森に生まれ、森に暮らし、森と共に生きていく――そんなエルフ族の典型的な生活観は、もはやステレオタイプとなりつつあるのかもしれない。
エルフ情報専門メディア『アルフヘイム』の調査によると、故郷の森から外部の村・街へと移住したエルフ族の人数は、ここ十年にわたって増加の傾向にあるという。特に、二十代から八十代にかけて幅広い年齢の若者が”森離れ”を始めている。
「閉鎖的な生き方そのものが、今の世界には向いていないんだと思います」
数週間前に森を離れたばかりのEさんは、故郷の生活を客観的に振り返る。
「エルフは温厚で、他種族との共存にも好意的。ですが、排他的な面があることも事実。良くも悪くもプライドの高い人が多いので……」とEさん。森での生活は満ち足りていた一方、言いようのない閉塞感も感じていたと語る。
「伝承を重んじる人が多いんです。数百歳とか、高齢の方は特に。先祖代々、森で生きてきた人にとって、あそこでの暮らしは使命に近い感覚があるんですね。でも私は、将来的にはその価値観を変化させる必要があると思っていて。反抗と言うと幼稚ですけど……離れることで、見えてくる姿もあるのかなと」
話しながら、たびたび苦笑を見せるEさん。街での暮らしにはまだ不慣れな点も多いが、「ひとつずつ身につけていきたい」と意欲を見せていた。
近年、エルフ族に限らず、他の種族にも同様の現象が見られつつある。昨年には北方竜人族の火山からの大移動も話題となり、世間を大いに騒がせた。時代の転換期は着々と近づいている――我々はどのように対応を進めていくべきだろうか。
受け入れ先など問題も多いかもしれませんが、他種族の方々と交流の幅が広がるのは人間として嬉しく思います