コラム:古代呪文を読み解く【第1回】ゼンベイガナイタ

何をどうすれば、他者の興味を引けるのだろうか。

ものづくりに携わる者であれば、一度は考えたことがあるのではないだろうか。

価値を理解してもらえる唯一に出会うだけでもいい、という方もいるだろう。

しかしその”唯一”に出会うためにも、大勢の元へ届けなければならない。どんなに素敵な発明であっても、無言で渡してしまっては受け取った者は首を傾げて終わってしまう。けれど大勢に懇切丁寧に説明をする手間も時間も魔道具もない、と頭を抱える魔術師もいることだろう。

そんなときは、先人の知恵を借りようではないか。古い呪文を使ってみるのも、気分転換になるかもしれない。

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Wicked、新作カジュアルドレス発表

“Wicked”が新作を発表しました。

とこしえに、よこしまに」をコンセプトとする“Wicked”は、若い魔女を中心にじわじわと人気が広がり始めているファッションブランド。

今回発表されたドレスは同ブランドのシンボルであるホリゾンタルストライプと大きな花柄を大胆に組み合わせたもので、高速飛行時にもラインが崩れにくい縫製が特徴です。

さらにヒップ部分の内側に新開発の条件起動魔法陣が刺繍されており、箒にまたがることでエア・クッションの魔法が発動して座りやすくなるとのこと。

価格は銀貨4枚、王都の直営店舗ほかで今月下旬販売開始予定です。

保護施設スタッフ、魔法生物を横流しか

ギョット県立魔法生物保護施設(以下『保護施設』)の従業員、ケイパー・アヴィド容疑者(33)が、保護飼育中の魔法生物数十体を複数の市場に横流ししていたことが、捜査関係者への取材で明らかになった。ギョット県警は、アヴィド容疑者が数年に渡り犯行を続けていたと考え、捜査を進めている。

「一定周期で生じる『民族料理ブーム』による食材としての魔法生物の需要に目を付け、犯行に及んだのではないか」と、ウロル国立メルカヒルド大学経済学部の准教授であるメニエ・ゴルトミュンツェ氏は分析する。

この捜査によって、能力を使って消失・脱走した生物に対する保護施設の杜撰な対応が明るみに出た。また、事件を受け、県内各地で魔法生物愛護団体によるデモ活動が発生しており、全国的に波及することを懸念する声もあがっている。

政治ニュース・地面党に“魔法地震”疑惑

先日、ナンデヤ北部一帯を襲った地震について、与党である地面党(じめんとう)による魔法地震(人工地震)だったのではないかという疑惑が拡がっている。

チャンターなどのSNSでは、「人工地震なんて空想科学(ファンタジー)の産物」と馬鹿にする意見が大半だが、信じこむ者もいる。

彼らは傍証として、「地面党は農業関係者や土木関係者など土マナ関連の団体と繋がりが深いこと」、「対立するヒト族の支持が厚い仰山党(ぎょうさんとう)の本部が破壊されたこと」、「近年、地面党以外に政権交代するとすかさず大地震が発生し、それをきっかけに地面党が再び政権を手にする局面が繰り返されたこと」といった理由を挙げている。

この疑惑について、ヒト族の支持が厚い仰山党のシェー委員長は予算委員会で証言を求めた。ヤベー総理が応じたが、証言にあたって宣誓に用いる魔法証紙について、一般的なサンコウニン証紙でよいとする地面党と、嘘をつくと呪いが発動する最高レベルの魔法証紙「ンカンモン」を用いるべきとする仰山党とで意見が割れた。

なお、現政権は「年金開始年齢を種族に関わらず一律65歳とする」という年金改革法の実現を目指しているが、これは地面党最大の支持層であるエルフ族が有利すぎるとして国内外から非難の声が集まっている。

この件で連立を解消した獣党(じゅうとう)とゴブリンの生活が第一からは、地面党が意図的な魔法地震を起こすとは考えづらく、むしろ地面党がTPPなど無理な農政で大地精霊を怒らせたことが原因であるとして、近く農務(ノーム)大臣の不信任決議案を出すと明らかにした。

こうした審議の中でアラソウ財務相が「生きる価値が無いから短命」「特定魔法技術の有無は国防に影響する」「ヒトはゴミのようだ」「被災地でダークエルフがスリーパーセルとしてテロ活動」など不適切な発言を繰り返し、野党だけでなく与党内からも批判の声が上がっている。

被災地では、災害復旧よりも政局を優先する国会に政治不信の目を向けている。

増加する「留年スラム」 止まらない若者の浮世離れ

留年、失踪、転生──学部を4年間で卒業できる大学生が6割に満たないという統計がある。

特に留年した学生たちが地下のダンジョンに作りあげる「留年スラム」は、社会問題として近年注目を集めている。

名門として知られる王立アトス大学もまた、「留年スラム」を多く抱える大学の一つ。筆者は所在地の秘密を守る条件で、アトスにおける留年スラムへの特別取材を許された。

「ここには何でもある。単位以外はね」

リム・メイ君は、魔法デザイン学部の5回生だ。昨年の春に留年が確定して以来、ずっとこのダンジョンの外には出ていないという。彼の言葉通り、薄暗いはずの迷宮には人工太陽が浮かび、乱雑に立ち並ぶ出店は活気に満ちていた。衣服に食事、娯楽さえもが留年スラムには流通している。

「時空が歪んでいるんです。気付いたら留年していました。ひどい話ですよ」

ユグドラうどんを立ち食いしながら、リム君の声に怒気が滲んだ。アトス大学周辺では、魔法実験の影響により実際に時間の流れが歪むことがある。彼もまた、そうした歪みの犠牲者なのかもしれない。

(△留年スラム居住区。地上から流れ着いた廃品が活用されている)

「卒業研究とか、就活とか、ピンとこないし。いっそ、現世を離れちゃってもいいかなって」

そう語るのは、儀式学科36回生のパパゼ・スパリボル君。30年以上の留年歴を誇る重鎮だ。身体に青色の炎を纏っている彼は、昨年度からこのスラムで精霊転化の儀式を始めたという。

「授業がない分、儀式に集中できるんだ。もう存在位相の7割は精霊界に移しちゃってるよ」

パパゼ君の笑顔は半透明で、彼の肉体を通して背後の景色が垣間見えた。

熱くないんですか。そう尋ねようとした次の瞬間には、パパゼ君の姿は煙のように消えていた。それからパパゼ君のことをスラム中に聞いて回ったが、一人として彼のことを覚えている留年生はいなかった。

現代の若者文化は、確実に浮世離れを始めている。魔法学生の闇は深い。

(追記:本記事の公開直後、当該スラムは大学当局の安全衛生委員会・突撃司書隊の手で完全撤去された)

企画展「もしも魔法がなかったら」開催

パレンティア王国国立博物館(写真)が16日、大規模企画展「もしも魔法がなかったら‐テクノロジーの永遠‐」を開催した。

同企画展はパレンティア王国内外の著名なアーティストを招き、共通テーマとして「魔法のない世界」を掲げ、制作物を発表した。

作品は魔法の対概念とされている「科学」を取り扱ったものが多い。精霊の力や魔力を使わず人工的な力でモーターを回す機械や、すぐ隣にいる妖精を視認せず、電気の力で動くデバイスを見つめ続ける人間の絵等が展示されている。

「充分発達した魔法は、科学と見分けがつかない」魔法工学の権威であるアーサー氏はかつてこう語った。科学は魔法と違い、自らに魔力がなく、術式を理解しない者でもボタン一つで利便性を享受することができる。しかし、発展を続ける現代の魔法も、術式の簡略化や素材の保存性の向上などでその利便性は多くの人々にいきわたるようになってきている。

テクノロジーの永遠は、いつか魔法の神秘をも内包していくのかもしれない。

初日に企画展を見学した来場者は、「魔法がなく、精霊もいない世界なんてつまらない」「この広い世界のどこかには、魔法のない場所があるのかも」「魔法がなければ、人は魔法使いの古いしきたりや家柄に縛られることなく、自由に職業や住む場所を選ぶことができるだろう」などのコメントを寄せた。

治療魔法と新たな可能性「再生魔法」

さて、みなさんは治療魔法はご存知ですか?

治療魔法は、

  • 傷の修復
  • 炎症抑制

の2つが主な目的で使われる魔法です。

しかし、この魔法では命に関わるような重大な怪我には対応しきれないという弱点があります。

その弱点の克服のため、昨今新たな魔法の研究も進められています。

魔法の名前は「再生魔法」。

今回は治療魔法との差異も含めて説明していきます。

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「名付けの儀式」 原始の魔法忘れるべからず

暗闇から誰かが覗いている気がする。そう、あなたの部屋の戸棚の、ちょっとした隙間から…視線があなたを見つめている…。

「それはいたずら妖精の仕業だよ」

現代の魔法使いは軽く笑い飛ばすだろう。だが、その行為こそが原始的な魔法の一つ「名付けの儀式」である…ということはご存知だろうか?

人は夜を恐れ、暗闇から現れる者たちを恐れた。それらには「名前」がなかった。

それは何者なのか。
なぜ現れるのか。
それはどんなものなのか。

人間たちは「よくわからないもの」を恐れた。それらが暗闇からにじり寄り、這いでてくることを恐れたのである。そこで行われたのが、恐れ…恐怖の正体への「名付けの儀式」、原始的な魔法のひとつだったのだ。

誰もいないのに、突然すねをくすぐる感覚がある…それらは「すねこすり」と名付けられた。

宵闇の森の中、暗がりから恐ろしい狼の遠吠えをきいた…それらは「送り狼」と名付けられた。

夜の墓場、うすぼんやりと明るい火の玉がゆらり、ゆらりと浮かんでいる…それらは「狐火」と名付けられた。

これらは東の国で名付けの儀式によって生まれた妖怪たちの話である。だが、不思議なことに、世界各地でも「よくわからないもの、現象」に対して名付けの儀式が行われたのが確認できるのだ。

悪いことが起きるのは悪霊のせい。
腰が痛むのはどこかの魔女の呪いのせい。
誰かが睨んでいる気がするのはいたずら妖精のせい…。

人々は「よくわからないもの」に「名を付ける」ことで、恐怖に打ち勝ってきた。名を付けられたものたちは妖怪として、魔法生物として、あるいは魔法現象として扱われ、恐れられることは少なくなっていった。名前のあるものは(直接触れられなくとも)そこに存在する「何か」である、と定義づけられているからだ。

だが、忘れないでほしい。

人間たちが名付けたのは世界の一部分だけだということを。まだ名付けられていない「得体のしれないもの」が存在することを。あなたを暗闇から見つめる名もなき「何か」を、忘れてはいけない。

「理解したつもり」でそれらに立ち向かうのは賢者ではなく、ただの愚か者なのだから。

「恐れよ! 怖れよ! 畏れぬ者どもは月夜に溺れ、底抜けの闇へと墜ちていくのだ!」
(歌劇フォルトゥーナ第四幕 アン・ターシャ訳より)

人気デュオグループ 発表楽曲に「トキシック魔法」の疑惑

200年もの間、音楽界を牽引し続けてきたスーパーデュオグループ『アルマティ』に衝撃的な疑惑が持ち上がった。

『アルマティ』と言えば、シルヴァン・ジルベール氏(280歳)とラズリー・クロライト氏(260歳)で構成された世界的に人気を誇る男性デュオグループだ。

2人はその高い歌唱力とエルフ族特有の端正な容姿で人気を博して以来トップを走り続けてきており、新曲が発売される度にパンデミック的な盛りあがりを見せてきた。

これまでスキャンダルで市井を賑わすことの無かった2人ではあるが、この度彼らにある疑惑が囁かれている。

その内容は、『トキシック魔法を用いた楽曲の販売』だ。

彼らのデビューから今日まで発表されてきた楽曲のほぼすべてに、トキシック魔法が用いられていたというのである。

音楽にトキシック魔法を使う手法は、古においては作曲者や歌手が人気を得るために用いられてきた。近年ではマインドコントロールに該当するとの見解が有識者間でなされ、音楽界に関わらずあらゆる方面での使用が禁止されている。

今回の疑惑が事実であるのならば一大スキャンダルではあるが、『アルマティ』の両名と所属事務所の『シュミット』は沈黙を保ったままである。

果たして真相はいかなるものなのか。1日も早い説明が求められる。

ユエル悪魔生贄条約改正に合意 『生贄』の範囲拡大へ

およそ20年の間、悪魔界にて渉外大臣カラクス・モーム氏との会談を続けていたユエル黒魔術集会交渉チーム『小さな鍵』が、本日未明悪魔界より帰国。「生贄は魂あるものでなければならない」とされていたユエル悪魔生贄条約の改正に合意したことを発表した。

「黒魔術」と一般に呼称される魔術には様々なものがあるが、その中でも特に有名なものが、相応の生贄を捧げることで悪魔を呼び出し、彼らの助力を乞う召喚魔術である。

悪魔は強い力を貸し与える代わりに、人や動物の魂を喰らうものが多い。軽率に悪魔召喚に手を出した魔法使いたちが、徐々に魂を蝕まれ破滅していく事件は古今東西後を絶たない。

悪魔を召喚し契約を交わす際は通常、自らの願いに相応する『生贄』を捧げさえすれば術者の魂にまで手を出されることはない。しかしこれまでの条約には、その『生贄』は魂あるものでなければならないとする制約があった。昨今は動物愛護の観点からそれらを準備することが難しくなっており、術者が魂を悪魔に奪われる事件のほとんどは、生贄を他のもので代用したことが原因となっている。

そこでユエル黒魔術集会ではウィリアム暦136年、生贄の制約を定めた条約を改正するための交渉チーム『小さな鍵』を結成。集会に所属する最高峰の黒魔術師たちの力を集結して門を開き、悪魔界への訪問、交渉を実現した。長引く会談の様子に集会内では不安の声もあがっていたが、交渉チームの全員が五体満足、精神の安定した状態での帰還となったことに、集会の会員からは喜びの声が上がっている。

この条約改正により新たに生贄とすることができるようになったものは、質の良い果実、純度の高い魔力鉱石、魂を込めて制作された芸術品など。サンプルとして『小さな鍵』が持ち込んだ物品の中では、極東のマンガ本が特に好評であったという。

『小さな鍵』代表シェバート・レアム氏は「歴史的にも大変意義のある会談となった。これにより、黒魔術は国内に広く普及していくことになるだろう。私自身も、黒魔術のさらなる発展のため尽力していきたい」と述べた。

また、カラクス渉外大臣はこの会談の結果について「古くからの制約を撤廃することには反対意見も多くあるだろう。だが、時代は絶えず変化している。我々のあり方もまた柔軟に変化していくべきだ」と述べた上で「なお、どうしても納得ができないという者は私を倒しに来るといい。私の心臓を手に入れた者には渉外大臣の椅子をくれてやる」と悪魔界内の反対派を牽制する姿勢をとった。

改正されたユエル悪魔生賛条約は次の新月の日から施行開始となる。黒魔術が安全・安心な魔術として世界に広がる日も近いのかもしれない。