
昨日午後、イソル国・テルナッド州で「知人が心無き者に成り果てている」と数百件もの通報が警察署に押し寄せた。
この事件について、警察署は同時期に起きたアストラル体の集団消滅事件が起因していると断定。冒険者ギルドとの協力体制を掲げ、アストラル界にて多数のアストラル体を消滅させた犯人の捜索活動を続けている。
しかし、捜査に協力するはずの冒険者たちはあまり協力的ではなさそうだ。
「俺らは聖人でもなければ賢者でもねぇ、荒くれ稼業の野蛮人だ。だがな、捨て駒みてぇに扱われて『はいはいわかりました』とホイホイついていくような馬鹿じゃあねぇ」
「アストラル体が失くなったら心も失うって? 嫌だねぇ……」
「サツと協力? そんなら俺ぁ便所で飯でも食っとくか」
「マッポと動くとタマに足が生えやがんだ。歩いてどっか行くって言うんだぜ? 俺は俺のもんなのによ」
非協力的な姿勢の背景にあるのは、やはり扱いの悪さだろうか? 一部冒険者によると、冒険者を前線に置き警察は後方から指示を出すのみであるという。
そうした扱いが冒険者たちに不満を抱かせるのは至極当然だ。
警察は協力を要請した側だというのになにをしているのか。
──コメンテーター、ヴィギル氏
心無き者について、専門家は以下のようにも述べる。
「心無き者になると生存に必要な食事・排泄以外のことを行えなくなり、食事の用意などには必ず介護人の助けが必要となる。身近な人が心無き者となった場合、心の身体であるアストラル体の回復を待ち、被害者の介護に努めていただきたい」
警察署も、単身世帯の被害者に関しては餓死に至るおそれがあると考え、犯人の捜索とは別に単身世帯の家々を訪問して回っていると発表。身近に一人暮らしをしている人がいる場合には、何らかの手段で確認を取っていただきたい。