じゃびる亭「汞餅」自主回収 人気『ゲテモノ』配信に警鐘

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じゃびる亭(クーペフィーロ国マッキナ村)は7月5日、「汞餅(みづかねもち)」の自主回収を実施すると発表した。

予期せぬ国外への持ち出しが確認されたとの報告があり、クーペフィーロ国政府が他国へ呼びかけ、回収の協力を仰ぐという異例の事態となっている。

じゃびる亭は5年前に開業して以来、オートマタ族や鉱石族向けの菓子を製造販売しており、中でも「汞餅」は人気商品である。

水星の大気で風味付けされた水銀を、軟化魔術を施した石英で包んだもので、その美しさはSNSでも話題となっていた。昨月34日、MahoTubeでヒト型魔術師が「汞餅」を「機械人形の国のゲテモノ」と称し、実食する様を配信し、注目を浴びた。現在、該当する映像は削除されている。

その後注文が殺到したものの、じゃびる亭では元々他種族への商品販売を全て断っている。

しかし、SNSでは汞餅実食レポの掲載と食後の体調不良の報告が止まらなかった。原因として、転売目的での購入者がいると仮定した同店は、汞餅をはじめとする商品全般の販売中止・自主回収を決めたという。

店主であるオートマタ族男性(稼働3年)は「体調を崩された方は気の毒だと思うものの、“ゲテモノ”扱いされた商品を思うと複雑な気持ち。お客様の良識を信じていたが、それでは甘かったようで大変残念に思う。”お取り寄せ”が出来ないのにはちゃんとした理由があるので、どうか理解してほしい」と話した。

現在じゃびる亭はこの一件を受け休業中である。再開するかどうかは未定だという。

230年前の「アマルガムガム事件」は、人々の記憶から既に薄れているのだろうか。『蜘蛛に珈琲』ということわざがあるように、誰かにとっての嗜好品は、誰かにとっての毒かもしれないのだ。その逆も然り、である。当たり前のすぎることだが、改めて胸に刻むべきではないだろうか。

クーペフィーロ国は今年独立20周年である。自我を持った魔導人形や魔道具たちはこの事件を受け、なにを思うのだろうか。

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