルの卵が使用されており、飲んだ際に違和感を感じた魔法使いの指摘によって発覚した。

現場に居合わせた客は『カエルの卵の味ではなかったが、食感がたまらなく美味しかった。今度は単体でも頂きたい』と言う。取材に対し、店主は『タピオカ飲料の導入を考えており、厨房で混ざってしまった。再発防止に務めると共に、美味しいタピオカ飲料の研究にも務めたい』との事。

昨年、タピオカ販売車が魔法界に迷い込む事故が起きてから、タピオカブームは衰えを知らない。当初はカエルの卵のみならず超小型ドラゴンの卵などの黒系の球系素材全般と間違える事故が多発した。魔法学校初等科の実験で誤って生徒が使ってしまった例も報告されている。多くの魔法薬材料より安価なため、詐欺に使われる事件も発生しているため気をつけて欲しい。また、同様の事件はパクチーでも起こっている。

魔法薬を嗜む皆様は作ったり飲んだりする際、御手元の材料が本当に使用したい材料かよく確認して頂きたい。判別魔法もあるので、自信が無い場合はそちらを使うことを推奨する。

密猟被害のカーバンクル、合成宝石で回復へ

先日、大都市近郊の廃城から数匹の宝石を失ったカーバンクル(宝石獣)が保護された。これを受けて、魔法動物保護団体(MAPO)と魔宝石協会が共同研究し、宝石を失ったカーバンクルの額に新たな合成宝石を施すことで回復させることに成功した。回復したカーバンクルたちは、念の為王立動物園で保護され経過を観察されるという。

合成宝石は宝石と同成分の石を魔術的に合成し、カットしたもの。一般的な市場に出回る合成宝石ではカーバンクルに定着しなかったため、今回は魔法動物学者の手を借りてよりカーバンクルの紅玉に近い成分を実現した。MAPOによると、カーバンクル用の合成宝石は相当量の魔力と労力を要するため、現時点での量産は不可能とのこと。

本来カーバンクルは額の宝石を通じて魔力を得て生きる、おとなしい生物である。宝石そのものの効能は明らかにされていないが、魔力がろ過されるということで、古くから天然の魔力清浄機として神聖視されていた。そのため古来は一部の貴族や王族が権力の象徴として飼っていた記録が残っている。産業革命後は養殖も試されてきたが、効果は見られず、依然として数は少ない。それにもかかわらず、宝石やペットとしての需要は高く、絶滅も危惧されている。

近年の天然鉱石の大幅な減少により、カーバンクルの密猟およびその額の紅玉の盗難が年々増加している。カーバンクルの紅玉の密猟を行った場合は、その量により定められた期間中は商品売買を禁止され、最悪の場合懲役刑が課される。くれぐれも手を出さないようにしていただきたい。

くっ病、ひろがる

 本日14時、魔法衛生局が「くっ病」に対する注意喚起を行った。

 くっ病とは、極めて特異な状態異常を引き起こす病である。

 「くっ……! 俺の右目が疼く」「くっ……! 離れろ、俺の左腕が何をしでかすか分からない」等、くっ……!から始まる言葉をひとりでに話し出すことから、この名前がつけられた。

 くっ病は一度発症者が観測されると、周囲の人間に驚異的なスピードで感染し、発症者同士で謎のコミュニティが形成される。このコミュニティ内部では独自の言語体系が築かれており、外部の者による解読は極めて困難である。

 発見当初はただの妄想・年齢特有の悪ふざけのように扱われていたが、同様の言葉を発する人間が全世界で数多く発見されたため、魔法衛生局によって病態認定された。特に若年者の発症が多いが、魔法医による診察・解析では、呪術、妖精、悪霊いずれの痕跡も見つかっていない。

 長時間のカウンセリングを行うと、多くの場合赤面して肩を震わせ、しばらくは病態が治まるが、数日後に再発する場合が多い。致死性はなく、年齢とともに病態が消滅していくものの、家族関係に重大な亀裂を生じさせる場合もあり、魔法衛生局によって「クラスD(悪魔のせい)」に認定されている。

アーティセンナ美術館で絵画魔法展開催 9月20日から

アーティセンナ美術館の特別展として絵画魔法展が開催されることが発表された。

絵画魔法の展示は、基本的にレイラインの影響が少ない郊外で行われる。首都アーティセンナでの絵画魔法の展示は500年ぶり2度目。

開催にあたり、展示される絵画は額縁による魔法強度の調整と『花の帽子飾りをつけた若き魔女』によるカウンセリングを受け、当日の状態によっては展示内容を変更する。

展示内容が確約できない点について、『花の帽子飾りをつけた若き魔女』はこのように語った。

前回の絵画魔法展では、観賞されることに慣れない絵画魔法がパニックを起こし、魔法暴走を起こして死傷者を出してしまった。魔法使いがそうであるように、絵画の性格も様々。展示される、観賞されることを第一の喜びとする絵画を集め、万全の状態で臨むつもりですが、場合によっては展示の中止、中断に踏み切る必要もあります。

今回の展示では、『花の帽子飾りをつけた若き魔女』自身も展示される予定。人と絵画の対話をコンセプトとした絵画魔法らしく、観覧者との対話も展示のひとつとなる。

他、先日絵画魔法化した『猫の集会』や、レン・パーティカンの連作『舞踏』が展示される予定。いずれも絵画猫との触れ合いや、幻想魔法を利用した空間を見せる展示となり、絵画魔法ならではの内容となる。

中でも注目されるのは『舞踏』シリーズ。『赤の舞踏』が起こした魔法暴走、『花の舞踏』の真作報道と話題の多かった彼女たちだが、絵画魔法展では本来注目されるべき名画としての美しさを見せてくれるだろう。

絵画魔法展の開催は9月20日から1ヶ月間。状況によって、入場規制や展示期間の短縮が行われる場合がある。

孤児院の院長の魂が精霊化 子どもたちの守護精霊へ

新たな守護精霊の誕生に、小さな町が沸いた。

ハウザル地方北部の田舎町・シアンで、新たな守護精霊が発見された。孤児院とその子どもたち、そして地域に生まれた子どもを守護しているとみられ、近く正式に守護精霊として名前を与えられ、登録される。

王立アトス大学精霊学部のマンシェ・ル・ドードル教授は、新しい守護精霊についてこのように語った。

孤児院で暮らす職員や子どもたちの証言によると、守護精霊は先月亡くなった孤児院の院長の魂が精霊化したものと思われます。彼の魂が墓に備えられた花を吸収し、参拝者の哀悼の感情を受け取って精霊の形をとったと考えられる現象が度々発生していました。

ドードル教授の教え子の中にはシアンの孤児院で育った学生がいた。彼女がドードル教授に相談したことで、院長の魂が守護精霊化していることが早期に明らかになったという。

守護精霊は正式に登録されることで人々に認知され、精霊としての力をつけていく。孤児院の子どもたちや出身者によって、守護精霊はすでに孤児院から町全体へ力を広げている。

シアンで生まれた守護精霊がハウザル地方全体の子どもを守る日も、そう遠くはないのかもしれない。

贋作疑惑の絵画魔法『花の舞踏』 真作と判明

レン・パーティカンの舞踏シリーズに似せた贋作とされていた『花の舞踏』が真作であると判明した。メンナ絵画魔法研究所が発表。

これまで、舞踏シリーズは四大元素の精霊と乙女を描いたものと考えられており、赤・青・白・黒の四作で完結したものとされていた。『花の舞踏』はパーティカンの弟子が舞踏シリーズの人気に乗じて描かれたものと思われていたが、使用された画材の年代特定や筆使いの解析が進み、パーティカン本人の作として認められることとなった。

これについてメンナ絵画魔法研究所の所長は、「この疑惑を解決した解析魔法の研究者、そしてその講師者に深く感謝したい。なにより、これまで贋作として扱ってしまった『花の舞踏』へ謝罪し、その名誉を回復するため、メンナ絵画魔法研究所の総力をあげて彼女をサポートしたい」コメントした。

一方『花の舞踏』は、絵画魔法研究家で自身も絵画の『花の帽子飾りをつけた若き魔女』を通じて「私の父親がレン・パーティカンと証明されてうれしい」と表明。「『赤の舞踏』が元気になったら、みなさまの前で姉妹そろって踊りたい」と今後について語った。

クラヒル飛行船停留所で暴発した『赤の舞踏』は、メンナ絵画魔法研究所での修復作業を完了させている。現在は『花の帽子飾りをつけた若き魔女』によるカウンセリングを受けており、心身ともに絵画として万全の状態になってから、再び展示に戻るとみられている。

新種発見で鳥のささやき病に進展 病気ではなかった可能性

原因不明の奇病として扱われてきた“鳥のささやき病”について進展があった。幻聴と思われていた「鳥のささやき」は、実在する鳥の鳴き声だったことが判明した。近く、世界医療魔法連盟が声明を発表する。

鳥のささやき病は、周りに鳥がいないのにさえずりのような音が聞こえる病気。ンジルンダ島で春の期間に限り発症が確認されている。一時的な集団精神汚染や幻術魔法の暴走により発症すると推測されていたが、発症する環境に統一性はない。

先日魔法動物省の研究チームが発表した内容によると、ンジルンダ島には「姿の見えない鳥」が生息していた。ンジルンダ島の固有種とみられ、研究チームはこの鳥を「ンジルンダカラカゴトリ」と名付け新種として登録した。

ンジルンダカラカゴトリは、幻術魔法を帯びた羽根で周囲の景色と同化しており、外敵から身を守っている。互いの姿が見えないため、繁殖期に入ると鳴き声で異性にアピールするのではないだろうか。

(魔法動物省 研究チームの発表より)

発表を受け、ンジルンダ市長は「住民の長年の悩みだった病に答えが出たことは素直にうれしい。しかし、高齢の住民を中心に、心理的に受け入れられない発表だった。魔法動物省の担当者と連携を取り、住民のみなさまに丁寧に説明していく必要がある」と発表した。

病気ではなかった鳥のささやき病。住民がその事実を受け入れるまで、まだ時間がかかるのかもしれない。

王立魔法生物学研究所よりお詫び

このたび、当魔法生物研究所の熱帯多雨林模倣飼育室より、指定魔法生物であるサソリの一種・ルナティックスパイク(medicamentum lymphatus)が、オスとメスの番で盗難されたことがわかりました。謹んでお詫び申し上げます。

ルナティックスパイクが有する毒は「万毒の祖」とも呼ばれ、特に体内の神経と魔力に作用し、強力な幻覚作用を引き起こします。あらゆる毒に悪用が可能な本種ですが、魔術的に空間を拡張して自然を再現した環境で飼育されており、個体数の確認が不十分だったため発覚が遅れました。また、当研究所の管理システムの記録を解析しても、外部犯より内部犯の可能性が高かったため、盗難された事実の確認がとれるまで時間を要しましたこと、重ねてお詫び申し上げます。

ルナティックスパイクの飼育個体数が減少していたことは、半期に一度行っている、飼育下の全魔法生物の個体数調査を行った際に発覚いたしました。餌の減少量の記録から盗難時期を推定し、警備を行っていた職員の記憶を精査したところ、一部の職員において記憶の混濁が確認されました。外部犯の可能性が高まり、捜査当局へ詳しい調査を依頼したところ、盗難であることが確定いたしました。

ルナティックスパイクは、体長45センチメートルほどに成長する大型のサソリであり、頭がムラサキ色で尻尾にかけて深緑色のグラデーションがかかっていることが特徴です。このようなサソリを所持する人物を見かけたら、まずは十分な距離を取った上で、王立魔法生物学研究所などにご連絡ください。

皆様におかれましては、大変なご不安をおかけいたしますこと、誠に申し訳ございませんでした。

新型トイレ導入で学内紛糾 – アトス大

王立アトス大学では、新型トイレ導入をめぐる対立が激しさを増している。近代魔術学部学長のズゾパヌル・ウャ教授(83)は、評議員会と理事会で新型トイレ設置の承認をもぎ取った。しかし反発した一部の教職員側がズゾパヌル教授に呪いをかけるなど、抗議を続けている。背景には、神秘学部の主導する神学的な対立があるようだ。

左:旧型/右:新型

「近年、尻尾のある種族や多脚型の学生が増加している」「多様な学生に配慮した、使いやすいデザインであるべきだ」

先月67日に開かれたアトス大の評議員会では、新型トイレの導入をめぐり朝まで激論が交わされたという。関係者によると、評議員37865人の投票で、選任案賛成は委任状を含め過半数を超える19865票。続く理事会も「評議員会の判断を尊重する」などの意見が多数を占め、新型トイレは順次導入されることに決まった。

そこに待ったをかけたのが、フル・フルチ名誉教授(509)率いる神秘学部の講師陣だった。フル名誉教授は19年前まで教皇庁直轄の異端審問所に籍を置き、現在も聖キャベツ派の最右翼として知られている。
「元・異端審問官として、伝統を破壊するような蛮行は見逃せぬ」
そう叫ぶフル教授は、素手で新型導入派の職員を薙ぎ倒したという。教授は異端審問官時代は暗殺部門一の使い手として鳴らした武闘派。新型トイレ導入派の職員は、首をはねられる等の重軽傷を負った。

フル教授ら神秘学部の講師陣は、今も南キャンパス8階のトイレを占拠している。伝統的な異端審問官の黒衣すら脱ぎ捨て、不退転の意志を見せた。

▲(参考資料)異端審問官の黒衣

「まったく、半裸のおっさん達に居座られて、こっちはたまったもんじゃないですよ」
8階トイレ氏自身が困惑の表情でそう語った。
「なんでもいいから、トイレで流血沙汰はやめてほしいですね。流すのは紙だけにしてほしいです」

新型トイレに改装予定だった8階トイレ氏本人は、図らずも新旧の対立に巻き込まれた形。新型トイレを巡る紛争は、今しばらく続きそうだ。