住んでる家が耐火耐水防音免震魔法に欠陥があるかもしれないとのことで、引っ越しを検討中の瑞々です!
ところであれから行けてないんですけど、また本部と連絡がとれるようになりましたね…。
噂じゃあ時空系魔法による歪みに巻き込まれたとか、スキャンダルを見つけてしまい消されたとか…。
でもあそこの建物、本部以外の施設も普通にあったはずなので(以前摘発されたブラック結社も確か入ってたんじゃなかろうか)不慮の事故だとしたら仕方ないって感じですかね。
どうせなら書庫にあった資料分けてくれないかな…あそこの書庫空間歪んでて、一回だけ行ったら混沌に呑まれかかったし(混沌学専攻の同期がいなかったらやばかった)、なぜかアトス大の中につながってたし…資料集中して読みたいんだよな…
まあその辺はおいおいまた調べるとして。
今日は、しばらく本部と連絡が取れない間にやってた、古魔導書店巡りのお話。
皆さん古魔導書はお好きですよね?
そんなことない?
古い魔導書なんて何に使うんだって?
…まあそうですよね、そういう人の方が多数ですよね。
実際魔法を学ぶのだったら普通の店に並んでる魔導書で充分です。
では古魔導書で何を知るのか?
魔法の歴史?
それもあります。学校で学ぶ歴史で古書はたびたび出てきます。
古魔導書を見ると、結構意外な事実が書かれていたりもするものです。
例えば、かつてある国の国定教科書として使われてた古魔導書を見ると、当時は天文、音、移動系といった、今では全く別物とされている魔法が関連性を持って教えられていたこと、国内における貧富の差を反映して、相手の個人情報に干渉する魔法が詳しく教えられていたことなどが見えてきます。
これらはもちろん国や時代によって異なり、違いを眺めているだけでも面白いのですが……
古魔導書で一番面白いのは、やはり当時の利用者の様子が垣間見える事でしょうか。
最近だと、誰かによって他者の記憶が封じられてる古魔導書なんてのもあったりして(封じられた人はどうなるんだろう……記憶喪失?)
古魔導書店の店先で、書き込みしまくってる数十年前のやつを見つけると「やった!」ってなりますね。
皆さんも古魔導書店、休みの日にいかがですか?
おすすめはアトス市郊外のダーカンからカミフォーにかけての一帯です。元々学校の多い土地柄で、通りの片側に古魔導書店がずらっと並び、もう片側に学生向けの安い飲食店や公共施設が並ぶ様は圧巻ですよ。
まさしくアトス市のディープな街並み。もう何百回通ったことか。
初心者におすすめの店は「ユーセイド」ですかね。もう3000年近くの歴史を持つそうで、今では他の街にも店を出してますが、本店はやはり一見の価値ありです。石造りの建物の中に所狭しと古魔導書が並び、独特のにおいが立ち込めるさまは、もはや博物館です。
それでいて、店員に尋ねると懇切丁寧に古魔導書について教えてくれます。というか、魅了的な魔法をかけられて強制的に古魔導書の世界に引きずり込まれます。
古魔導書の保存もしっかりしていて、中には崩れかけて一部読めなくなったり、シミがついてるものもありますが、魔力がしみだして外に出るようなことは全くなく、買う場合は保存の方法などもしっかり教えてくれます。
もちろん他のこじんまりとした、それこそ高齢の店主が一人で切り盛りしてるような古魔導書店も味があります。
以前見たのは、エルフの女性店主が自分の幼少期に使ってた絵本を売りに出しているという……いや、200年前の童話絵本、面白かったですけど……
最近見たのは、50年ぐらい前の「パユパユペペリリマーン形式論」ですね。パユパユペペリリマーン学に関する古魔導書は珍しいので思わず購入してしまいました。
…案の定読めませんでしたけど。物理的に破損してましたし、読み取れた部分も意味が……
スコラームφはポポンマψをトーアッタンするがイラポポンマδをイラトーアッタンしている。ψとδをデュトーアッタンするスコラームΦを考えると、Φとφがデュトーアッタンしているポポンマはψに限る。もしイラポポンマζをトーアッタンしているとすると……
…つらいです。パユパユペペリリマーンを学んでる知り合いいたけど、会話が通じたことなかったっけ…。
ただそういう古魔導書には随所随所に書き込みがしてあったり、汚れたところに除去系の魔法をかけた跡があったりして、以前の持ち主の様子がうかがえるのです。
名も知らぬ昔の人物によって書かれた魔導書が名も知らぬ誰かによって読み継がれ、何千年にもわたって魔法やその理論を伝え続ける……それだけでロマンがあるというものです。
ただ、古魔導書店には高確率で衝動買いを誘発させる精神魔法がかかっているので、今話題のふえるおかねを準備できない方は、魔法障壁をいつでも張れるよう準備しておくことをお勧めします。