大和時間の1月20日、空に五芒星が現れた。
「獅子座流星群」を見上げていた人々は予期せぬ光景を目撃した。空に浮かんだ輝く星を繋いだ五芒星が、月より明るく光り輝いたのだ。
「大和の大規模魔術が見れるとは思わなかった」
メルトリーア大学賢者候補生、ドルマフ・イオーフ氏はそう話す。「海を渡ったこの国でも見える魔法陣は初じゃないか」と語るのはドルマフ氏だが、この証言が事実だと確認されれば、大和が大規模な国益魔術を使ったことが記録される初の例となる。
流星群を観測していたある人が、空に描かれ始めた五芒星を発見。水晶ネットワークに「空に浮かぶ珍しい魔法陣」と記憶を投映した。すると大和国ファンコミュニティの目にとまり、たちまち拡散された。その間にも、流星群を観測できる地域の人たちが、五芒星を描く光の動きをとらえた記憶を水晶に投映していった。
当初、多くの魔術師達は半信半疑でその記憶に接した。秘密が多い大和国が、これほど露骨に大規模な魔術を展開したのが信じられなかったようだ。
五芒星が描かれた光はすぐに消えたため、フェイクニュースとの声も上がった。しかし、次々と投映される記憶が真実を語っていた。
流星群が始まったばかりの世界時間4時41分、月の南側に星が輝き点となり、流星群の流れを無視するように線を描いた。その線は止まるこなく動き五芒星を描くと、一瞬だけ月より明るく輝き、消えていった。
ドルマフ氏は、この五芒星は大和国がよく使用するお札や式紙に書かれる特有なもので、西洋で使われているペンタグラムとは別物だと言う。外観を見ただけでは魔術内容が理解できない高度なものと熱く語ってくれた。
観測していたのは大和国ファンたちだけではない。メルトリーア大学で予言の書と星の動きを比較し、信憑性と時系列の研究をしている六星占術研究家のメラド・ヒャガ氏もその一人だ。獅子座流星群に際して、メラド氏は貴重な星の動きを観察しようと研究室に残って天体観測魔術を発動していた。その際、観測された星の動きを投影し8個の水晶に記憶させている。
メラド氏が星の動きと預言書を見比べながら大量の星を眺めていたところ、月の近くに五芒星が現れた。月と星の位置関係から大和国上空と判断したメラド氏は、すぐ知り合いの大和国ファンの賢者に水晶の記憶を転送した。
どのような効果の魔術が展開されたかは不明だが、「神秘の国・大和国のことだから、月にうさぎを転送したのではないか」といった大和国の昔話に絡めた魔術内容が噂され、大和国のファン界隈は盛り上がりを見せている。
もし、本当に月にうさぎを送ったのかどうかを確かめたいのなら、次の満月に夜空を見上げることをお勧めしたい。