社会

整形魔術へ使用許諾 解呪までの期間に限定

失われた体の一部を、誰でも取り戻せる時代が来るのかもしれない。

先日、フラウジア医療魔術研究所が開発した新しい医療魔術へ限定的に使用許可がおりた。呪いによって治療魔術を受けられない人々のために開発されたもので、患者の体の一部を本物そっくりの代用品で補うというもの。外耳や鼻、四肢などの欠損に対し使用する。

代用品で補うため、体そのものを元通りにする医療魔術とは違う分野となる。フラウジア医療魔術研究所は、今回の新魔術を「整形魔術」と命名している。

整形魔術の臨床試験は、患者にかけられている呪いが解呪可能なものであること、呪いがとけるまでの期間のみ代用品を使うことなどの条件を満たした患者へ、本人の同意を得て行われる。

呪いによって治療を受けられない人は、政府の調査で判明しただけでも200万人を超える。差別意識の強い地域では、いまだに被差別種族が奴隷的な扱いを受け、種族の特徴的な部位を切断される事例が後を絶たない。

そういった傷は呪いを付与した刃物で負わされることが多く、解呪にかかる期間も長い。短命種族は治療を受けられないまま寿命を迎えることも多かった。代用品とはいえ体の一部を取り戻せる整形魔術は、心身ともに傷ついた人々の救いの手になる。

エルフ族のFさん(仮名)も、整形魔術の完成を心待ちにしていた一人だ。

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政治ニュース・地面党に“魔法地震”疑惑

先日、ナンデヤ北部一帯を襲った地震について、与党である地面党(じめんとう)による魔法地震(人工地震)だったのではないかという疑惑が拡がっている。

チャンターなどのSNSでは、「人工地震なんて空想科学(ファンタジー)の産物」と馬鹿にする意見が大半だが、信じこむ者もいる。

彼らは傍証として、「地面党は農業関係者や土木関係者など土マナ関連の団体と繋がりが深いこと」、「対立するヒト族の支持が厚い仰山党(ぎょうさんとう)の本部が破壊されたこと」、「近年、地面党以外に政権交代するとすかさず大地震が発生し、それをきっかけに地面党が再び政権を手にする局面が繰り返されたこと」といった理由を挙げている。

この疑惑について、ヒト族の支持が厚い仰山党のシェー委員長は予算委員会で証言を求めた。ヤベー総理が応じたが、証言にあたって宣誓に用いる魔法証紙について、一般的なサンコウニン証紙でよいとする地面党と、嘘をつくと呪いが発動する最高レベルの魔法証紙「ンカンモン」を用いるべきとする仰山党とで意見が割れた。

なお、現政権は「年金開始年齢を種族に関わらず一律65歳とする」という年金改革法の実現を目指しているが、これは地面党最大の支持層であるエルフ族が有利すぎるとして国内外から非難の声が集まっている。

この件で連立を解消した獣党(じゅうとう)とゴブリンの生活が第一からは、地面党が意図的な魔法地震を起こすとは考えづらく、むしろ地面党がTPPなど無理な農政で大地精霊を怒らせたことが原因であるとして、近く農務(ノーム)大臣の不信任決議案を出すと明らかにした。

こうした審議の中でアラソウ財務相が「生きる価値が無いから短命」「特定魔法技術の有無は国防に影響する」「ヒトはゴミのようだ」「被災地でダークエルフがスリーパーセルとしてテロ活動」など不適切な発言を繰り返し、野党だけでなく与党内からも批判の声が上がっている。

被災地では、災害復旧よりも政局を優先する国会に政治不信の目を向けている。

増加する「留年スラム」 止まらない若者の浮世離れ

留年、失踪、転生──学部を4年間で卒業できる大学生が6割に満たないという統計がある。

特に留年した学生たちが地下のダンジョンに作りあげる「留年スラム」は、社会問題として近年注目を集めている。

名門として知られる王立アトス大学もまた、「留年スラム」を多く抱える大学の一つ。筆者は所在地の秘密を守る条件で、アトスにおける留年スラムへの特別取材を許された。

「ここには何でもある。単位以外はね」

リム・メイ君は、魔法デザイン学部の5回生だ。昨年の春に留年が確定して以来、ずっとこのダンジョンの外には出ていないという。彼の言葉通り、薄暗いはずの迷宮には人工太陽が浮かび、乱雑に立ち並ぶ出店は活気に満ちていた。衣服に食事、娯楽さえもが留年スラムには流通している。

「時空が歪んでいるんです。気付いたら留年していました。ひどい話ですよ」

ユグドラうどんを立ち食いしながら、リム君の声に怒気が滲んだ。アトス大学周辺では、魔法実験の影響により実際に時間の流れが歪むことがある。彼もまた、そうした歪みの犠牲者なのかもしれない。

(△留年スラム居住区。地上から流れ着いた廃品が活用されている)

「卒業研究とか、就活とか、ピンとこないし。いっそ、現世を離れちゃってもいいかなって」

そう語るのは、儀式学科36回生のパパゼ・スパリボル君。30年以上の留年歴を誇る重鎮だ。身体に青色の炎を纏っている彼は、昨年度からこのスラムで精霊転化の儀式を始めたという。

「授業がない分、儀式に集中できるんだ。もう存在位相の7割は精霊界に移しちゃってるよ」

パパゼ君の笑顔は半透明で、彼の肉体を通して背後の景色が垣間見えた。

熱くないんですか。そう尋ねようとした次の瞬間には、パパゼ君の姿は煙のように消えていた。それからパパゼ君のことをスラム中に聞いて回ったが、一人として彼のことを覚えている留年生はいなかった。

現代の若者文化は、確実に浮世離れを始めている。魔法学生の闇は深い。

(追記:本記事の公開直後、当該スラムは大学当局の安全衛生委員会・突撃司書隊の手で完全撤去された)

「名付けの儀式」 原始の魔法忘れるべからず

暗闇から誰かが覗いている気がする。そう、あなたの部屋の戸棚の、ちょっとした隙間から…視線があなたを見つめている…。

「それはいたずら妖精の仕業だよ」

現代の魔法使いは軽く笑い飛ばすだろう。だが、その行為こそが原始的な魔法の一つ「名付けの儀式」である…ということはご存知だろうか?

人は夜を恐れ、暗闇から現れる者たちを恐れた。それらには「名前」がなかった。

それは何者なのか。
なぜ現れるのか。
それはどんなものなのか。

人間たちは「よくわからないもの」を恐れた。それらが暗闇からにじり寄り、這いでてくることを恐れたのである。そこで行われたのが、恐れ…恐怖の正体への「名付けの儀式」、原始的な魔法のひとつだったのだ。

誰もいないのに、突然すねをくすぐる感覚がある…それらは「すねこすり」と名付けられた。

宵闇の森の中、暗がりから恐ろしい狼の遠吠えをきいた…それらは「送り狼」と名付けられた。

夜の墓場、うすぼんやりと明るい火の玉がゆらり、ゆらりと浮かんでいる…それらは「狐火」と名付けられた。

これらは東の国で名付けの儀式によって生まれた妖怪たちの話である。だが、不思議なことに、世界各地でも「よくわからないもの、現象」に対して名付けの儀式が行われたのが確認できるのだ。

悪いことが起きるのは悪霊のせい。
腰が痛むのはどこかの魔女の呪いのせい。
誰かが睨んでいる気がするのはいたずら妖精のせい…。

人々は「よくわからないもの」に「名を付ける」ことで、恐怖に打ち勝ってきた。名を付けられたものたちは妖怪として、魔法生物として、あるいは魔法現象として扱われ、恐れられることは少なくなっていった。名前のあるものは(直接触れられなくとも)そこに存在する「何か」である、と定義づけられているからだ。

だが、忘れないでほしい。

人間たちが名付けたのは世界の一部分だけだということを。まだ名付けられていない「得体のしれないもの」が存在することを。あなたを暗闇から見つめる名もなき「何か」を、忘れてはいけない。

「理解したつもり」でそれらに立ち向かうのは賢者ではなく、ただの愚か者なのだから。

「恐れよ! 怖れよ! 畏れぬ者どもは月夜に溺れ、底抜けの闇へと墜ちていくのだ!」
(歌劇フォルトゥーナ第四幕 アン・ターシャ訳より)

ユエル悪魔生贄条約改正に合意 『生贄』の範囲拡大へ

およそ20年の間、悪魔界にて渉外大臣カラクス・モーム氏との会談を続けていたユエル黒魔術集会交渉チーム『小さな鍵』が、本日未明悪魔界より帰国。「生贄は魂あるものでなければならない」とされていたユエル悪魔生贄条約の改正に合意したことを発表した。

「黒魔術」と一般に呼称される魔術には様々なものがあるが、その中でも特に有名なものが、相応の生贄を捧げることで悪魔を呼び出し、彼らの助力を乞う召喚魔術である。

悪魔は強い力を貸し与える代わりに、人や動物の魂を喰らうものが多い。軽率に悪魔召喚に手を出した魔法使いたちが、徐々に魂を蝕まれ破滅していく事件は古今東西後を絶たない。

悪魔を召喚し契約を交わす際は通常、自らの願いに相応する『生贄』を捧げさえすれば術者の魂にまで手を出されることはない。しかしこれまでの条約には、その『生贄』は魂あるものでなければならないとする制約があった。昨今は動物愛護の観点からそれらを準備することが難しくなっており、術者が魂を悪魔に奪われる事件のほとんどは、生贄を他のもので代用したことが原因となっている。

そこでユエル黒魔術集会ではウィリアム暦136年、生贄の制約を定めた条約を改正するための交渉チーム『小さな鍵』を結成。集会に所属する最高峰の黒魔術師たちの力を集結して門を開き、悪魔界への訪問、交渉を実現した。長引く会談の様子に集会内では不安の声もあがっていたが、交渉チームの全員が五体満足、精神の安定した状態での帰還となったことに、集会の会員からは喜びの声が上がっている。

この条約改正により新たに生贄とすることができるようになったものは、質の良い果実、純度の高い魔力鉱石、魂を込めて制作された芸術品など。サンプルとして『小さな鍵』が持ち込んだ物品の中では、極東のマンガ本が特に好評であったという。

『小さな鍵』代表シェバート・レアム氏は「歴史的にも大変意義のある会談となった。これにより、黒魔術は国内に広く普及していくことになるだろう。私自身も、黒魔術のさらなる発展のため尽力していきたい」と述べた。

また、カラクス渉外大臣はこの会談の結果について「古くからの制約を撤廃することには反対意見も多くあるだろう。だが、時代は絶えず変化している。我々のあり方もまた柔軟に変化していくべきだ」と述べた上で「なお、どうしても納得ができないという者は私を倒しに来るといい。私の心臓を手に入れた者には渉外大臣の椅子をくれてやる」と悪魔界内の反対派を牽制する姿勢をとった。

改正されたユエル悪魔生賛条約は次の新月の日から施行開始となる。黒魔術が安全・安心な魔術として世界に広がる日も近いのかもしれない。

不幸な使い魔を出さないために ファミリアシェア・ハウス誕生

あなたにとって、使い魔とはどのような存在であろうか。

仕事に欠かせないワークパートナー。
家族や友人、恋人にも言えない秘密を打ち明ける相手。

恐らくさまざまな回答があり、その存在について一括りで説明をするのはとても難しい。

しかし、どの主人使い魔の関係で共通して言えることは、二者の間には確固たる信頼関係が結ばれており、あなたが惜しみない愛情を彼らに注いでいるということだろう。

それでも、世の中には主人に恵まれなかった使い魔たちが存在し、その数は決して少なくはない。

そんな彼らの行く末は悲劇的であることが多く、使い魔の野生化、衰弱による消滅は今世の大きな問題のひとつでもある。

今回そんな問題にいち早く取り組み、新たなサービスを展開したのは、近年使い魔業界に台頭してきた企業ファミトピアである。

今回、ファミトピアのCEOでもあるリリアリス・ヴィアン氏は、新たな業態として“ファミリアシェア・ハウス”を展開することを発表した。

同代表によればこのハウスは、主人たちに捨てられてしまった使い魔たちのシェルターと、魔法使いの住む住居を併合したサービスであるとのことだ。

今回建設されたハウスは4階建てとなっており、1階はシェルターと共有スペース、住居部分は2階~4階となっており各フロアに15戸設置されている。

今回のハウスでは同社が保護している使い魔のうち、有翼類を含む小型有毛種およそ10種、計50体ほどが暮らしている。

彼らは保護されたあと、FHT(Familiar Health Technican、いわゆる“使い魔看護師”)による十分な身体的、精神的ケアを受けて同ハウスで暮らしている。

リリアリス氏によれば、特に小型有毛種の使い魔たちは一度契約を結ぶと誰かに世話をしてもらうことに慣れてしまうため、契約を解除し、回復を待って自然シェルター等に譲渡しても自力で生きていくのが難しいという。

契約を解除された使い魔たちが新たな主人の下で第二の使い魔生を送れるようにとの思いで、ハウスは設立された。

設立に当たって、リリアリス氏は次のように述べている。

近年、身勝手な主人たちの都合により、不幸な最期を迎える使い魔は決して少なくありません。

弊社はそのような使い魔たちを一体でも多く救いたいという思いから、今回の“ファミリアシェア・ハウス”を誕生させました。

なお、シェルター内の使い魔は入居者であれば契約なしでパートナーとして行動できるため、複雑な手続きなしでマッチングが行える。相性のいい使い魔がいれば引き取り、専属契約を結ぶことも可能だ。

ただし、契約に当たっては同社による厳しい審査が行われる。審査基準を満たさない場合は専属契約を結べない。

今回発表されたハウスには入居希望者の問い合わせが殺到しており、倍率はおよそ150倍とみられている。反響を受け、同社では同じ形態のシェア・ハウスの建設に向けて動いていると発表した。

また、今後について、竜型種、大型獸種に向けたハウスも展開して行きたいとリリアリス氏は会見の場で述べた。

この度発表されたファミトピアによる新たな試みは、使い魔放棄問題の解決策として旋風を巻き起こすことが出来るのか、今後の動向が楽しみである。

 

ファミトピア(Famitopia)···

社名にもなってている、『ファミトピア』は、企業理念でもある、使い魔(familiar)にとっての理想郷(Utopia)提供するとの思いから、CEOリリアリス・ヴィアン氏により名付けられた。

王女に熱愛発覚! 対立関係にある魔法協会関係者と

当新聞社独自の取材で、ソフィア王国の第五王女ライア姫(18)と魔法協会会長の息子である第一級魔術師アイル=ドーン氏(20)の熱愛が発覚した。

二人は昨年行われた新魔法技術発表会にて出会ったのがきっかけで、そこから交際がはじまったという。

一見微笑ましいお二人に見えるが、実は問題だらけ。

ソフィア王国といえばアイシュケイン山脈の麓にある小国ではあるが、昔から優秀な魔術師を輩出していることでも名を知られたな国だ。

例えば15年前に起きた同国の戦士の半数を失ったとされるナム=ロックの反乱で、反乱軍の半数以上と首謀者であるナム=ロックを倒した人物は、ソフィアの英雄と呼ばれるキャップ=エイツエイン。他国でも名が知られている特一級魔術師だ。

それだけに、ソフィア国内では魔法協会の力が強い。王参加の下行われる王国会議での魔法協会会長の発言力も強く、会議参加者である貴族の中で会長を支持する声は多い。もちろん王国側がそれを良く思うはずもなく、いわば王宮と魔法協会は長年対立関係にある。王に近い側近によると、いつ国内で内紛が起きてもおかしくない状況だという。

そこで発覚した今回の熱愛。

これは二人だけの問題ではなく、政治的問題も多分に抱えている。

また二人が会話をする際に、王宮内では使用を禁止されている水晶を使っていたことが処罰の対象となり、それもまた事態を複雑にさせている。

今回の件に関して王宮からの発表はなく、当新聞社の記者がアイル氏にインタビューを申し込んだが、いまのところ返答はない。

はたしてこの恋の行方はどうなるのであろうか。

お二人が幸せになることを祈るばかりである。

200年間主人を待ち続けた猫、安らかに眠る

広大な湿地と豊かな森に囲まれた穏やかな町、グリーンヒール。先日、この町で長年暮らした1匹の黒猫が静かに息を引き取った。名前はオル。251歳の大往生だった。

オルは200年前まで、ある魔女の使い魔として飼われていた。鍵しっぽで全身黒く、更に左目が潰れたオルのことを魔女はいたく気に入り、自分の家へ招き入れた。当時を知る貴重な魔法使いであるジェイドさん(220歳)は「オルの主人は、良家に生まれたがうまく魔法が使えずに捨てられた、寂しい人でした。彼女が町の人と交流することはありませんでしたが、オルと暮らし始めてからは毎日楽しそうにしていたのを覚えています。しかし彼女の一族が彼女に政略的な婚約をさせるために連れ去ってしまってからは、オルもあの家も色を無くしたようでした」と当時の様子を語った。

ジェイドさんによると、オルは主人がいなくなった後も主人と共に暮らした家に留まり続け、やがて家が風化し取り壊されてもその場を動かなかったという。

そんなオルが主人と再開を果たしたのは、あまりにも切ない場所だった。

グリーンヒールに住む魔法使い達がオルのためにと魔女の一族の家を探り、やっと探し当てた住処は既に更地となっていた。

「90年前、子供のドラゴンばかりを狙い密猟を繰り返したことで怒りを買って、ドラゴンたちに滅ぼされた一族がオルの主人の生まれだったんです。調べたところ、オルの主人の名前はアルタリアさんといって、生まれつき魔力の乏しい中、逃げ遅れた子供たちを守るため最後まで戦っていたようです」

そう語るジェイドさんの瞳には涙が浮かんでいた。

ジェイドさんらグリーンヒールの住人は話し合いの末、オルをアルタリアさんの墓まで連れていくことにした。年老いたオルを墓の傍にそっと降ろすと、今まで聞いたことのないような声で鳴いたという。

オルはアルタリアさんの墓を守るように1週間ほど墓標に寄り添い、その後役目を果たしたように静かに息を引き取った。この切なくも優しいニュースに、魔法界中から「どうかアルタリアさんの隣でオルを眠らせてあげてほしい」との声が殺到し、オルの墓が建てられる運びとなった。

これに伴い、グリーンヒールの町長であるフルール・キャンベル町長は「勇敢で心優しいアルタリアさんと、その優秀な使い魔のオルを誇りに思う。この出来事はこれから先もグリーンヒールで語り継がれていくだろう」と語った。

オルの墓は来月下旬を目処に完成する予定だ。

人権侵害か? 企業による魔力搾取の是非

背広に腕を通し、通勤電車に揺られ、席に着けば魔力帯を履く。

一般的なサラリーマンによく見る朝の風景だが、そんな風景も近く形を変えるかもしれない。

デスクワーク系のサラリーマンではよく見られる「会社支給の魔力帯を履く」という行為が人権侵害に当たるのでは? という声があがり始めているのである。

会社勤めでない読者のために説明すると、魔力帯とはいわゆる「魔力抽出装置」であり、これによって企業は運営に必要な魔力を得ている。

しかし、高魔力児の誕生増加に伴う企業専属魔術師の増加や、「魔力は生命の力であり、それは家族や己の人生に使うべき」といった価値観の変化によって、「専属魔術師以外に魔力の提出を求めるのは搾取なのではないか?」という考え方が若者の間で広まっている。

従来からの伝統を重んじる企業からは「会社は家族であり、家族を助けるのは当然ではないか」という声もあがっているが、一部では若者に賛同して献魔法式で魔力を集める企業も出始めている。

また、専属魔術師互助会からは「たしかに一般人よりも魔力換算能力は高いが、専属魔術師も人であり、高負荷を強いれば共倒れになってしまう。企業に対する専属魔術師の数は足りているとは言えず、企業との共存を目指していきたい」との声明を出している。

公を取るか私を取るか、判断を誤ればどちらも失うというのが人の世の常である。

さらに思い通りのモノづくりへ――新技術の3D魔素プリンター

昨今、モノづくり界隈を賑わせている魔道具製造機器『3D魔素プリンター』をご存知だろうか。

これまでは丹念に魔力を注ぎ込んで少しずつ手加工をするか、工業用の大仰な機械に大量の魔力を注ぎ込むことでしか成し得なかった魔道具の作成。

それをご家庭のPCのみで作成できるようになるのが『3D魔素プリンター』だ。自前の魔力すら必要がなく、簡単な魔道具ならばものの30分ほどで完成する。

また、作成後に魔力を抽出すればただのオブジェクトにすることもでき、その人気に拍車をかけている。

そんな底の見えない3D魔素プリンターだが、昨日3D魔素プリンター製造会社ライフドリーマーズが新たなプリンター技術の開発に成功したと発表した。

特殊な魔力を液体に注ぎ、安定化させた魔素インク。それをゴーレムにも使われる魔親和性の高い粘土に混ぜ込むことで立体的な魔道具の印刷を出来るようにしたのが3D魔素プリンターである。

しかし、絞り出し積層していくという構造から、絞り口より小さい・細かいのスケールでの作成は不可能だった。

そこでライフドリーマーズ社が開発したのが『魔力の粉末化技術』だ。同社は一旦生成した魔素インクを、純度98%の魔力の粉末にすることに成功した。

これにより粉末を足した魔素インク内の魔力含有量を従来の7割も上昇させることが出来る。更にその余剰魔力を使って粘土の構造体に干渉する魔法陣を発動させ、従来よりも少ない粘土でより高密度で繊細なモデルの作成が可能になった。

本日発売の新型プリンターはこの技術に対応しており、新型リフィルも同時発売される。

また、ライフドリーマーズ社はこの魔力の粉末化技術を他の産業にも活用できないかと考えている。社のこれからの活躍にも注目したい。