社会

国際憲兵団にマークされている5つの秘密結社

国家存亡の危機、国際指名手配犯、戦争回避、暴動鎮圧……全世界の均衡を維持するために日夜働く国際機関、国際憲兵団。

彼らの扱う事件はどれも大規模で邪悪で複雑なものばかり。国際憲兵団にとって事件とは、“起こってからでは遅い”ものなのだ。

そのため、彼らは重大事件を起こしそうな危険な組織・団体を見つけては職員を送り込み、24時間365日監視しているという。国際憲兵団公式の掲示板には、現在マークされている要監視団体のリストが公開されている。

↓要監視団体リストの術式アドレス

Ehh/world.policemen.institution/zxzx@@msjziwhdkaa%hell.magi

今回はこのリストの中から一風変わった団体を紹介しよう。

1. 革命の日の入り

『革命の日の入り』は、大陸南部を中心に活動する宗教結社だ。

“邪神”を自称する正体不明の人型生物『キァキァラナン』を崇拝しており、信者はキァキァラナンの“種子”を植えつけられる“洗礼”によって、強力な闇の魔力を手に入れる。

革命の日の入り教団の目的は、この星をキァキァラナンが一番住みやすい環境に作り変えることで、教義には既存の社会秩序の破壊を正義とする文言が刻まれているという。

教団の目的が達成された、キァキァラナンの大好きな闇で満たされた世界。それが“革命の日の入り”なのだ。

2. ブレイブ商会

ブレイブ商会に所属する者たちは全員、自身を「異世界から来た“ユウシャ”だ」と言い、それぞれ変わった形の剣を携えている。

ブレイブ商会に集まってくる商品は、この世界には存在しないはずの物質や未知の技術によって作られた道具など不思議なものばかりで、その商品は頻繁に不可解な事件・事故を引き起こす。

ブレイブ商会は不思議な商品の独占販売でボロ儲けしている上に、利益のためなら地上げや脅迫、暗殺も厭わないと言われ、他の商会や治安維持組織から疎まれている。財力を利用して教皇の懐に入り込もうとしているとの噂もある。

3. GC (Glass Children)

魔術人間(ホムンクルス)の製造、売買、利用は倫理的社会問題としてよく槍玉に挙げられる。道具として乱暴に利用され、捨てられたホムンクルス達は郊外にスラム街を形成し年々街を肥大させ続けている。

Glass Children(ガラスの子どもたち)は、生ける魔術の犠牲者であるホムンクルスたちが集まって組織した秘密結社だ。

彼らの主義思想や活動内容はまだ明らかにはされておらず、構成員は同じ術式で乱造されたホムンクルスなので顔の区別がつかない。

ある筋の話では、昨年起きた「使い魔連続不正遠隔操作事件」はGCの仕業だという。

4. ドクター・クロックハートと愉快な仲間たち

この団体名は組織の代表であるドクター・クロックハート(本名:クラッズ・クロックハート)自身が名乗っている。

クロックハートはエルフ族の女性で、30年ほど前まで魔術書の出版社に勤めていた平凡な市民だったらしい。しかしある時から彼女は言動がおかしくなり、ついには失踪。10年後に愉快な仲間たちを引き連れて帰ってきた。

クロックハートの仲間は魔術と手術によって体が著しく変形した異常者たちばかりで、中には牢獄や犯罪者用精神病棟に入っていた者たちもいる。

普段は別の犯罪組織からの死体処理や暗殺の依頼を請け負うことで生計を立てているらしいが、彼女らは時に大規模で意図不明な犯罪を犯す。

今年の夏、ユスティア王国上空で327人を乗せた飛空船がジャックされる事件が起こったが、クロックハートは自身の犯行だと声明を出している。

5. ヴァロス・ハリス

クリズン教イェリス派から派生したこの宗教団体は『社会魔法主義』を掲げる過激派組織だ。

社会魔法主義とは、魔法・魔術を誰もが法律の範囲内で自由に使える現在の環境を批判し、魔法・魔術の使用と学習は中枢機関に完全に管理されるべきであるとする思想。

国際憲兵団はヴァロス・ハリスを一級危険団体に認定して捜査を行なっているが、彼らはレッド・クラス級と推定される高度な魔術技能の持ち主で、国際憲兵団は手をこまねいているようだ。

しかし私はある情報通から、ヴァロス・ハリスの末端の人物に関わる情報を手に入れることに成功した。この情報を元に糸を辿っていけば、やがてはヴァロス・ハリスのののの

皆さまに大切なお知らせです。

こんにちは。

どうやらこのジャーナリスト気取りの三流魔術師は

我々を嗅ぎ回っているようだ。

いいかい?

この世にはね。

見てもいいものや知るべきことより

見なくていいことや知るべきでないこと

のほうが、圧倒的に多いんだ。

わかったかい?

さあ、もう忘れてページを閉じなさい。

あとね。

魔法はよく考えて使うんだよ。

【不定期連載】化け狸大学教授に聞く「変身魔法」①

変身魔法は、我々の身近なところで使用されている魔法だ。

例えば「化け粧ファンデーション」は調合失敗時にできた顔のイボ隠しによく使われている。また筆者のような魔法生物は、「WTA(Working Transform Animal)」として変身魔法を用いてヒューマン等に化けて仕事をしている。

このコラムでは、変身化け学の権威として著名な化け狸大学教授の茶釜 ぶんぶく氏(以下 茶釜氏)にアドバイスを頂きながら、変身魔法を使う上での落とし穴や、知っておくと便利な術式や魔道具等を紹介していく。

今回のテーマは先程も上がった「WTA」についてだ。

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サハギン長老 静電気で重体

21日未明、ネトル県カモマイル市に住んでいるサハギン長老ヤヴィ・コルテさん(69)が、静電気によるショックで重体に陥り緊急搬送された。

近所の住民によると、コルテさんの家に塩を届けに行ったところ応答がなかった。鍵が開いていたので中に入ると、普段は設置されていない金属製のドアノブの前でえら呼吸の停止したコルテさんを発見し、魔法局救急科に緊急連絡を取ったとのことである。

コルテさんは魚人族専門病院に搬送され、治療を受けている。依然として意識不明の状態が続いており、サハギン族には動揺が広がっている。

捜査当局は、隣に住む電気ネズミ族の男が事情を知っているとみて任意同行を求める方針である。

電気ネズミ族の男とコルテさんの間ではトラブルが絶えなかったとの情報もあり、当局は現在行方が分からなくなっている電気ネズミ族の男を追っている。

アストラル図書館存続の危機 資金難の原因とは

全宇宙の情報をすべて記録しているとされる一枚の石盤、通称アカシック・レコード。この巨大な石盤が安置されているのが「アストラル図書館」である。

しかし近年、とある原因で資金難に陥っており、このままでは閉鎖になりかねないという。

「アカシック・レコードの膨張スピードが、増加しつつあるのです」

アストラル図書館でおよそ三万五千代目の館長を務めるホルヘル氏は、資金難の原因についてこう語る。

「アカシック・レコードを取り囲むように建てられているこの図書館は、その膨張に合わせて十年に一度の改築をおこなっています。それが追いつかなくなってきているのです」

アカシック・レコードにはこの世のすべての情報が記載されているが、世界が存在する限り、情報の総量というのは刻一刻と増え続けるものだ。当然、石盤もそれに伴って少しずつ膨張していく。

しかし近年、石盤の膨張速度が急に大きくなったという。

「近年の情報化社会によって、世界に存在する情報の総量が異常な速度で増え続けた結果だと考えています」

項垂れるホルヘル氏。その背後では、ちょうど石盤が図書館の柱をメキメキと押し潰しているところだった。

今では二年に一度改築しても石板の膨張速度に追いつかないという。改築が終わらないうちに新しい部分の改築が始まり、やっと改築が終わった場所はさっそく石盤に押し潰され、今や図書館というより崩れかけの廃屋のごとき様相を呈している。

作りかけの足場も容赦なく押し潰されることで作業員にも死者が出ており、お悔やみの言葉が弔いの儀式に大量に寄せられ、それによって石盤がさらに膨張するという悪循環。

「最近の若い魔法使いは通信魔法器具を肌身離さず持ち歩き、常に誰かと連絡を取り合っています。交わされるメッセージひとつひとつは短くとも、集まれば膨大になるでしょう。さらに風景転写魔法の発達により、自分の見た風景を気軽に他人と共有できるようになりました。転写された風景の情報量は、会話の比ではありません。それらをすべて記録する石盤が異様な速度で膨張するのも、仕方のないことでしょう」(魔法記録学の権威レコルダル氏)

近年取り沙汰されている「情報化社会」の影響は、こんなところにまで及んでいた。

「手紙の慣習は廃れつつあり、古き良き梟便は採算が取れずに廃業の危機だそうですね。これも時代の流れとして仕方のないことなのかもしれませんが、第三万五千、いや六千……えーと……三百……七百かも……とにかく、およそ三万代目の館長としてここを潰すわけにはいきません」(ホルヘル氏)

館長は本日未明、全世界に向けてアストラル図書館への支援を訴える声明を発表した。これは異例のことであり、各国に波紋が広がっている。

いつから存在するのか、何のために存在するのか、すべてが謎に包まれたアカシック・レコード。この世の情報すべてが記載されているというが、そこに刻まれた文字は誰にも読むことができない。

その重要性はさておき、よく考えてみれば図書館がなくなってもアカシック・レコード自体は存在し続ける。

ということは、別に図書館がなくなっても困らないのではないか。

「困りますよ! なくなったら、その、なんというか、アレがアレされます」

私がぶつけた疑問を、ホルヘル氏は慌てたように否定した。

アレがアレされることを防ぐため、各国はどういった対応をおこなうのか。今後の動向を注視していきたい。

再注目される空飛ぶ箒 ダイエット本が人気

「空飛ぶ箒はもう古い」……若年層からそんな声が出て久しいが、箒という移動手段はまた日の目を見ることができそうだ。

最近、若い魔女たちの間で「空飛ぶ箒ダイエット」が話題になっている。

きっかけとなったのは、マージニア・シヤーセル著『飛ぶだけ簡単! 箒通勤ダイエット』(Witch Craft出版社)のヒットだ。エルフ語、ドワーフ語など600を超える言語に翻訳され、各世界で「空飛ぶ箒ブーム」の再来を引き起こしている。

マージニア氏は、第2640回から第2703回の空飛ぶ箒選手権5000キロメートルで活躍。第2641回から第2644回までの間、5000キロレースの世界女王として君臨したことで有名だ。

プロの箒レーサーを引退してからはコーチとして活躍。近年では、各世界で話題となった「若者の箒離れ」を打開するため、初心者向けのカジュアルな箒教室を運営していた。

「最近は家に箒がない家庭も多い。教室に来て初めて箒を触ったと言う人もたくさんいらっしゃいます」とマージニア氏。

教室では、箒の扱い方や乗るときの姿勢だけでなく、手入れの仕方まで丁寧に教える。

「人それぞれ、体型に合った箒の形や材質があります。ぴったりのものを教えてあげると、みなさんとても丁寧に扱ってくださりますよ」

『飛ぶだけ簡単! 箒通勤ダイエット』では、種族・体型別のカテゴリに分けた箒選びのコツや、実際に空を飛ぶときの姿勢の注意点に触れる。初めて箒に触れるという人が、空飛ぶ箒を始める最初の一歩として本書を買えるように構成されている。

読者諸氏も気になるダイエット効果だが、太腿で箒の柄を挟むことで足やせ効果、いい姿勢を保つことで猫背やぽっこりお腹の改善につながるとマージニア氏は語る。

「飛行魔法は便利ですが、体の筋肉を動かしません。だからといって、体を動かすために歩いて通勤なんて無理ですよね。箒なら、空を飛んで速く通勤しながら、効果的にほどよい筋肉をつけることができるんです」

インタビュー中、マージニア氏のご厚意で、筆者も空飛ぶ箒に初挑戦した。確かに太腿で柄を挟むのは、長時間続くと一般の魔法使いには厳しい。しかし、10分程度の通勤や移動くらいなら無理なく続けられるように感じられた。

さっそく、近隣の取材に向かう際は「箒ダイエット」に挑戦してみたいと思う。初めて箒に触れる人も、久しぶりという人も、このブームに乗ってみてはいかがだろうか。

日刊森のアナグマ グリフォン便の今に迫る。

「グリフォン便」、少しばかり割高ではあるがフクロウ便や古来からある煙突便に比べると、配達時間のぶれも無く、また煤で汚れてたりもしないことで人気を博した郵便、宅配方法。

今や宅配業者だけではなく、地方の魔法郵便局ではなくてはならない存在となっている。だがそのせいでグリフォンとその騎手たちは過酷な労働を強いられているようだ。

日本がグリフォン便に使うグリフォンは、メキシコから輸入されてきた多くのメキシカン・ブラックレッグ種と少数の日本原産チャイロタカジシ(英名にするとジャパニーズ・ホークアイ種)によって構成されている。

ブラックレッグ種は、大きい体と太く黒い足が特徴的なグリフォンであり、その体の大きさを生かした宅配が主となっている。

一方で、チャイロタカジシは、数百メートル下の獲物さえも見えるという優れた視力、急降下して獲物を狩るために必要な小さい体、その体を包むような特殊な翼のたたみ方をするグリフォンで、こちらは主に郵便を担当している。

どちらも優れたグリフォンで、時には人間を日本の南の端から北の端まで運べるほどの持久力も持ち合わせているのだが、その持久力でもさえも参るくらいの仕事量が押し寄せているのが現状なのだ。

「グリフォンたちも休憩なしで働きづめです。私たちと同じく日に三食は必要なのに、昼食は飛びながら鼠を数匹というありさまで、中には食べられない子もいます。また騎手たちも地面に降りたら走って荷物を届けてまた駆け足でグリフォンに乗ると急上昇。昼食昼休み返上で働いており、空にいる時間の方が多いこともあります」

そう語るのは魔法郵便局に勤める、高鷲元博さん(32)である。彼はグリフォンの乗り手であり、この業界に入って12年目となるベテランだ。

「また、魔法生物の規制が厳しい日本では、グリフォンに乗るために様々な試験を受けなければなりません。これが人数不足理由の一つでもあります。さらに多くのグリフォンは一度乗せた相手以外の者を乗せたがらないという習性も相まって、グリフォン自体の数も少ないのです」

空を飛ぶ魔法生物の騎乗は、外国では基本的に「飼育許可証」と「飛行魔術の免許証」があれば許可される国がほとんどだ。しかし、日本ではこれに加えて、「日本魔術教会飛行技術検定の二種以上」「国家資格である飛行通信魔術士」の資格が必要であり、かなりの努力が必要となる。これが、グリフォンの騎手不足にそのまま直結しているのだ。

またグリフォンの方も、最初に自分に乗った人間以外が背中に乗ろうとするのを嫌い、騎手が自分以外のグリフォンに乗ろうとすると激しく嫉妬するのだ。なので他のグリフォンに代わる代わる乗るということもしにくい。

「これではグリフォンか、騎手か、どちらかが近いうち墜落することになります。サービスが向上することは良いことだが、それを支えている動物たちのことも少しだけ考えてほしい」

そういって心配する高鷲さんの目もまた疲労の色を隠しきれていなかった。

確かに便利で、安全なグリフォン便。今ではその日に配達を売り文句にする配達業者もあるが、会社の信頼が地に落ちる前に彼らの墜落を危機を止めるべきであろう。これ以上彼らの悲報を記事にしない未来を祈りつつ、鉄の鍋蓋銀行頭取ドワーフ、石中正弘氏の名言を引用してこの記事を終わりにしたい。

たまたま洞窟でミスリルを掘り当てたからと言って、その穴全てを掘るべきではない。眠る悪鬼が目を覚ます。

日刊森のアナグマ ライター 御手洗団子

モンコッド魔法具商会 亜ルキス魔法に注意呼びかけ

ルキス・モンコッド氏考案の『ルキス式携帯小型水晶球遠見魔法』(通称『ルキス魔法』)は、それまで座標設定の難しさからある程度大きさのある据え置き式水晶球でしか使うことのできなかった”遠見”を、小型の水晶球と専用術式を施した台座を組み合わせた携帯式の魔法具で使用可能にする画期的なものであった。

その登場からおよそ三十年、さらに小型化・高性能化・省魔力化が進んで、今や移動しながらでさえ旧来以上の高精度で”遠見”が使えるようになった。もはや生活する上でなくてはならないものであるといっても過言ではないだろう。

ところが昨今、このルキス魔法具の亜種が低価格で出回っている。これは低位の錬金術などで作られた人工水晶球を使ったもので、特に移動しながらの使用の際には使用者の魔力を正規品の1.5倍から3倍ほども必要とする場合があるという。

モンコッド魔法具商会の広報担当者は、以下のように呼び掛けている。

「われわれの設計思想では安全性が最上位に置かれているし、魔法具を取り扱うすべての人々がそうあるべきだと考えている。われわれは危険なものに価値を認めない。亜ルキス魔法は無駄に魔力を消耗するとともに周囲への警戒が疎かになり、転倒や衝突、魔物への不用意な接近などの危険性もある。ぜひわれわれの正規品を使用してほしい」

一方で、同商会の市場独占状態には不透明な部分もあるとして、遠見魔法具業界に強引に食い込もうとする新規参入者も多い。

今は亜流でしかなくてもモンコッドに迫る品質を備えた相手が近い将来現れることは十分に考えられ、使用者の選択の幅が広がるとともにより一層のモラルも求められることになるであろう。

風杖祭 レーテ村で開催

南部豪風地方のレーテ村で、今年も風杖祭が行われました。

風杖祭はレーテ銀で有名な同村に伝わる伝統的なお祭りで、参加者が風の魔法や精霊を使って長さ70~300セメタ、重さ0.5~4キラムの杖を飛ばし、その飛距離を競うものです。

祭りの原型は、かつてこの地で悪事を働いた大蛇を封じ鎮めるための神事であったといわれていますが、参加者たちの華やかな銀飾りや卓越した魔法制御を目当てに、30年ほど前から観光客にも人気のイベントとなっています。

今年は魔力自慢の20人ほどの若者たちが参加し、杖が投げられるたびに見物客から大きな歓声が上がりました。

今回の優勝者は姉妹で参加した最年少のロッテちゃん(11)で、「精霊もちゃんと言うことを聞いてくれて、お姉ちゃんに勝てたのでうれしかったです」と笑顔を見せました。

また、運営委員長でもある村長は「昨年は精霊の(制御を誤ったことによる)事故がニュースにもなり、参加者が出ないのではないかと心配しましたが、今年はこうして無事に終えることができてよかった。地の蛇もこの一年はおとなしくしておりましょう」と語りました。

増加する虚空間。今後の対策は?

(画:ナハーヘム市で確認された虚空間の一例)

「作成した空間は放置せず、適切な管理をお願いしたいです」

ナハーヘム市の『街づくり推進課』に勤めるハルシュ・ヴィケーム氏は、増加しつつある「虚空間」に関して苦言を呈した。

持ち主がいるがだれも住んでいないのが「空き家」ならば、「虚空間」とは「空間魔法の行使により、基底世界に孔を開ける形で作成されたものの何らかの理由により使用されなくなった空間」となる。

基底世界とは、通常我々が存在する空間であるとされているが、現在、ナハーヘム市が属するヴェルニダット地方上の基底世界だけでも500個以上の「虚空間」が存在するとされている。

では、これらを放置することによって何が引き起こされるのだろうか。ヴィケーム氏は我々の取材に対し、こう答えた。

「虚空間は空き家のように、土地の圧迫や景観の変化などの大きな変化が起きないため、安全ではないかと考える魔法使いもいます。しかし、管理されていない空間が増え続ければいずれスペースが足りなくなるということも十分起こり得ます。また、空間が作られ続け、基底空間の強度が不安定になることで予期せぬ大事故が起きる可能性も高くなります。空間魔法は、言い換えてしまえば岩に孔を開けて洞穴にするようなものですからね」

既にナハーヘム市では、空間が破損したことによる虚空間への落下事故が発生している。ヘレニム魔術学校では空間魔法の演習中に、生徒が誤って虚空間へと落下し足の骨を折るなど全治一カ月の大怪我を負った。

魔法が普及した今でも、空間魔法と時間魔法は未知の部分が多い。多用されることによる空間や時間の変化の詳細な調査も進み切っていないのが現状だ。

今後の対策に関して、ヴィケーム氏はこう述べている。

「今後は空間魔法に関しては免許制を取り入れることを考えています。取締りに関しても強化していきたいですし、専門家を呼ぶなどして虚空間の探知を行い、空間作成者に呼びかけるなどしていきたいですね」

魔法によって、我々は光を手に入れた。しかし、こういった問題も同時に発生するようになってきており、法整備などが求められる場面も今後増えてくるだろう。

重すぎる魔導書、新たな理論で打開なるか

15日、魔法医学会は魔法省に、三年生から行われる軽量化魔法などに関する持続魔法の授業を一年生の最初の学期に行うことを提言した。これにより、児童生徒の持ち歩く魔導書の負担を軽減させることを目的としている。

生徒への負担はかねてから懸念されている。先月行われた都内初等魔法教育学校一斉調査では、一年生~三年生の生徒の87%が平均8.6kgの魔導書を持ち歩いていることが分かった。一年生の生徒が持ち歩いている魔導書の数はゆうに十冊を超え、中でも薬学の授業に使う図録や、基礎魔法陣の魔導書などはそれ一冊のみで1kgを超える重さであった。医学会によればこの重さは一年生の平均体重の半分に当たり、この重さのカバンを持ち歩き続けると生徒の発育に影響を及ぼすと指摘している。

各家庭へのアンケートを行ったところ、一部の家庭では保護者が生徒のカバンに軽量化魔法をかけていることも明らかになったが、軽量化魔法には持続的な魔力供給を要し、効力には術者との距離も関係するので、学校へ辿り着くころには軽量化魔法の効果が半減していることがほとんどだった。

持続魔法の授業が行われるのは三年生の後期からであり、この理由については、軽量化魔法など持続的な魔力供給を要する魔法は、基礎的な魔力作用や、ゲート構築などの技術を用いなければならない為とされていた。しかし、近年新たに一年生の授業にも用いられるようになったバックドアならば、そういった複雑な理論を必要としないことも明らかになっている。

ゲートは魔法発現の基礎であり、体内に取り込んだ魔力をゲートに通し、様々な魔法理論で意味づけることで魔法をかけることができるが、バックドアの場合はゲートを体内に構築せず、大気中の魔力を用いて魔法陣を編み込むことで、魔法を発現する。自身の身体を介さないため、効力に関してはゲートを通したものには一歩劣るが、身体への負担が少ないのに加えて、大気中の魔力操作は簡単な理論であるため、一年生でも十分に発現させることが可能である。

魔法省は来月中にもこの提言に対する報答を行う予定だ。