アーティセンナ美術館で絵画魔法展開催 9月20日から

アーティセンナ美術館の特別展として絵画魔法展が開催されることが発表された。

絵画魔法の展示は、基本的にレイラインの影響が少ない郊外で行われる。首都アーティセンナでの絵画魔法の展示は500年ぶり2度目。

開催にあたり、展示される絵画は額縁による魔法強度の調整と『花の帽子飾りをつけた若き魔女』によるカウンセリングを受け、当日の状態によっては展示内容を変更する。

展示内容が確約できない点について、『花の帽子飾りをつけた若き魔女』はこのように語った。

前回の絵画魔法展では、観賞されることに慣れない絵画魔法がパニックを起こし、魔法暴走を起こして死傷者を出してしまった。魔法使いがそうであるように、絵画の性格も様々。展示される、観賞されることを第一の喜びとする絵画を集め、万全の状態で臨むつもりですが、場合によっては展示の中止、中断に踏み切る必要もあります。

今回の展示では、『花の帽子飾りをつけた若き魔女』自身も展示される予定。人と絵画の対話をコンセプトとした絵画魔法らしく、観覧者との対話も展示のひとつとなる。

他、先日絵画魔法化した『猫の集会』や、レン・パーティカンの連作『舞踏』が展示される予定。いずれも絵画猫との触れ合いや、幻想魔法を利用した空間を見せる展示となり、絵画魔法ならではの内容となる。

中でも注目されるのは『舞踏』シリーズ。『赤の舞踏』が起こした魔法暴走、『花の舞踏』の真作報道と話題の多かった彼女たちだが、絵画魔法展では本来注目されるべき名画としての美しさを見せてくれるだろう。

絵画魔法展の開催は9月20日から1ヶ月間。状況によって、入場規制や展示期間の短縮が行われる場合がある。

気まぐれ魔導書レビュー(オープンチャット編)

お久しぶりです!

 

マジックマーケットで死にかけていた瑞々です!

 

今回はやばかったですね……来年の世界魔法選手権開催に伴う工事で、会場を半分近く閉鎖。

 

代わりに会場のはずれに疑似拡大空間を展開してブースを置きましたが、それでも会場体積比4割減。

 

結果、3日間開催から5日間開催へ。

 

既存会場は設備改良があり、魔術導線も改良されかなり過ごしやすかったですが、問題は疑似拡大空間の方。

 

疑似拡大とか言っても、結局異空間であることには変わりないですからね、あれ。

 

下手すると混沌に呑まれかねません。

 

そして、開催期間が延びればその分参加者も増えるわけで、待機列は相も変わらずつらい。

 

次回には改善されてるといいですがね……

 

 

さて、それでは今日の本題。

 

オープンチャット、皆さん始めましたか?

 

知らない方のために説明すると、魔法メッセージでご存じLIMELINEがつい先日始めたばかりの新サービスです。

 

チャットルームのリンクを相手に渡すだけで招待できる、チャットルームごとにハンドルネームやプロフィールを設定できる……など、何だか古の掲示板をほうふつとさせるようなサービスになっております。

 

それでいて、LIMELINEですから知らない人はいない。

 

自分もさっそくいくつかのチャットルームに入ってみました。

 

種族、年齢、職業、出身地などのような区切りのものから、趣味やイベントごとのルーム、果てはセミナー系の少々いかがわしいようなルームまであります。

 

「ルームを宣伝するルーム」とか、「ルームを管理するルーム」とかまで出てきて、何でもありの予感。

 

LIMELINEですから気軽に始められますし、しっかり管理されて活発なルームを選べば、結構楽しいです。キリ番とか踏んでみたい。

 

ただ案の定、荒らし炎上が大量発生してますね……

知ってる範囲だと魔法理論を学び始めたばかりの子供が詠唱をルームに書き込んで強制発動させ魔法事故につながったりとか。メッセージ連投でルームを破壊したりとか。

あと多いのが明らかな出会い系ってやつですね。しかも種族、年齢、性別の詐称がひどい。

これの何がまずいかって、子供が冗談半分で書き込んだことを若者が本気にしちゃうんですね。エルフの100歳だと思ったロリコン気味の男子が会いに行ったら人間の100歳だったりとか。

 

魔導書関連で行くと、内容を勝手に書き込んでセーフアウトの大騒ぎになったりとか。

批評しあってリアルファイトに発展したりとか。

 

 

あまりにひどいんで、LIMELINE側で規制をどんどん強化しています。

とりあえずサービス開始直後にルーム検索機能を停止。

ルーム管理人への権限強化。

悪質アカウントへの凍結対応。

 

結構一般のニュースでも話題に出た後なんで、イメージ低下につながらないといいのですが。

 

 

魔導書読みの観点からいうと、気軽な交流ツールが増えたなという感じです。

特に同人作家の皆さんとか喜びそうで。じきにオープンチャット魔導書とかできるんじゃないでしょうか。

 

 

さて、せっかくなので自分もルームを立ててみました。

オープンチャット「魔導書情報共有ルーム(byまほおん)」に招待されました。下のリンクから参加できます。
https://line.me/ti/g2/CPbyYr8XvuUvHG0SfLsi-g

 

自分が魔導書に関する情報を発信するほか、皆さんからの情報収集も兼ねておりますので、是非皆さま参加して頂けると嬉しいです、というか普通に魔導書関連の雑談をしていただいて結構です!

 

それではまた!

100歳以下の魔法事故、過去最悪の件数に

 魔法統計庁は先週末、魔法事故に関する半期の統計調査を公開した。それによれば、100歳以下の魔法事故の報告件数が過去10年間で最も多くなっていた。さらに、魔法事故は大抵の場合魔法使いの習熟不足で起こるので、報告に登らずに隠蔽されることも少なからずあることから、実際の件数はさらに多いと見られる。

魔法事故の年齢分布  青が100歳以下

 事故の内容としては、「ゴーレム製造中に術式が解けて素材の下敷きになる」が最も多く、「魔獣の召喚後調伏に失敗して襲われる」がそれに次いで多い。一方で製造・召喚系の魔法事故による死亡者数は年々減少しており、魔法事故全体を見ると住居・工房の破損の被害の方が多くなっている。

 これについて魔法事故鑑定人のポテト・フライヤー氏は以下のような見解を述べている。

 

「魔法学校のカリキュラム変更によって、攻撃魔法偏重の教育が改められた。結果回復魔法の質が100歳以上の世代が学生だった時よりも高まっている。

 以前なら死に繋がっていたような怪我も瞬時に直せるようになり、その弊害として自分の実力に見合わない無謀な行為をする若者が増えたのではないか」

 魔法議会は統計結果を重く受け止め、一定以上の大きさのゴーレムの製造を許可制にする、危険度の高い魔獣の召喚は上位の魔法使いの監督の下で行う、等の法令の設備を検討しているという。

孤児院の院長の魂が精霊化 子どもたちの守護精霊へ

新たな守護精霊の誕生に、小さな町が沸いた。

ハウザル地方北部の田舎町・シアンで、新たな守護精霊が発見された。孤児院とその子どもたち、そして地域に生まれた子どもを守護しているとみられ、近く正式に守護精霊として名前を与えられ、登録される。

王立アトス大学精霊学部のマンシェ・ル・ドードル教授は、新しい守護精霊についてこのように語った。

孤児院で暮らす職員や子どもたちの証言によると、守護精霊は先月亡くなった孤児院の院長の魂が精霊化したものと思われます。彼の魂が墓に備えられた花を吸収し、参拝者の哀悼の感情を受け取って精霊の形をとったと考えられる現象が度々発生していました。

ドードル教授の教え子の中にはシアンの孤児院で育った学生がいた。彼女がドードル教授に相談したことで、院長の魂が守護精霊化していることが早期に明らかになったという。

守護精霊は正式に登録されることで人々に認知され、精霊としての力をつけていく。孤児院の子どもたちや出身者によって、守護精霊はすでに孤児院から町全体へ力を広げている。

シアンで生まれた守護精霊がハウザル地方全体の子どもを守る日も、そう遠くはないのかもしれない。

贋作疑惑の絵画魔法『花の舞踏』 真作と判明

レン・パーティカンの舞踏シリーズに似せた贋作とされていた『花の舞踏』が真作であると判明した。メンナ絵画魔法研究所が発表。

これまで、舞踏シリーズは四大元素の精霊と乙女を描いたものと考えられており、赤・青・白・黒の四作で完結したものとされていた。『花の舞踏』はパーティカンの弟子が舞踏シリーズの人気に乗じて描かれたものと思われていたが、使用された画材の年代特定や筆使いの解析が進み、パーティカン本人の作として認められることとなった。

これについてメンナ絵画魔法研究所の所長は、「この疑惑を解決した解析魔法の研究者、そしてその講師者に深く感謝したい。なにより、これまで贋作として扱ってしまった『花の舞踏』へ謝罪し、その名誉を回復するため、メンナ絵画魔法研究所の総力をあげて彼女をサポートしたい」コメントした。

一方『花の舞踏』は、絵画魔法研究家で自身も絵画の『花の帽子飾りをつけた若き魔女』を通じて「私の父親がレン・パーティカンと証明されてうれしい」と表明。「『赤の舞踏』が元気になったら、みなさまの前で姉妹そろって踊りたい」と今後について語った。

クラヒル飛行船停留所で暴発した『赤の舞踏』は、メンナ絵画魔法研究所での修復作業を完了させている。現在は『花の帽子飾りをつけた若き魔女』によるカウンセリングを受けており、心身ともに絵画として万全の状態になってから、再び展示に戻るとみられている。

新種発見で鳥のささやき病に進展 病気ではなかった可能性

原因不明の奇病として扱われてきた“鳥のささやき病”について進展があった。幻聴と思われていた「鳥のささやき」は、実在する鳥の鳴き声だったことが判明した。近く、世界医療魔法連盟が声明を発表する。

鳥のささやき病は、周りに鳥がいないのにさえずりのような音が聞こえる病気。ンジルンダ島で春の期間に限り発症が確認されている。一時的な集団精神汚染や幻術魔法の暴走により発症すると推測されていたが、発症する環境に統一性はない。

先日魔法動物省の研究チームが発表した内容によると、ンジルンダ島には「姿の見えない鳥」が生息していた。ンジルンダ島の固有種とみられ、研究チームはこの鳥を「ンジルンダカラカゴトリ」と名付け新種として登録した。

ンジルンダカラカゴトリは、幻術魔法を帯びた羽根で周囲の景色と同化しており、外敵から身を守っている。互いの姿が見えないため、繁殖期に入ると鳴き声で異性にアピールするのではないだろうか。

(魔法動物省 研究チームの発表より)

発表を受け、ンジルンダ市長は「住民の長年の悩みだった病に答えが出たことは素直にうれしい。しかし、高齢の住民を中心に、心理的に受け入れられない発表だった。魔法動物省の担当者と連携を取り、住民のみなさまに丁寧に説明していく必要がある」と発表した。

病気ではなかった鳥のささやき病。住民がその事実を受け入れるまで、まだ時間がかかるのかもしれない。

王立魔法生物学研究所よりお詫び

このたび、当魔法生物研究所の熱帯多雨林模倣飼育室より、指定魔法生物であるサソリの一種・ルナティックスパイク(medicamentum lymphatus)が、オスとメスの番で盗難されたことがわかりました。謹んでお詫び申し上げます。

ルナティックスパイクが有する毒は「万毒の祖」とも呼ばれ、特に体内の神経と魔力に作用し、強力な幻覚作用を引き起こします。あらゆる毒に悪用が可能な本種ですが、魔術的に空間を拡張して自然を再現した環境で飼育されており、個体数の確認が不十分だったため発覚が遅れました。また、当研究所の管理システムの記録を解析しても、外部犯より内部犯の可能性が高かったため、盗難された事実の確認がとれるまで時間を要しましたこと、重ねてお詫び申し上げます。

ルナティックスパイクの飼育個体数が減少していたことは、半期に一度行っている、飼育下の全魔法生物の個体数調査を行った際に発覚いたしました。餌の減少量の記録から盗難時期を推定し、警備を行っていた職員の記憶を精査したところ、一部の職員において記憶の混濁が確認されました。外部犯の可能性が高まり、捜査当局へ詳しい調査を依頼したところ、盗難であることが確定いたしました。

ルナティックスパイクは、体長45センチメートルほどに成長する大型のサソリであり、頭がムラサキ色で尻尾にかけて深緑色のグラデーションがかかっていることが特徴です。このようなサソリを所持する人物を見かけたら、まずは十分な距離を取った上で、王立魔法生物学研究所などにご連絡ください。

皆様におかれましては、大変なご不安をおかけいたしますこと、誠に申し訳ございませんでした。

新型トイレ導入で学内紛糾 – アトス大

王立アトス大学では、新型トイレ導入をめぐる対立が激しさを増している。近代魔術学部学長のズゾパヌル・ウャ教授(83)は、評議員会と理事会で新型トイレ設置の承認をもぎ取った。しかし反発した一部の教職員側がズゾパヌル教授に呪いをかけるなど、抗議を続けている。背景には、神秘学部の主導する神学的な対立があるようだ。

左:旧型/右:新型

「近年、尻尾のある種族や多脚型の学生が増加している」「多様な学生に配慮した、使いやすいデザインであるべきだ」

先月67日に開かれたアトス大の評議員会では、新型トイレの導入をめぐり朝まで激論が交わされたという。関係者によると、評議員37865人の投票で、選任案賛成は委任状を含め過半数を超える19865票。続く理事会も「評議員会の判断を尊重する」などの意見が多数を占め、新型トイレは順次導入されることに決まった。

そこに待ったをかけたのが、フル・フルチ名誉教授(509)率いる神秘学部の講師陣だった。フル名誉教授は19年前まで教皇庁直轄の異端審問所に籍を置き、現在も聖キャベツ派の最右翼として知られている。
「元・異端審問官として、伝統を破壊するような蛮行は見逃せぬ」
そう叫ぶフル教授は、素手で新型導入派の職員を薙ぎ倒したという。教授は異端審問官時代は暗殺部門一の使い手として鳴らした武闘派。新型トイレ導入派の職員は、首をはねられる等の重軽傷を負った。

フル教授ら神秘学部の講師陣は、今も南キャンパス8階のトイレを占拠している。伝統的な異端審問官の黒衣すら脱ぎ捨て、不退転の意志を見せた。

▲(参考資料)異端審問官の黒衣

「まったく、半裸のおっさん達に居座られて、こっちはたまったもんじゃないですよ」
8階トイレ氏自身が困惑の表情でそう語った。
「なんでもいいから、トイレで流血沙汰はやめてほしいですね。流すのは紙だけにしてほしいです」

新型トイレに改装予定だった8階トイレ氏本人は、図らずも新旧の対立に巻き込まれた形。新型トイレを巡る紛争は、今しばらく続きそうだ。

「1枚…2枚……10枚? あれ?」皿屋敷で幽霊にブラック労働強制 9進法を不正利用か

幽霊従業員を無期限労働させたとして、魔法労働監督寮は10日、霊労法違反容疑で万代田区の食器メーカー「古石町皿屋敷」と同社社長を書類送検した。社長である男性(405)は容疑を認めている。

労働監督寮によると、男性は約300年前から今年までの間に、幽霊従業員に休憩なしの無期限労働を強いるなどした。皿屋敷の土地一帯に9進法結界を仕掛け、無意識下に9進法をインストールし霊習性を狂わせたという。

「マジか」と被害者のお菊さん(享年17歳)は語る。「1まーい……2まーい……って数えて、ちゃんと10枚数えたんだけど、どう見ても9枚しかないんすよね。おかしいなーと思って数え直してたら300年経ってたわ」と、困惑をあらわにした。

皿屋敷周辺では、「なんか若返ったような気がする」「狂うはずのないアイアス時計が狂う」「わしの髪の毛が1本少ない」などの不審な噂が相次ぎ、違法行為が発覚した。労働監督寮は引き続き、不審な結界に注意するよう呼びかけている。

ジャングル奥地で未開部族発見される 3000年前の血筋か

レドルフランケ南部の未踏地域深奥にて、未開部族の実在が確認された。レドルフランケの一部地域では南部原生林に生きる古い部族の伝説が長老たちの間で語り継がれていたが、前魔法的な生活を送る部族の実在は驚きをもって受け止められている。

発見したのは、魔法植物学の専門家ガオ=ケレナ氏。部族は3000年以上前の吸血鬼の血族である可能性が指摘されている。

樹獣に追われた際に偶然遭遇

▲深い森に隠された村落


モロプス獣人であるガオ=ケレナ氏はほぼ1年を通して原生林の植生調査をしており、今回の遭遇も偶然だったという。

「体高18メートル程度でしょうか。運悪く成体の樹獣に見つかってしまったんです。あれは肝が冷えました」
原生林には未だ生態の解明されていない、巨大な樹獣が多数生息している。氏ほど経験のあるフィールドワーカーですら、犠牲になることもある。
「気付かないうちに、深奥に入り込み過ぎたんですね。もうだめだ、と目を瞑った時でした」
紙一重のところで、ケレナ氏は部族の一人に助け出された。秘密の森道を通り、氏は部族の村落に迎えられたという。

「人喰い族、だなんて噂を聞いていたので、最初は食べられてしまうのかと思いました。ほら、私って美味しそうでしょう?」
ケレナ氏はふわりとした体毛を掻きながら笑った。
「でも、違ったんです。彼ら、ベジタリアンなんですよ。ちょっと見た目は怖いけれど、優しく穏やかな民族です」

古き血脈のパド族

▲パド族に典型的な犬歯


ケレナ氏に接触した彼らは、“パド族”という古い古い民族だった。深い森に閉ざされ歴史に忘れられたパド族だが、決して閉鎖的でも排他的な訳でもない。少しだけシャイで、しかし友好的な人々だ。事実、ケレナ氏との邂逅以後は、少しずつだがレドルフランケ南部の村々と交流が始まっている。

パド族は、前魔法的な生活を営む牧歌的な民族だ。我々が渡す魔法の品々を、いつもおっかなびっくり受け取っていく。文字を保たないパド族は、数千年もの間、外界から隔絶された森の中で、魔法とは無縁な生活を営んできた。専門家の見解では、パド族は3000年以上前に断絶した、古い吸血鬼の血脈である可能性があるという。吸血鬼の魔力は、その血脈の古さに比例する。現在王国内で確認されている吸血鬼の血脈は200年来程度であり、パド族の歴史が事実であれば、その潜在魔力は計り知れない。

パド族の人々は、その多くが金色の瞳と長い犬歯を持っている。この一見恐ろしげな容貌が「人喰い族」などといった噂の元だったのかもしれない。しかしケレナ氏が語るように、パド族はその全員がベジタリアンなのだ

吸血を忘れたベジタリアン

▲パド族が育てる“命の実”


宗教的に肉食が禁じられている……という訳ではない。パド族がベジタリアンになったのは、ひとえに森の恵みが豊かであった故なのだ。

「これが、パド族の主食です。驚きましたよ。何千年も前から、こんな美味しいものを食べてきたんですね」
植物学者のケレナ氏すら唸らせる、パド族の作物。彼らが“命の実”と呼ぶその赤い果実は、瑞々しく、ほのかな甘みが舌に心地良い。原生林深奥でしか育たないこの果実は、レドルフランケ地方で今ひそかなブームになっている。
「物々交換だけでも、相当な物資が集まってますよ。みんな食べたいんですよ、この“命の実”をね」
今やパド族との橋渡し役となったケレナ氏が、屈託のない笑顔を見せた。

“命の実”と引き換えに我々が「血液パック」をパド族に渡すと、不思議そうに味わった彼らは、すぐにおかわりを要求してきた。おもしろいことに、パド族の間では血液パックが流行しており、せっせと“命の実”を持ってくるようになっている。血液パックを飲んだパド族は、目を輝かせて笑ってみせる。確かに、ベジタリアンでももともとは吸血鬼の一族なのかもしれない。

最近では、ついにパド族は村落に観光客の受け入れを開始することを決めたという。パド族と魔法文明の友好的な関係は始まったばかりだ。今後の展開に期待したい。