ここ1000年ほどで交流が活発化しているエルフとダークエルフ(ドロウとも)。先日、その2種族の間での貿易で、一部商品の関税を撤廃するという条約が結ばれた。
今回対象になる品目は、エルフ側の特産品である『薬草類、食用肉類』とダークエルフ側の特産品である『鉱石、ヒカリゴケ類』。お互いの名産を安くやり取りすることで、友好関係を保ちたい意向だ。なお、争点となっていた『毛皮類』『織物類』は次回の会議に持ち越す模様だ。
エルフは狩猟を主にしていたこともあり、強い矢じりや鉄鉱石武器の開発を繰り返していたが、地下資源に乏しかったために難航していた。辺境で起きたエルフとオークの小規模紛争にて、武器の物量でエルフが敗北した屈辱の歴史も残っている。一方ダークエルフの多くは地下に住んでいるため、薬草の入手が長らく難しかった。小さなダークエルフが病の母のために、地上のエルフたちに薬草を分けて貰いに行く『やくそうをかいに』は名作として語り継がれている。両者お互いに交流があれば、という後悔が残る品目での関税撤廃とのことで、比較的好意的な意見が多い。
一方で問題も残る。ダークエルフ鉱山でのオークのブラック労働(この場合”ダーク労働”とも呼ばれる)がさらに過熱する恐れがあり、実際に一部鉱山ではストライキが発生している。エルフ側も、単価が下がることで狩猟頻度が増え、ケンタウルスへの誤射が増えることが懸念され、有識者による対策会議が緊急で行われた。
エルフとダークエルフの歴史は長い。互いに近しいルーツを持ちながら地下と地上に別れ、いがみ合っていた歴史もあるが、それはとうに昔のことである。彼らの目は長い未来に見据えられている。これから先は交換留学制度や移住制度をより拡充させていき、より両者の交流を深めるという。