新技術、回顧魔法を用いた遺物調査の難しさ

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魔法技術の向上により、物の記憶を見る“回顧魔法”が考古学の分野でも用いられることが増加した。遺物のごく一部、数グラムを用いて物の年代を正確に知ることができる新技術によって、数々の新事実が判明したことは確かである。

しかし、その成果を安易に強調するのは危険性が伴うとする調査結果が、魔法考古学会の第472回総会において提出された。

回顧魔法自体はごく単純な魔法であり、いつの記憶を見たいかを設定することで写真のようにその様子を写すことができる。基本的には簡単な魔法で技術者を選ぶことは無いが、画像は古い記憶になるほど不鮮明になり、どの時点での記憶を見るのかを操作するには非常に高い魔法技術が求められる。その点において、考古遺物は数千年、数万年の記憶を保有しており、目当てとなる製作された年代、用いられた期間、廃絶された時期を断定することは難しい。遺物一つを鑑定するのに数年かかるという試算も提示された。

そんな中でも回顧魔法による成果が報告され続ける背景には、限界年代という概念が用いられたためである。これは回顧魔法が考古学において用いられるようになってから導入されたものであり、回顧魔法を使用できる年代の下限を調べることによって、それを製作年代に充てるものである。

しかし、回顧魔法に遺物の一部を消費して使用するゆえに、土器であれば使用した土、石器であれば石そのものが生成された、その形となった時代を示す可能性があり、年代が下がることを指摘した分析結果にも疑問が示される。

今回の調査を主導したアルハト・デジャル氏(アッサム考古博物館教授)は、「回顧魔法のみを用いた分析を絶対視することは難しいが、従来の編年研究に根差した分析に用いることはできるのではないだろうか。ただ、今後技術の発達によってより少ない資料で、緻密な研究が可能になるだろう。今回の報告は、あくまで現段階の物と理解していただきたい」と述べ、回顧魔法を用いた分析の今後に期待を寄せる考えを示した。

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